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●マツダが進めたロータリーモデルのラインナップ攻勢
1967年、マツダは世界初の量産ロータリーエンジン搭載車「コスモスポーツ」を発売し、世界中に大きな衝撃を与えた。最高出力110ps/最大トルク13.3kgmを発生する10A型(491cc×2ローター)ロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツは、圧倒的な動力性能でロータリーの優れたポテンシャルをアピールした。
その後、「ファミリア(1968年~)」を大衆車市場、「ルーチェ(1969年~)」を高級車市場、「カペラ(1970年~)」を中級車市場、「サバンナ(1971年~)をスポーツ車市場、ラグジュアリースポーツの「コスモAP(1975年~)」と、ロータリーモデルのラインナップ攻勢をかけた。
ロータリーモデルは国内で順調に台数を伸ばし、一時はロータリーエンジンの生産が間に合わないほどの人気を獲得。マツダはロータリーエンジン量産化に成功した唯一のメーカーとして歴史にその名を刻んだ。
●ロータリーへの逆風によって大きく失速したロータリーモデル
しかし、1973年に起こったオイルショックとマスキー法を起点とした排ガス規制の強化により、メーカーはその対応に追われ、特にレシプロエンジンよりも燃費や排ガス性能に苦しんだロータリーエンジンにとっては厳しい状況が続いた。
当時のロータリーエンジンの排ガス性能は、レシプロエンジンと比べるとNOxは半分程度だったが、HCとCOは5~10倍と多く、さらに燃費性能も大きく劣っていた。このような状況下でロータリーエンジンの燃費の悪さが市場でクローズアップされ、好調だった米国ではロータリーモデルの在庫が増え続け、国内の販売は3割近く落ち込む結果を招いた。
マツダは、巻き返しを図るため排気系に改良版サーマルリアクター(熱反応器)を装備し排ガスを低減。サーマルリアクターは、排気ポートの下流に装着した断熱性の高い熱反応器にエアポンプからの新鮮な空気(酸素)を投入することで、未燃のHCとCOを燃焼させるシステムである。
また燃費についても、ガスシール性の改良などロータリーエンジンの改良により、同クラスのレシプロエンジン車と同等レベルまで改善し、ロータリー存亡の危機を乗り越えることに成功したのだ。
●ロータリー復活の象徴となったサバンナRX-7(SA22C型)
上記のようなロータリーエンジンの改良により、最も厳しかった昭和53年排ガス規制に適合したピュアスポーツのRX-7の登場は、大きな注目を集めた。
まず注目されたのは、エアロダイナミックスに優れたCd値0.36を達成した流麗なスタイリングだった。リトラクタブルヘッドライトを採用したラジエターグリルレスのスラントノーズに、リアは個性的なリフトバックウインドウとリアデッキとし、それまでの国産車にはない斬新なデザインに多くのユーザーは魅了された。
搭載された12A(573cc×2)型ロータリーエンジンは、最高出力130ps/最大トルク16.5kgmを発生し、1000kgを切る軽量ボディにより、最高速度は180km/h、0→400m加速15.8秒と、「ポルシェ924」や「フェアレディZ」に匹敵する抜群の動力性能を発揮した。
さらに、軽量コンパクトなロータリーの特徴を生かし、エンジンをフロントミッドシップして、前後重量配分を50.7:49.3と最適化することで、スポーツカーらしい軽快なハンドリング性能も実現されたのだ。
車両価格は、5速MTが169万円、リミテッドREマチック(3速AT)が173万円。ちなみに当時大卒初任給は10.3万円程度(現在は約23万円)なので、現在の価値では約377万円(5速MT)に相当するが、その実力から見ると割安感があり、ロータリー復活を象徴する大ヒットモデルとなった。
●世界三大耐久レースやWRCでも活躍
パワフルな走りのRX-7は、モータースポーツでも活躍し国内外の販売促進に一役買った。
RX-7は、その優れた高速耐久性をアピールするために、世界三大耐久レースに果敢に挑んだ。デビューの翌1979年のデイトナ24時間レースで2.5L以下のGTUクラスで初参戦初優勝、1980年以降は無敵で1987年までGTUマニュファクチャラーズタイトル8連覇などの輝かしい戦績を残した。
また同1979年には、ル・マン24時間レースにも参戦し、1981年にはスパ・フランコルシャン24時間レースで総合優勝を飾った。
さらにサーキットだけでなくWRCにも参戦。1979年にWRCモンテカルロラリーの“グループ2”でクラス優勝、1983年のアクロポリスラリーでクラス2位/3位、1985年にはトップカテゴリーの“グループB“で参戦し、アクロポリスラリーで総合3位という偉業を成し遂げたのだ。
●サバンナRX-7が誕生した1978年は、どんな年
1978年には、サバンナRX-7の他にも、トヨタのコンパクトカー「ターセル/コルサ」や、三菱自動車のコンパクトカー「ミラージュ」、ホンダの初代「プレリュード」も誕生した。
ターセル/コルサは、トヨタ初のFF車でTV-CMに当時のスーパーアイドル山口百恵さんを起用し話題に。ミラージュはスーパーシフト付4速MTなど先進技術満載の欧州風ハッチバック。プレリュードは、ホンダ初のスペシャリティカーで人気は限定的だったが、続いた2代目と3代目プレリュードは大ヒットした。
その他、この年から自動車輸入関税が0%となり、1972年に返還された沖縄は米国施政下で右側通行を続けていたが、この年から本土と同様、左側通行に切り替えられた。新東京国際空港(成田国際空港)が開港し、英国で世界初の体外受精児(試験管ベビー)が誕生、人気女性グループのキャンディーズが解散、サザンオールスターズが“勝手にシンドバッド”でデビューした年だった。
また、ガソリン109.1円/L、ビール大瓶216円、コーヒー一杯220円、ラーメン270円、カレー352円、アンパン72円の時代だった。
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流麗なスタイリングとロータリーらしいパワフルな走りで、ロータリーを代表するスポーツモデルとなった「サバンナRX-7」。世界中の若者を夢中にさせた“ロータリーロケット”、日本の歴史に残るクルマであることに、間違いない。