子供の頃に憧れたツインターボ+リトラの前期型70スープラ! 購入後の課題はノーマル戻し! 【クラシックカーフェスティバル2024in 関東工大】

すでにマスク姿の見学者が少数派になり日常が戻った旧車イベント会場の様子。2024年のゴールデンウィーク初日となる4月27日に開催されたクラシックカーフェスティバルin関東工大の会場に、貴重な前期型70スープラの姿を見つけた。しかも人気のツインターボでオーナーは20代の若者だった。
PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru) 
1986年式トヨタ・スープラエアロトップGTツインターボ。

2代続けてセリカXXを名乗ったセリカの上級車種は、アメリカなどへ積極的に輸出された。当時のセレクタリーカー需要に応えるためで、手頃なサイズ(アメリカでの)と高性能な国産2ドアクーペは当地で人気だった。ただXX(ダブルエックス)が現地での成人映画などを連想させることから、現地名は当初からスープラを名乗っていた。この名前が国内でも使われるようになったのが1986年にフルモデルチェンジしたA70型から。国内では初代スープラになるわけで、少々混乱を招くことになる。

ボディサイドのデカールは新車時からのもの。

70スープラが発売された時はトヨタ3000GTというキャッチコピーが使われ、トヨタ製スポーツカーの新たなフラッグシップであることを強調していた。その名の通り最上級モデルは3リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載する3.0GTターボだが、当時はまだ国内での自動車税制が変更される前で3ナンバー車には高額な税率が課せられていた。だから70前期の3リッターモデルは当時から非常に少ない。最も売れ線だったのが2リッター6気筒ツインターボエンジンである1G-GTEU型を搭載するGTツインターボ。バブル景気に向けて好景気が続いた時代らしく、エアロトップGTツインターボの新車価格は313.4万円だったがノンターボの廉価グレードよりも売れた。

エアロトップの爽快感は抜群。

70スープラは’88年のマイナーチェンジで後期型となり、3ナンバー税制が変更されたことを受けてワイドボディのツインターボもラインナップされた。さらに’90年には280psを誇る2.5ツインターボが新設定されたことで前期型を上回る人気を獲得。これは現在まで続く現象で、70スープラといえば後期型という印象が強い。人気を受けて現在の中古車市場でも流通する多くが後期型で前期型を見つけられるのはごく稀なこと。それほど後期型の人気が高い。

純正アルミホイールも新車時からの装備。

前期型を見つけられても、その多くはGTツインターボやNAの廉価グレードで3.0GTターボを見つけることは至難の業。ところが前回の記事では希少な前期3リッターモデルを復活させた人を紹介した。すると不思議なもので、今回は全く別のイベントを取材したのだが希少な前期の人気モデルであるGTツインターボを見つけることができた。世間では70より80が人気なスープラだが、個人的には新車当時最も欲しい車種だったこともあって見つけるとつい取材してしまう…。

80年代らしい装備のリヤウインドールーバー。

クラシックカーフェスティバル2024in関東工大の会場に現れたのがホワイトのボディが眩しい前期型GTツインターボ。しかもエアロトップながら5速MTという仕様で、これはマニアが見たらヨダレものの1台。ナンバープレートが化粧プレートになっていて、そこには「TOYOTAカローラ店80`s」と書かれている。すっかり有名になった80年代にトヨタ店で販売された車種オンリーのオーナーズクラブ。このクラブには10数年も前から取材協力をお願いしているので知っているメンバーが多いのだが、70ツインターボは初見。早速お話を伺うことにした。

前期型の控えめなリヤスポイラーが好印象。

TOYOTAカローラ店80`s会長の大塚さんに紹介されたオーナーは、なんと26歳と若い佐藤潤さん。若者のクルマ離れというセリフがひとしきり叫ばれた時期もあるが、肌感覚として現在10代から20代の若い世代は決してクルマが欲しくないわけではない。むしろクルマ好きな世代と言ってもいいくらいで、考えてみれば現在50代から60代が親世代になるから影響を受けて育ったのだろう。佐藤さんも70スープラが子供の頃からの憧れだったそうで、マニアックなことに後期型ではなく前期型にこだわって探された。

2リッター直列6気筒ツインターボの1G-GTEU型エンジン。

おそらく40年ほど前に巻き起こったスーパーカーブーム時の少年たちと同じように、カタログや書籍を通してスープラのことを調べまくったのだろう。免許取得時には理想とするスープラ像が出来上がっていたに違いなく、ブレることなく理想のGTツインターボを手に入れた。それが2年前のことなのだが、さらに驚くべきはスープラ以外にも71チェイサーまで所有されているのだとか。しかも実家暮らしでガレージがあるような環境ではない。一人暮らしをされていて’80年代のトヨタ車を2台も維持されているのだから、その思いは本物だ。

フルノーマルに戻されたインテリア。
アナログメーターがズラリと並ぶメーターパネル。
社外品に変更されていたオーディオは苦労して純正を探して装着した。

佐藤さんが購入したとき、このスープラは定番と言える部分に社外品を装着していた。オーディオやステアリングホイール、ドアミラー、マフラーなどがそれで、ライトなカスタムが施されていた。ローダウンされていなかっただけ良かったといえ、購入後の課題はいかにノーマルへ戻すかということになる。台数が多く残っている車種なら比較的簡単に部品は揃うが、70前期は前述のように後期型ほど人気がないため部品が流通する機会も少ない。粘り強くインターネットオークションで探し続け、現在のフルノーマル状態へと戻すことができた。

年式を考えたら程度の良いフロントシート。

ノーマルに戻す以外に手がかかったのが、やはり古いクルマらしいトラブル。ただでさえ熱量の多いツインターボエンジンなので、冷却系をメンテナンスするのは必須。ウォーターポンプや水回りのホースなどを交換しつつ、ステアリングラックからのオイル漏れが発覚したため、これらを対処している。現在の走行距離は17万キロを超えたところなので、まだまだこれからトラブルは出ると思われる。だが理想のスープラを手にした佐藤さんだし、クラブには猛者が揃っている。末長く前期型ツインターボを楽しまれることだろう。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…