トヨタ「RAV4」初登場。都会派クロスオーバーSUVのハシリは176.9万円~で大ヒット【今日は何の日?5月10日】

トヨタ RAV4
トヨタ RAV4
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日5月10日は、従来のオフローダー色の強いSUVでなく、乗用車ベースの街乗りでも快適に走れる、お洒落なSUV「RAV4」が誕生した日だ。その後、ホンダの「CR-V」や日産自動車「エクストレイル」などが登場し、現在も人気の都会派SUVの先駆的なモデルである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)

■乗用車をベースにした新感覚の都会派SUV誕生

1994年(平成6)年5月10日、トヨタのコンパクトSUV「RAV4」が発売された。1990年代前半のRVブームの中、本格オフローダーでなく、乗用車ベースのオフロードでも街中だって快適に走れる新感覚のRAV4は、アクティブな若者やファミリー層を中心に人気を獲得し、大ヒットになった。

トヨタ RAV4
1994年にデビューした初代「RAV4」。都会派クロスオーバーSUVというジャンルを開拓して大ヒット

●RVブームの中、コンパクトな本格オフローダーが登場

1980年代後半のバブル好景気に、高級車やスポーツモデルだけでなく、オフロード走行も楽しめる三菱自動車「パジェロ」やトヨタ「ハイラックスサーフ」のような4WDモデル人気を獲得し、RVブームが起こった。

エスクード
1988年にデビューした「エスクード」。ボクシーなデザインのライトSUVとして登場

一方で、市場ではもっと安価で扱いやすいコンパクトな本格オフローダーを求める声が上がった。これを受け、1988年にスズキから「エスクード」、1990年にはダイハツ「ロッキー」といったコンパクトサイズの4WDオフローダーが登場。ライトSUVを謳ってはいたが、いずれも堅牢なフレーム構造で副変速機を備えた本格4WDのコンパクトオフローダーでもあった。
エクスードもロッキーも、オフロード走行だけでなく、街中でも扱いやすいことをアピールし一定の評価を得たが、パジェロやハイラックスサーフを小型化したボクシーなスタイリングは、ターゲットにした若者から十分な支持を受けることはできなかった。

●クロスオーバーSUVのパイオニアとなったRAV4

トヨタ RAV4
トヨタ RAV4

1994年のこの日、それまでの本格オフローダーとは違う、乗用車をベースにした新感覚SUVのRAV4が、“フレキシブルビークル(多様な用途に応えるクルマ)”のキャッチコピーでデビューし、大きな注目を集めた。

「RAV4」のインテリア
「RAV4」のインテリア。コンパクトなボディだが、広い室内空間を確保

乗用車をベースにしたモノコック構造のRAV4は、車高を上げたコンパクトなボディに、オフロードでも街中でもフィットするアクティブなフォルムと、立体的で開放感のある室内空間を実現。
パワートレインは、最高出力135psを発生する2.0L直4 DOHCエンジンと5速MTおよび4速AT組み合わせ、駆動方式はセンターデフにビスカスカップリングを組み込んだフルタイム4WDが採用された。

オンロード走行を重視したRAV4は、高い着座位置による取り回しの容易さ、女性でも扱いやすい運転感覚から、アクティブな若者やファミリー層を中心に人気が沸騰、記録的な大ヒットになった。
車両価格はMT車で176.9万円、AT車で189.8万円という破格の価格も人気を加速。ちなみに、当時の大卒初任給は19.1万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算で現在の価値では約213万円(MT車)に相当する。

●その後も堅調な販売を続け、特に海外で人気モデルに

トヨタ RAV4
「RAV4」のリアビュー。全体的に曲面基調のソフトなフォルム

その後、2代目は海外市場からの要望に応えて3ナンバーボディに大型化し、3代目は新プラットフォームを採用しさらに大型化した。その背景には、人気のRAV4も2000年を迎える頃には国内での人気に陰りが見え始め、一方で海外、特に米国では人気となったため海外を重視したクルマづくりが必要だったのだ。

トヨタ RAV4
2019年にデビューした5代目(現行)「RAV-4」。HEVやPHEVも追加

海外志向によるボディの大型化で国内の販売が落ち込んだRAV4は、ついに4代目(2013年~)の国内投入が見送られた。しかし、2015年以降に日本でクロスオーバーSUVの人気が高まったため、5代目は再び2019年から国内での販売を始め、ハイブリッドとPHVを加えて、現在は堅調な販売を続けている。

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RAV4の功績は、オフロード走行が好きな人だけでなく、そのお洒落なスタイリングや都会的な雰囲気により、誰でも乗れるSUVという新しいジャンルを開拓したことである。続いて、ホンダの「CR-V」や日産自動車「エクストレイル」などが追走し、都会派SUVが人気ジャンルとして確立されたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…