広い後席のN-BOXと、高い天井のスペーシア




同じ軽自動車規格のスーパーハイトワゴンであるため、両車は全長や全幅はもちろん全高も近い数字になっている。室内寸法や荷室寸法も非常に近く、後席はどちらも大柄な男性が足を組んで快適に座れるほど広い。どちらを選んだとしても後席空間に不満はないだろう。
ただし、細かな違いはある。後席膝まわり空間はN-BOXの方が拳1つ分ほど広いが、後席の頭上空間はスペーシアの方が拳1つ分広く確保されている。
スペーシアの高い頭上空間は低めのシート座面高も一因だ。大柄な男性が座ると、どうしても膝裏が浮いてしまうため自然と足を前へ投げ出す形になるが、その際でも荷物ストッパーにもオットマンシートにもなる“マルチユースフラップ”のレッグサポート機能が後席乗員の膝裏を保持してくれる。
機能の違いはそれ以上に大きい。どちらもロールサンシェードやシートバックテーブルなどの快適装備が標準で備わるが、N-BOXは後席座面を持ち上げて格納できる“チップアップ機構”が備わっており、折り畳んだベビーカーなど背高な荷物も容易に積み込める。
対するスペーシアは、N-BOXではオプション装備となる後席のアームレストが標準装備となるうえ、後席天井には車内の空気循環を補助するサーキュレーターが標準装備だ。さらに3役をこなせる“マルチユースフラップ”は日常のちょっとしたシーンで大いに助かる装備と言えるだろう。
加えてスペーシアは助手席の背もたれを水平位置まで前へ倒せるため2m超の長尺物も難なく積み込めるうえ、助手席下部には着脱可能なシートアンダーボックスも備わる。
スッキリとした車内のまとまり感はN-BOXの大きな魅力だが、車内の機能性と収納性ではスペーシアに軍配が上がる。
ホンダ N-BOX
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1790mm
ホイールベース=2520mm
車両重量=910kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)
スズキ スペーシア HYBRID X
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1785mm
ホイールベース=2460mm
車両重量=880kg
タイヤサイズ=155/65R14(前後)
燃費性能で優位に立つのはマイルドハイブリッドのスペーシア


エンジン単体の出力はN-BOXの方が明らかに優れている。N-BOXの自然吸気エンジン“S07B”には可変バルブタイミングに加えてバルブリフト量までを可変させる“i-VTEC”が搭載されており、低回転のトルクを稼ぎつつ高回転までパワフルかつスムーズに回る。
対するスペーシアに搭載される自然吸気エンジン“R06D”は最大トルク発生回転数がN-BOXより高いが決して高回転型というわけではなく、非常に広い範囲で高トルクを発揮できる特徴を持つエンジンだ。
そのうえ、スペーシアはマイルドハイブリッドシステムを備えており、最大トルク50Nmのモーターアシストが働くことで発進加速性能はスペーシアがN-BOXを圧倒する。一方、N-BOXが得意とするシーンは高速道路での合流や追い越し時であり、スペーシアよりも力強い加速ができる。
こうしたパワートレインの違いは燃費性能にも表れており、両車のWLTCモード平均燃費はN-BOXが21.5km/L(ベースグレードFF)、スペーシアが23.9km/L(ハイブリッドX FF)だ。燃費性能は全速度域でスペーシアの方が優れ、とくにマイルドハイブリッドシステムの恩恵を受けやすい低速領域ほど両車の燃費差は大きく広がる。
乗り心地や静粛性については、多くの人がN-BOXの方に高い評価を付けるだろう。N-BOXはあらゆる点が高いレベルでバランスよく仕上げられており、どのようなシーンでもそつなくこなせる。N-BOXに追いつけとシャシーに改善を重ねてきたスペーシアの進歩も著しいが、コストをかける部分がN-BOXとは明確に異なっているようだ。
ホンダ N-BOX
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン
排気量=658cc
最高出力=58ps/7300rpm
最大トルク=65Nm/4800rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)
スズキ スペーシア HYBRID X
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=657cc
最高出力=49ps/6500rpm
最大トルク=58Nm/5000rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)
メインカーとするならN-BOX! スペーシアはセカンドカーや街乗りで魅力が光る


N-BOXの新車価格は173万9100円、スペーシア HYBRID Xは170万5000円であり、価格差はわずか3万円強となる。
ただし、N-BOXは電動パーキングブレーキ&アダプティブクルーズコントロール(ACC)が標準装備であるのに対し、スペーシアは電動パーキングブレーキがセットオプションとなる“セーフティプラスパッケージ(6万6000円)”を選ばなければACCは備わらない。
一方で、スペーシアは両側スライドドアが標準装備となるが、N-BOXは左右独立式リアセンターアームレストなどとセットとなる“コンフォートパッケージ(6万6000円)”を選択しなければ右側スライドドアは手動だ。
両車は同じ軽スーパーハイトワゴンでも、室内空間やパワートレインスペック、装備のあらゆる面で想定用途の違いが見て取れる。
街乗り主体ならACCの必要性は下がるうえ、中間加速性能より発進加速性能が重要となる。また市街地での短距離移動が多いなら頭上空間が高いほうが開放感や乗降性にも優れる。こうした特徴を持つスペーシアは、セカンドカーあるいは街乗り主体の使い方に向くクルマだと言えるだろう。
充分な広さを備えつつ乗り心地や静粛性でも勝るN-BOXは、街乗りから高速道路まで不満なくこなせるクルマであり、軽自動車1台持ちの場合のメインカーには最適だと言えるだろう。
車両本体価格
ホンダ N-BOX:173万9100円
スズキ スペーシア HYBRID X:170万5000円