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■バッテリーを少しでも長く持たせる法
自動車のバッテリーも値段がかなり高くなった。
かつてはエンジンのかかりが鈍くなって「もう交換時かなあ」と思ったら、カー用品店の自社ブランド品なら5000円も出せば入手できたのだが、いまのクルマときたら、1500ccクラスでも2万円からの出費を覚悟しなければならず、割安が期待できる自社ブランド品さえ、いっちょまえにメーカー品といくらも変わらない値札を掲げるようになっている。
となると、同じバッテリーはできるだけ長く使うべく、何か手を打ちたいところだ。
●なぜこうも高くなった?
人間の「腹八分目」と同じで、バッテリー充電量は80%あたりを保つのがいいとされている。満腹であっても空腹であってもいけない。
昔のクルマは、いったんエンジンが始動したら、その回転をベルトで受け取ったオルタネーターがまわり「っぱなし」で充電し「っぱなし」にしていた。これではオルタネーターの駆動源であるエンジン出力を常に2~3ps消費し「っぱなし」となってしまうため、必要なときに必要なぶんだけオルタネーターを起動させ、充電量を常に80%近辺を維持するという考え方が採られるようになった。
これが「充電制御」で、21世紀初頭あたりのクルマから始まった、省燃費を目的とする技術だ。充電量が80%を超えようとするとクルマは充電をやめ、80%を下まわると充電再開・・・クルマはバッテリーの腹具合をセンサーで監視しており、ECUがオルタネーターに作動・停止の指令を出しているのだ。無用の燃料消費とバッテリー劣化を抑えるべく、電気は必要なときに必要なだけを・・・いわば電気のカンバン方式だ。
ただし、バッテリーのほうも頻繁な充放電に耐える設計にする必要がある。ために充電制御用のバッテリーは値段が高くなっているのだ。
ついでにいうと、アイドリングストップも停止・始動の頻度が上がるから、バッテリーも参る方向に向かう・・・何のことはない、省エネ・省資源・省ナントカの大義名分はあるにしても、ユーザー側からすれば、充電制御やアイドルストップといった省燃費技術で得た燃料代マージンが、価格上昇したバッテリー代にまわっただけのことなのだ。
いったい誰が幸せになれるのか?
●エンジン切るときゃすべてをOFFに。バッテリー長持ち大作戦
最近は、バッテリー寿命はひと口3年という。しかし使いようではそれ以上の期間を使うことも可能で、万単位の出費を強いられるのが嫌な私は、使い方を工夫することで、5~6年は持たせるようにしている。いま使っているクルマは2018年3月納車だが、バッテリーは2回目の車検時・・・5年で取り換えた。感覚からあと1~2年は使えそうだったが、出先で突然寿命が訪れるのも困るので、保険の意味で5年で変えたわけだ。
長く使うためにどのような工夫をしたのか?
簡単だ。具体的には以下の4項目だ。
1.エンジン始動時のバッテリー負担を減らすため、すべての電装品をOFFにする。
停まっているエンジンをまわすのはスターターモーター。そのスターターがエンジンをまわすまではエンジンは停まっている状態で(あたり前だ)、発電は行われていないのだから、スターターはバッテリーの電気だけでまわっていることになる。眠っているエンジンを起こそうというのだからモーターだって強力なトルクが必要で、それは大きな電力が要ることを意味する。ならばエンジンスタートの瞬間だけは、バッテリーはスターターモーターをまわすことだけに集中させるべきだ。電装品をONにしていると、キーONにするや、ON状態の電装品へも電気が流れるため、電気の消費量が増えてバッテリーに負担がかかってしまう。
ところが、空調ファン、ハイパワーなオーディオ、ワイパーなどのスイッチをONにしたままエンジンをかけるひとがいる。中にはヘッドライトを点けたままかけるひとも・・・
もっとも、エンジン始動の瞬間=START(イグニッション点火)位置にあるときは他に電気をまわさない回路になってはいる(だからその瞬間だけ空調ファンは停まり、ナビやオーディオの表示画面もいったんチラつく。最近、そうでないクルマもチラホラ出てきている。)が、電装品ONのままエンジンをかけるというのは、クルマやバッテリーをいたわる観点からすると、あまり感心できたことではない。
また、ナビ画面が一瞬の間に点消灯を繰り返すのも見ていて精神衛生上よろしくない。
同じOFFにするにしても、エンジンをかけるそのときにOFFにするというよりも、明日エンジンをかけるときのため、空調やオーディオは、エンジンを切るときのいま、OFFにしておく癖をつけておくといいだろう。夜寝るとき部屋の灯りを消すのと同じだ。
ただし、新オートライト規制にミートしたいまの新車となるとライトスイッチは常に「AUTO」にあるため、夜間のエンジン始動のさいは、いやおうなしにライト点灯状態でエンジン始動となる。いかんともしがたいところだ。
2.エンジン停止中の電装品使用も避ける
キースイッチ(ボタン式ならパワースイッチ)のポジションは、OFF(実際にはLOCK)-ACC(アクセサリー)-ON-STARTの4つある。
ONで初めて使える電装品としては、ワイパー&ウォッシャー、空調、リヤガラスのくもりを取る熱線、ターンシグナル、リバースランプ、パワーウインドウ、メーターなどが挙げられる。
このへんはメーカーによっても時代によってもばらつきがあり、トヨタ車などはONでないと電動ミラーが作動しないし、電動格納&復帰もしない。かつての日産車はACCででもワイパーや空調ファンを動かせたが、いまでは他社同様の回路になっている。
いっぽう、ACCはエンジン停止中の電装品使用のためのポジションだ。バッテリーを長持ちさせたいなら使用は最小限にすべし。ACC位置での電装品使用はバッテリーに溜まった電気だけをあてにしているため、そのままでいるといずれ電気が底をつく・・・バッテリー上がりを引き起こすわけだ。
いまのクルマは頭がよくなっていて、バッテリー上がりを防ぐため、ACCのまま一定時間が過ぎるとすべてが自動でOFFになる「オートACC」のクルマが増えている。
3.ルームランプもOFFにしておく
クルマはキーを抜いた静止状態でも電気を消費している。これを「暗電流」という。この暗電流すらないと不便なことが起こる。
もし暗電流がなければナビの設定やラジオの選局周波数プリセットは電気が切れるたびに記憶が途絶えてしまい、クルマに乗る都度これらをセットし直さなければならない。メーターのトリップ計なども電気が切れてしまうと数字を忘れてしまう。
むかしのクルマで必要だった暗電流は時計くらいのものだったが、いまはあらゆるデバイスが電気・電子化され、暗電流の量は増えている。
イモビライザーはひとがいないときにこそ機能すべき暗電流の電装品だし、ドライバーのリモコンやドアハンドルのボタン操作によるアンロック信号をいまかいまかと待ち構えるドアロックユニットも、暗電流があってのものだ。
もうひとつなめてはいけないのがルームランプ。
前述したデバイスの暗電流消費量は意外と大したことはない。これらどのデバイスよりも消費電流が大きいのは、実はルームランプだ(光源が旧来からの電球の場合)。
ルームランプは通常、OFF-DOOR-ONの3ポジションだが、エンジン停止中のルームランプ点消灯を恒常的に行っているとバッテリーへの影響なしとはいえない。
ならばいずれかのドアを開けると点灯するDOORポジションにしておけばいいような気がするが、最近はDOORポジションにしておくと、リモコンを携帯したドライバーが近づくまたはアンロック、あるいはエンジンOFFにた瞬間にルームランプを点消灯制御するクルマが多い。「ゆりかごから墓場」までじゃないが、ドライバーが乗るときから降りるときまでの一連の動作をもクルマはランプで面倒を見るようになっているのだ。
便利なことは便利だが、暗いままでも構わないひとはOFFにしておくほうがいいだろう。
また、ふだんDOORにしているひとがドアを開ける前にONにし、その後に降りてドアを閉め、ルームランプをつけっぱなしにしたことに気づかずにバッテリー上がりを招くということもないではない。
実際、うっかり点灯させたままにしたことに翌朝気づいてびびり、恐る恐るキーONにすると、そのときスターターモーターの元気がなくて2度めにびびる。この不始末も1度や2度くらいならバッテリーも大目に見てくれるが、これを何度となくやってしまうとそのうちふてくされて復活しなくなることだろう。
こういったことを避けたいなら、いっそふだんからOFFに決め打ちしておくといい。
いまのクルマは室内灯にLEDを使う例が増えたほか、ランプを点灯しっぱなしにしていると、ある一定時間が経過したときにすべてを消灯させる機能がつくようになり(バッテリーセーバー)、バッテリーを上げようと思っても上げられないほどになっているから問題ないと思うが、気になるひとはご参考に。
4.非常点滅表示灯の使用も慎重に
ここまではキーポジションがON、ACCで使える電装品を挙げたが、OFFで使える電装品は少なくない。
OFFでも流れている電気のことを「常時電源」または「待機電源」と呼び、前項のルームランプも常時電源で働く部品のひとつだ。また、暗電流も常時電源に含まれる。
キーOFFでもスイッチを入れれば点灯するスモール&フォグ&テールランプ/ロー/ハイビーム、ブレーキペダルを踏めば点くストップ&ハイマウントランプ、ボタンを押せば音が鳴るホーン・・・これらはすべて常時電源で働くものだ。
すべてがOFFの状態で使うことができるものの中で、ルームランプ並みかそれ以上に気をつけなければならないのが非常点滅表示灯だ。ハザードランプのほうが通りがいいか。
電球のルームランプは、暗電流で作動するどの電子デバイスよりも消費電流が大きいと書いた。前後ランプがLEDのクルマが多くなったが、よほど値段が高いクルマ以外の中には、リバースやターンシグナル(特に後ろ)はまだ電球を使っているクルマが多くある。
クルマのターンシグナルは車体の前後左右に6つ、メーター表示を入れると計8か所ある。これら8つのランプを一挙同時に点滅させるわけだからかなりの電力消費量であることは想像に難くない。
バッテリーが満充電の場合でも、むかしはせいぜいいいとこ40分・・・「むかしは」と書いたのは、先日、私が借りている駐車場の、お隣にある4代めプリウスが、なぜかハザード消し忘れで点滅しており、私が出かけるときに点滅していたハザードが3時間後に帰ったときも点滅していたのを見たからである。これにはぶったまげた。
だからいまのクルマは40分やそこらで音をあげることはなさそうだが、長時間ハザードがバッテリーにとっていいはずはないので、必要なとき以外は控えるべし。
ACCであれOFFであれ、エンジンを切っているとき=充電していないときに電装品を使うのは、失業中のひとが貯金を切りくずして生活しているのと同じようなものだ。収入がないのにあれやこれやにお金を費やすと貯金もあっという間に底をつく。
バッテリーを長持ちさせる方法、探せば他にもあるのだが、ここでは心がけをほんのちょっと変えるだけすむ、タダで行えるバッテリー長持ちの使用法をご紹介した。
これらを行ったうえでバッテリー消耗に気づいたら、そのときこそが本当の交換時だ。
やることをやっての消耗・交換なら「もっと丁寧に使えばよかった」と後悔することもないだろう。
それにしてもバッテリー、高くなったやね。
私が2018年に旧シエラを狙った理由のひとつに、バッテリーが安いというのがある。
1998年1月に発売されて以降、周囲のクルマが4~6年ごとに新型化するまわりのクルマを尻目に、旧シエラ(と軽ジムニー)だけはわが道を行くとばかり、1998年時のまま20年走り続けてきた。充電制御もアイドリングストップもなし。したがってバッテリーは昔ながらの品を使うことができ、交換時のバッテリー代は7000円台の後半、消費税込みで8000円台の出費ですんだ。充電制御付きの日産ティーダ(2008年型)のときは安くても2万円弱だった。別にバッテリー代の安さだけでこのクルマを選んだわけじゃないし、燃料消費はティーダより多いから、ガソリン代込みで考えるとどっちがどうとはいえなくなるが、バッテリー交換だけを切り取れば「幸せ」な思いをしたのは確かである。
自動車各社、省エネ・環境保護もけっこうだが、そのために高い維持費、補修費をユーザーに強いるデバイスをてんこ盛りにする傾向について、そろそろ考え直すときではないだろうか?
●最後に
バッテリー上がりのとき、電気をもらう自車と供給する救援車のバッテリー同士をつなげるブースターケーブルを携行しないひとがいるが、これは自動車乗りとしてマナー違反だと思う。そもそもバッテリーを上げて近くのクルマに助けを求めるだけでカッコ悪いのに、ケーブルまで拝借するなんざあカッコ悪いことこの上ない。
お隣さまに借りるのはバッテリーだけ。少々場所を取るが、ケーブルはトランクに常備しておくべし。
という意味から最近関心を抱いているのは、カー用品店で売られているジャンプスターター。持っているひとが多いモバイルバッテリーの親分みたいなもので、束ねたケーブルほど場所は取らない。ちょっと高いけど、使い勝手はどうなのかなあ・・・興味がある。とにかく、バッテリー上がりにはお気をつけあそばせ。