さらなる進化を遂げた軽自動車界の絶対王者「ホンダN-BOXカスタム/N-BOX」【最新軽自動車 車種別解説 HONDA N-BOX CUSTOM /N-BOX】

2011年のデビュー以来、日本の軽自動車代表の一角を占めている「ホンダ N-BOX」シリーズ。23年秋のフルモデルチェンジでは初代のコンセプトを受け継いだツール的なシンプルさが好印象だ。パワフルな走行性能は熟成され、余裕のあるポテンシャルを見せる。ボディカラーやパワートレインなどの組み合わせの多さもトップセラーならでは注目ポイントだ。
REPORT:石井昌道(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:神村 聖 MODEL:花乃衣美優

運転席からの見晴らしを改善 高速域での安定感も強化

軽自動車で苦戦していたホンダは、企画・開発を一括するNシリーズを立ち上げ、その第一弾として2011年に発売されたのがN-BOXだ。それまでホンダは人気上昇中だったスーパーハイトワゴンをラインナップしていなかったこともあってNシリーズの先陣を切ることになったのだが、軽自動車らしからぬクオリティの高さと好ましい道具感のあるデザインで大ヒット。23年までに軽自動車での年間販売台数1位を10回、登録車を含めた総合1位を6回も記録し、国民車と呼べる存在になった。

エクステリア

「カスタム」は、空力とワイド&ローを両立するエアロ形状が特徴で、フルLEDリヤコンビランプは、スポーティなクリアタイプになる。ターボの15インチ切削アルミホイールはピューターグレー塗装。最小回転半径は4.5〜4.8m。

23年10月に発売された3代目は、2代目で刷新されたプラットフォームとパワートレインをキャリーオーバーしたモデルだが、それでもクオリティは相変わらずトップレベル。デザインは三世代にわたってキープコンセプトで、2代目でややゴツゴツとしたものの3代目はシンプルに戻された。標準モデルとカスタムが用意されるのはこれまでどおりだが、前者はターボを廃止して自然吸気のみに。他社に比べ自然吸気の力強さが頭ひとつ抜けていて、それゆえ人気が高いという証でもある。

乗降性

インテリアは最も変化を感じやすい部分で運転席からの視界が開けている。メーターをTFT液晶パネルとしたことでインパネを低くすることが可能になり、フラットなこともあって車両感覚がつかみやすい。左側や後方が見やすいピタ駐ミラーも進化している。900㎏オーバーの車両重量に対して自然吸気は必要十分といったところで、街なかでは軽快で、高速域や登坂路でも動力性能に不満を感じることはない。ただし、強めに加速するときのエンジン音、高速域で路面が荒れた場面でのロードノイズなどは耳障りなことがある。

インストルメントパネル

アウトホイールメーターからインホイール式に変更。各部をカドマル処理し、大理石のようなトレーなどにより上質感も演出。9インチナビを装着しても視界を妨げないのも美点。

それに比べるとカスタムのターボは、低い回転域からトルクがあり、遮音もしっかりしているので全般的に静か。動力性能に余裕があるだけではなく上質な雰囲気があるのが魅力だ。街なかでしか使わないから自然吸気で十分と考えている人も多いだろうが、しっかりと乗り比べて走りの質感を確かめるべきだろう。乗り心地の良さは従来モデルでも美点だったが、新型はそこをキープしつつ高速域での安定感が強化された。ソフトタッチでしなやかながら、速度を高めてもフラつきが少なくなっている。

居住性

ターボモデルはサスペンションが硬質になるので、低速域での乗り心地は自然吸気にやや劣ることになるが、高速域での安定性は高まる。高速道路のロングドライブが多い人にはうれしい特性だろう先進運転支援システムのホンダセンシングは従来の単眼カメラ+ミリ波レーダーから、単眼カメラのみのタイプに切り替わったが、性能は進化している。高速道路でアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストを作動させてみたところ、制御も緻密になっていて確実に運転の負荷を下げてくれた。

うれしい装備

先代よりもリヤゲートの解除レバーを70㎜下げたことで、オープン時に後ずさりする距離を短縮。開ける際に必要な力も抑えられた印象を受ける。
月間販売台数    19856台(23年7月~12月平均値)
現行型発表      23年10月
WLTCモード燃費   21.6 ㎞/ℓ ※「N-BOX」のFF車

ラゲッジルーム

熟成によって全面的に進化したN-BOXは、相変わらずベストセラーを続けていくポテンシャルが十二分にある。パワートレインとエクステリアの兼ね合いでチョイスが悩ましいのが唯一の死角かもしれない。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。

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