フロントのブリスターフェンダーは専用パネルで実現

ジャパンモビリティショー2025開幕前から、1980年代を代表するホットハッチ「シティターボIIブルドッグの再来」とウワサされていた、ホンダのスポーツEVがついに世界初公開された。

圧倒的な迫力のあるブリスターフェンダーをまとったコンセプトカーの名は「スーパーワン・プロトタイプ」。見ての通り、軽乗用EVであるN-ONE e:のワイドボディバージョンといえる姿であり、エヌワンのバージョンアップ版だから”スーパーワン”という名前を与えられたと理解することができる。

そして、プロトタイプと入っているように、これは夢を表現しただけのショーカーではない。2026年内には市販が計画されているニューモデルのお披露目だ。つまり、量産車に近い仕上げになっていると考えるのが妥当といえる。

ホンダ・スーパーワン プロトタイプ

まずは、一目で軽自動車枠を超えていることが感じられるワイドボディの構成からチェックしてみよう。

ヘッドライトはベース車(N-ONE e:)と共通に見えるが、フロントグリルは別物。向かって右側にオフセットしたインテークは、まさに「ブルドッグ」へのオマージュといえそうだ。

バンパーの意匠も別物で、フロントのブリスターフェンダーと滑らかにつながっている様子はリトルダイナマイトと呼びたくなる力強さを感じさせる。

そして、フロントのブリスターフェンダーは、ベース車に貼り付けたオーバーフェンダーではない。フェンダーパネルを専用で起こしたワイド仕様となっている。一方、リヤフェンダーについては、おそらく樹脂製パーツを貼り付けたオーバーフェンダー仕様となる。

フロントフェンダーはモノコックボディにボルトで固定されている外板なので容易に交換できるが、リヤフェンダーはモノコックボディの一部であり、そこに手を入れることはボディの作り直しになりかねない。コストバランスを考えると、この処理は妥当といえるだろう。

ホンダ・スーパーワン プロトタイプ

ホイールとブレーキの隙間が小さいことに注目

ワイドボディにインストールされるタイヤは、アドバン・フレバで、サイズは205/45R16となっていた。ベース車が155/65R14だから、タイヤもかなり幅広になっていることがわかる。

ところで、軽自動車のドレスアップやカスタマイズとして幅広タイヤを履かせたワイドボディ仕様にする場合、どうやってタイヤを外側に出す(トレッドを広げている)のか、ご存知だろうか。

ドレスアップ手法としては大きく2つのパターンがあり、ひとつはホイールのインセットを変えること。もうひとつが、ホイールの装着面にスペーサーを入れて、外に出す方法となる。いずれにしても、ブレーキキャリパーとホイールの隙間が大きくなることが多い。

これを前提として、スーパーワン プロトタイプの足元を眺めると、アルミホイールのスポークと赤く塗られたブレーキキャリパーのクリアランスがさほど広がっていない。すなわち、ホイールのインセットの大幅変更もしくはスペーサー的な処理によってタイヤを外に出していないと想像できる。

ここから読み解くと、スーパーワン(プロトタイプ)は、専用のサスペンションアームを採用することでワイドトレッドを実現していると考えるのが妥当だ。つまり、ジオメトリーのレベルからベース車と異なるサスペンションを新規設計していると予想できる。

駆動用バッテリーを床下に搭載するEVは低重心であり、コーナリング性能が高いというのは知られているが、そうした素性の良さを活かすようなサスペンションが開発されていると期待できる。

ベース車の1030kgに対して、さほど車重も増えていないだろう。そこに205幅のアドバンタイヤを履くのだから、ビタッと路面に張り付いたような走りが楽しめるのではないだろうか。

思えば、昭和のシティターボIIブルドッグは後輪が浮きやすく、ロールオーバーしそうな姿勢で走る姿がアイコンだった。

もしかしたら「令和のブルドッグ」はアームから専用設計のサスペンションと幅広タイヤによる圧倒的スタビリティがチャームポイントとなるかもしれない。