MT×200万円切り×車重920kg=スズキ・スイフト 楽しくて燃費もいい

スズキ・スイフトHYBRID MX(5MT)
2023年12月に7年ぶりのモデルチェンジを果たしたスズキ・スイフトは、先代にあった5MT仕様の設定を受け継いだ。先代はスポーティな位置づけのRSとベースグレードのXGに5MTの設定があった。5MTが選べるのは2WD(FF)のみで、4WDはCVTのみの設定である。この5MTモデルをドライブに連れ出した。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

アイドルストップからの再始動でマイルドハイブリッドのありがたみが

スズキ・スイフトHYBRID MX(5MT)車両価格:192万2800円

新型スイフトはHYBRID(ハイブリッド) MZ、HYBRID MX、XGの3グレード構成だ。5MTの設定があるのは、HYBRID MXの2WD。先代はガソリンエンジン仕様にのみ5MTの設定があったが、新型はハイブリッド仕様に設定される。この違いは大きい。

スイフトのハイブリッドシステムはいわゆるマイルドハイブリッドで、従来のオルタネーターをISG(モーター機能付き発電機)に置き換えたもの。減速時にISGで車両の運動エネルギーを回生して電気エネルギーに置き換え、助手席シート下に搭載するリチウムイオンバッテリーに蓄える。加速時には、バッテリーに蓄えた電気エネルギーを使ってISGを駆動し、エンジンをアシスト。そのぶんエンジンの負担が減ってガソリンの消費を抑えることにつながり、燃費向上を実現する。

全長×全幅×全高:3860mm×1695mm×1500mm ホイールベース:2450mm
トレッド:F1480mm/R1490mm 最低地上高:120mm
車重:920kg 最小回転半径:4.8m

正直、メーターにエネルギーフローを表示した状態でつぶさに観察していないと、ISGのアシストを意識するのは難しい。「いま、ISGがアシストしてくれているな」と体感するほど力強いアシストが介入するわけではないからだ。発進時にエンジンを始動せず、ISGのみで走行する、いわゆるEV走行をするならハイブリッドらしさを実感するかもしれないが、スイフトのマイルドハイブリッドはEV走行機能を備えていない。

ならばありがたみは薄いかというとそんなことはなく、アイドリングストップ後のエンジン再始動時にありがたみを感じる。通常のエンジン車の場合、アイドリングストップ後のエンジン再始動はスターターモーターで行なう。そのため、スターターモーターのピニオンギヤがフライホイールの外周にあるリングギヤに飛び込んで高速回転する。その際、耳障りなキュルキュル音がどうしても発生してしまう。

エンジン形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:Z12E型 排気量:1197cc ボア×ストローク:74.0mm×92.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:82ps(60kW)/5700rpm 最大トルク:108Nm/4500rpm 燃料供給:PFI 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:37L モーター WA06D型直流同期モーター 最高出力:3.1ps/最大トルク60Nm

ISGでエンジン再始動を行なうマイルドハイブリッドの場合は、ベルトを介してクランクシャフトを回すのでギヤの噛み込み音がなく、再始動は静かでスムースだ。MT車の場合はクラッチの踏み込みがエンジン再始動の合図になる。クラッチを踏みながらギヤを1速に入れると、その間にエンジンの再始動が終了している。

スターター方式の場合は1速に入れてクラッチを離すときにまだ再始動が終わっていない場合があり、そのせいで運転のリズムが崩されてしまうことがある。その点、マイルドハイブリッドとの組み合わせとなる新型スイフトのMT車の場合、アイドリングストップからの再始動は完全にストレスフリーだ。単純に、ありがたい機能である。

先代スイフトでXGの5MT車を選択した場合は15インチフルホイールキャップだったが、新型スイフトの5MT車は中間グレードのHYBRID MXなこともあって16インチアルミホイールが付く。見た目はホイールキャップっぽいが、アルミホイールだ。

ブリヂストンECOPIA タイヤサイズ:185/55R16
リヤサスペンションはトーションビーム式

軽さは、やはり正義だ

全方位モニター付きメモリーナビは25万0800円

車両本体価格は192万2800円(税込)で先代同様に200万円を切るが、先代RSやXGと同様に新型のHYBRID MXもナビゲーションシステムはオプション設定だ。先代はディーラーオプション、新型はメーカーオプションが基本で、ディーラーオプションの設定もある。試乗車はメーカーオプションの「全方位モニター付メモリーナビゲーション・スズキコネクト対応通信機装着車」(いわゆる「9インチメモリーナビゲーション」)が装着されており、価格は25万800円だ。このオプションを選択すると、(今どきめずらしく?)CD/DVDプレーヤーがセットで装着される。

諸元表を確認すると、各ギヤ比と最終減速比は先代と変わっていない。トランスミッションはキャリーオーバーなのだろう。ただし、前述したように新型スイフトのMT仕様はマイルドとはいえハイブリッドシステムとの組み合わせだし、1.2Lの排気量は変わらないものの、エンジンは新型である。

MTでギヤ段を任意に選択しながら走っていると、懐の深いエンジンの実力を存分に味わうことができる。先代スイフトはK12C型の1.2L直列4気筒自然吸気エンジンを積んでいたが、新型はより高効率な、Z12E型の1.2L直列3気筒自然吸気エンジンを積む。MTとの組み合わせで走っている(操っている)と、中間加速の力強さが頼もしい。市街地で2速、3速、4速とシフトアップし、巡航スピードに達するまでの一連のシーケンスが爽快だ。高速道路の追い越しシーンでも力不足によるストレスを感じることはなかった(ずっと1名乗車だったが)。

シフトレバーの操作フィールは特別カチッとしているわけではないし、剛性感があるでもない。ただ、ルーズにすぎることもなく、良く言えば、妙なクセはない。車両重量は920kgで、同グレードのCVT仕様に対し20kg軽い。その差が体感できるとは自信を持って言いづらいが、絶対的な軽さは効いており、だから1.2Lの自然吸気エンジンでも、ストレスなくキビキビ走るのだろう。ギヤ段をドライバーの意思で任意に選択できるMT車だと、なおのこと活発に動き回れる。そこが魅力だ。

パーキングブレーキは、機械式。サイドブレーキレバーがある。

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ひとつだけ覚悟が必要なのは、MT仕様には電動パーキングブレーキ(EPB)が付いていないことだろうか。最上級グレードのHYBRID MZはスズキの小型車で初めてEPBを標準装備したが、HYBRID MXはコンベンショナルなサイドレバーを引いてパーキングブレーキをかける。EPBを装備していないので、信号待ちなどでブレーキペダルから足を離しておけるブレーキホールドも付いていないし、上り勾配での発進時はサイドレバーを引きながらクラッチをミートさせる“坂道発進”が必須だ。

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そんな昭和的な操作が苦にならない、あるいは、そこも含めてMTの運転を楽しみたいと考える人にとって、スイフトのMT仕様は貴重な存在だ。ちなみに、今回の試乗では331.3km走って(東京〜御殿場間の高速道路での往復移動を含む)、平均燃費は24.0km/Lだった。シフトレバーとクラッチを操作しながら、気持ち良く走って「いい燃費」が得られるのも、スイフトMT仕様の魅力である。

WLTCモード燃費:25.4km/L 331km走行しての実燃費は燃費計で24.0km/Lだった
ブレーキ:Fベンチレーテッドディスク Rドラム

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スズキ・スイフトHYBRID MX(5MT)
全長×全幅×全高:3860mm×1695mm×1500mm
ホイールベース:2450mm
車重:920kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
駆動方式:FWD
エンジン形式:直列3気筒DOHC
エンジン型式:Z12E型
排気量:1197cc
ボア×ストローク:74.0mm×92.8mm
圧縮比:13.0
最高出力:82ps(60kW)/5700rpm
最大トルク:108Nm/4500rpm
燃料供給:PFI
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:37L
モーター
WA06D型直流同期モーター
最高出力:3.1ps/最大トルク60Nm
トランスミッション:5速MT

WLTCモード燃費:25.4km/L
 市街地モード21.2km/L
 郊外モード26.0km/L
 高速道路モード27.3km/L
車両価格:192万2800円
全方位モニター付きメモリーナビ25万0800円、

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…