連載

北京モーターショー2026

北京の交差点から見えた、中国自動車革命

北京・長安街。天安門から東へ約1km。夕方5時、渋滞する車列を見ていると、2年前とはまるで違うことに気づく。

青いナンバーが消え、緑のナンバーが交通流の中心になっていた。

世界でもっとも変化のスピードが高い中国の中心地で定点観測してみた。

撮影日は北京モーターショープレスデーの前日だ。
2024年4月24日(水曜日)
2026年4月23日(水曜日)
どちらも17時~18時、平日の夕方。

撮影地点から西へ1kmほどいくと天安門だ。

撮影場所は、天安門広場から東へ1kmほどいった長安街と東単北大街が交差する交差点にかかる横断歩道の上から。つまり、ここは北京の中心部である。東京で例えると……場所としては皇居前の丸の内なのだが、それだけだと説明が足りない。東京で言うと、「銀座+丸の内」を混ぜた感じと言えば伝わるだろうか。

2024年の撮影は、「中国関係のニュース記事で使えるように撮影した」のだが、今回は「同じ場所、ほぼ同じ時間で撮影してこの2年間の中国自動車市場の変化を定点観測してみよう」という意志を持って撮影した。とはいえ、ここは北京。歩道橋にも警備員がいる。悪いことをするわけではないけれど、撮影を続けていたらおそらくとがめられそうな場所ではある。ということで、さくっと撮影してその場を離れた。

中国のナンバープレートは、「NEV=新能源車=BEV/PEHV/FCEV」、つまり新エネルギー車と普通車で色が違う。
中国のNEVナンバーは「白地に緑色系」
普通のガソリン車は「青色」
商用車などは黄色系だ。

さて、2024年の画像から見ていこう。

2024年4月24日(水曜日)夕方

今度は2026年の画像だ。

2026年4月23日(水曜日)夕方

北京の街は2010年代前半までは交差点ではホーンの音がうるさかったが、いまや東京と同じく、ほぼホーンの音はしなくなっている。

画像からわかることは
2024年:NEVの緑プレートが増えているという段階だったが
2026年:NEVが交通流の中心になった
ということだ。

また、2024年は「黒セダン=ICE高級車(Audi/BMW/VW系)が多かったが、2026年は黒い大型NEV、クーペSUV、Li Auto系、AITO系、Xiaomi系っぽい車両が増えている。つまり、北京での成功者のクルマがドイツ車から中国NEVへ移り変わってきていることが見てとれる。そして2026年画像ではタクシーがほぼNEV化されていることもわかる。

識別可能車両を対象に、同一車重複排除などの条件を設定したうえで、AI補助によるナンバー色解析を行なった。その結果は
2024年NEV比率=約32%
2026年NEV比率=約60%

だった。2年間でほぼ倍増したわけだ。

では、中国の公式データはどうなっているか? 中国汽車工業協会(CAAM)や中国乗用車市場信息聯席会(CPCA)ベースの数字では2025年通年

中国の新車販売台数は約3440万台
NEVの販売台数は約1649万台
NEV比率は約47.9%である。

中国全体の数字より今回の北京定点観測の方がNEV比率が高いのか? 理由は明確で、北京ではNEVだとナンバープレート取得が優遇される(ナンバープレートがないとクルマが買えない)から。また、中国の高所得層ほどNEVへの移行が進んでいることも理由だろう。

目抜き通りに並ぶ自動車ブランドは?

定点観測地点から天安門方向へ歩くと、そこには東方新天地(Oriental Plaza)という巨大な複合施設がある。長安街に面した目抜き通りには自動車ディーラーが軒を連ねていた。

東から
NIO(蔚来)
紅旗(Hongqi)
現代(ヒョンデ)
ONVO(楽道)
AITO(問界)
Xiaomi(小米汽車)
仰望(Yangwang)
が並んでいる。

NIO(蔚来)

NIO
中国のプレミアムEVブランド。高級ラウンジのような「NIO House」展開やバッテリー交換サービスで知られる。

紅旗(Hongqi)

紅旗
中国第一汽車集団(FAW)の高級車ブランド。中国政府・要人車両でも知られる伝統ブランド。

現代(ヒョンデ)

Hyundai
韓国ヒョンデ自動車。中国市場では苦戦中だが、EVやスポーティモデルで存在感維持を狙う。

ONVO(楽道)

ONVO
NIO傘下の新ブランド「楽道」。NIOより大衆市場向けで、ファミリー層を狙うNEVブランド。

AITO(問界)

AITO
Huawei主導のスマートカー・ブランド。高度な車載OSや運転支援機能を武器に急成長中。
ここが東方新天地のセンター部分。

Xiaomi(小米汽車)

Xiaomi
スマホ大手Xiaomiの自動車ブランド。SU7でEV市場参入。家電・スマホとクルマの統合を進める。

仰望(Yangwang)

仰望
BYDの超高級ブランド。大型SUV「U8」などを展開し、中国製ラグジュアリーSUV市場へ参入。

手元に写真がないからうろ覚えなのだが、2020年以前はポルシェやアウディ、あるいは高級時計ブランドが店舗を構えていたはずだ。すっかり主役が交代している。中国新興ブランドのNEVショールーム街と化している。

注目すべきはXiaomi(シャオミ=小米汽車)がいることだ。

かつてスマートフォンで急成長した企業が、いまは長安街沿いで高級BEVを売っている。これは単なる新規参入ではない。中国では、自動車が“機械”から“電子デバイス”へ変わりつつあることを示している。

並んでいるブランドで中国国有企業系は紅旗だけ。これは中国第一汽車グループの伝統的なブランドだ。そのほかは民営の自動車OEMである。昔の中国ならここに並んでいたのは

  • FAW-VW(第一VW)
  • SAIC-GM(上海GM)
  • Dongfeng-Nissan(東風日産)
  • Beijing Hyundai(北京現代)
  • 一汽トヨタ

のような「国有企業+外資合弁」だったはずなのに、現在では中国民営テック資本系に変わっているということだ。

ここに新興民営テック資本系の新興ブランドが並んでいるのは、旧来の自動車ブランドがすでにかなり強固な販売網を持っているのに対して、彼らは別の販売方法を採らざるを得ないからという実情もある。実際、彼らは郊外の大きなディーラーではなく、ショッピングモール内に新車を並べてあたかもスマホを販売するかのように自動車を売るスタイルをとる。

というわけで、定点観測から中国自動車市場の変化を分析してみた。次回の北京モーターショーは2年後の2028年。2年後、2028年に同じ場所へ立ったとき、青いナンバーはさらに少なくなっているのかもしれない。

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