10km/hの差が生むルールの矛盾と疑問の声

そんななか、主流である電動キックボード以外にもスクータータイプや四輪まで、さまざまなタイプの特定小型原付が登場している。
ペダルが付いた自転車に近い形状のものから、原付バイクそのものに見えるモデルまで、多種多様な車両が公道を走るようになった。
たとえば、自転車に近い形状のglafit「NFR-01 Pro」や、スクータータイプのAINOHOT「SAGAone」など、原付バイクそのものに見えるモデルまで、多種多様な車両が公道を走るようになった。

しかし、特定小型原付の利用の幅が広がるにつれ、SNS上などではルールの矛盾に疑問を抱く声も少なくない。
従来の原付一種は最高速度が30km/hでヘルメットの着用が厳格に義務付けられているのに対し、特定小型原付は最高速度が20km/hでありながらヘルメットの着用が努力義務にとどまっている。
とくに、見た目がスクーターとほとんど変わらない車両が”ノーヘル”で走っていると、周囲のドライバーがルール違反だと誤認してしまうようなケースも起きているようだ。
このわずか10km/hの差によってヘルメットなしで車道を走れることに対し、「ノーヘルなのはおかしいのではないか」といった声が上がるのも自然なことだろう。
なお、特定小型原付は16歳以上であれば運転免許が不要だが、交通ルールを破れば取締りの対象となる。
たとえば、信号無視をした場合は交通反則告知書(青切符)が切られ、6000円の反則金が科せられる。
さらに、酒気帯び運転をした場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい刑事罰の対象となるため、気軽に乗れるからといって安易な気持ちでの危険運転は絶対に避けなければならない。
法的な免除が安全を意味するわけではない

特定小型原付の最高速度が20km/hに抑えられているとはいえ、事故の際の危険性を軽視することはできない。
たとえ20km/hであっても、転倒時にアスファルトなどに頭を打ち付けた際の頭部へのダメージは非常に大きいとされている。
警察庁が公開した資料「特定小型原動機付自転車関連事故の発生状況」によれば、2024年に発生した特定小型原付がかかわる交通事故において、死亡重症率10%であったことが明らかになっている。
特定小型原付は、バイクのように生身の状態で車道を走る以上、自動車との接触や路面の段差、雨の日のマンホールでのスリップによる単独転倒のリスクは常につきまとう。
とくに、特定小型原付のなかでもタイヤが小さいモデルなどは、わずかな段差でもバランスを崩しやすい構造であることを忘れてはならない。
そのため、法的にヘルメットを「被らなくていい」という努力義務の規定が、決して安全であることを意味するわけではない点には注意が必要だ。
努力義務とは罰則がないだけであり、本来は着用するように努めるべきだという法律からのメッセージでもある。
また、万が一の事故の際、ヘルメットの有無が生死を分ける境界線になる可能性は十分に考えられる。

したがって、ルールが任意であることに甘んじず、自分の命を守る自衛策として自発的にヘルメットを着用することも、新たな区分の乗り物を安全に賢く使用するための条件といえる。
特定小型原付は手軽で便利なモビリティであるからこそ、実際の危険性を正しく認識し、自分自身を守るための主体的な安全対策が求められるだろう。
