スズキ・スーパーキャリイ レジャーにも使える? 特別仕様車Xリミテッドを試す

スズキ・スーパーキャリイXリミテッド
軽トラの代名詞的存在、スズキ・キャリイ。そのキャリイのキャビンを拡大したのがスーパーキャリイだ。そのスーパーキャリイにタフで精悍なイメージを付与した特別仕様車が、Xリミテッドである。
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)

身長184cmのドライバーも楽々ポジションをとれる

荷台寸法:長さ1480mm×幅1410mm×高さ290mm
荷台床面地上高:160mm 最大積載量:350kg

軽トラックのスズキ・キャリイは2013年にフルモデルチェンジして11代目に移行した。11代目の開発にあたってスズキは、農業、漁業、建設業、配送業など、軽トラックを利用しているユーザーの使用状況を徹底的に調査。改良すべきポイントを抽出し、11代目キャリイに反映させた。

ニーズが高かったのは、居住空間と乗降性、小回り性、悪路走破性、燃費、防錆性能などの、各性能の向上だった。歴代キャリイの特徴である広い荷台を維持しながらこれらの改善が求められたし、スズキは改善要望に応え、11代目キャリイに反映した。

上記は『スズキ・キャリイ60周年 積んで・運んで 日本を支えたスズキ・キャリイ』(世良耕太/三栄)を参考にした。本書にも記述はあるが、2018年、市場ニーズに応えるべく発売したのが、室内空間を拡大したスーパーキャリイだった。そのスーパーキャリイにタフで精悍なイメージを付与した特別仕様車が、Xリミテッドである。発売は2023年12月13日。『東京オートサロン2024』で展示されていたので、見覚えのある方もいることだろう。

全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1885mm ホイールベース:1905mm
トレッド:F1305mm/R1290mm 最低地上高:160mm
最小回転半径:3.6m

スーパーキャリイは、ベースのキャリイに対しキャビンを後方に460mm拡大。拡大分を居住性の向上に存分に使い、シードスライド長は軽トラック最長の180mm(10mm×18段)を実現した。なおかつ、運転席リクライニング角は最大40度を実現している。これも軽トラックナンバーワンだ(いずれもスズキ調べ。ナンバーワンといっても競合はダイハツ・ハイゼットトラックしかいないが)。

これにより、大柄なドライバーでも乗用車のようなゆとりのある姿勢で運転できるようになった。ちなみに筆者の身長は184cmだが、試乗時、何の不都合もなかった。ベースのキャリイが前型に対してステアリングから乗員ヒップポイントまでの距離を45mm拡大したのに加え、ステアリングコラムカバーを小型化して膝まわりにゆとりを持たせたのも、快適な運転空間の確保に効いている。

筆者の身長は184cmだが、快適なシートポジションがとれた

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最大40度のリクライニング角は、仕事でスーパーキャリイを使う際は休憩時に体を休めるのに助かる。レジャーで使う際も同様だ。全高はキャリイより120mm高い1885mmのハイルーフ仕様とし、頭上に生まれた空間には収納に便利なオーバーヘッドシェルフを設けた。キャビンの延長分は横幅1235mm×長さ250mm×高さ920mmのシートバックスペースを生んでいる。雨に濡らしたくない荷物や衣類、食品など、さまざまな収納に活用できる。セキュリティ上の理由から荷台に載せたくない荷物を載せておく空間としても便利だ。

スーパーキャリイは助手席のシートバックを前に倒すとテーブルとして使用できる。食事の際にテーブルとして利用したり、タブレットやノートPCを置いて作業したりするのに重宝する。

助手席のシートバックを前に倒すとテーブルとして使用できる。

キャビンを拡大すると心配になるのは荷台の使い勝手だが、よく考えられている。キャビン後部の床を持ち上げることで下に空間を設け、荷台床面前方をキャビン側に浸食させたのだ。この2段構造を採用した結果、荷台フロア長はキャリイ比−55mmの1975mmを確保。この寸法なら脚立やみち板(足場板)などの長尺物はキャリイと同様に積むことができる。キャビンと干渉しない部分の荷台長は1480mmあるので、自転車程度のサイズなら積載可能だ。

XリミテッドはスーパーキャリイX LEDヘッドランプ装着車(4月19日の一部仕様変更により、LEDヘッドランプは標準装着となった)をベースに、専用デカール、ブラック塗装のLEDヘッドランプ・エクステンション&フロントガーニッシュ&フォグランプベゼル、ブラックドアハンドル&フォグランプベゼル、ブラックメタリック塗装の専用スチールホイールを特別に装備した。

専用装備は、専用デカール、ブラックのドアハンドル、ドアミラー、専用フロントガーニッシュ、専用LEDヘッドランプ、専用フォグランプベゼル、専用スチールホイール

結果、見るからに精悍なルックスに仕上がっている。2WD/4WDそれぞれに5MTと4ATの設定があり、試乗車は4WD・5MTだった。4WD・5MTの場合は高速段と低速段の2段切り替えが可能なパートタイム4WDとなる。普段は2H(2WD、後輪駆動)で走り、平坦な砂利道やあぜ道などでは4H(4WD高速)、起伏の激しい荒れた道などでは4L(4WD低速)へと、レバー操作で切り換えることができる。

見た目通りのタフネスぶり

荷台床面地上高:160mm 最大積載量:350kg

X 4WD・5MT車はデフロック機構を備えており、センターコンソールのボタンを押すことでリヤデフがロックされる。ぬかるみからの脱出時に威力を発揮する機能だ。つまり、4WD・5MT車は全バリエーション中、最も悪路走破性能の高い仕様ということになる。タフなのは見た目だけでない、ということだ。

キャリイは仕事の相棒として熟成と洗練の度合いを高めてきただけあり、扱いやすく、乗りやすい(そうなるように、進化を重ねてきたからだ)。R06A型の658cc直列3気筒自然吸気エンジンは50ps(37kW)の最高出力と59Nmの最大トルクを発生するにすぎない。だが、840kgの軽量ボディ(と感じたのは、1040kgのジムニーに乗ったばかりだったからか)をストレスなく走らせることができる(空荷ではあったが)。

タイヤ:145/80R12 YOKOHAMA SUPER VAN355 ブレーキ:Fディスク/Rドラム
ステアリング機構は、ラック&ピニオン式

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メーカーは違うが、悪路走破性の高さとオンロードでの快適な乗り味を両立し、かつ、5名の乗員と相応の荷物を積載できる、多種多様かつ幅広い使い方に応えるピックアップトラックが三菱自動車のトライトン。対照的に、高い悪路走破性を備えながら極限までコンパクト、かつ低コストで成立させたのがスーパーキャリイという気がする。小さいけれど、タフさでは負けない。夢ふくらむ一台だ。

スズキ・スーパーキャリイXリミテッド
全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1885mm
ホイールベース:1905mm
車重:840kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式&リーフスプリング式
駆動方式:パートタイム4WD
エンジン
形式:直列3気筒DOHC
型式:R06A
排気量:658cc
ボア×ストローク:64.0mm×68.2mm
圧縮比:11.3
最高出力:50ps(37kW)/6200pm
最大トルク:59Nm/3500rpm
燃料供給:PFI
燃料:無鉛レギュラー
燃料タンク:34L
トランスミッション:5速MT
WLTCモード燃費:17.9km/L
 市街地モード 17.2km/L
 郊外モード 18.8km/L
 高速道路モード 17.6km/L
車両価格:166万6500円

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…