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デザイン変更が大好評 室内機能性や実用装備は継承
デリカミニは車名もデザインも、まるで完全な新型車のごとく2023年1月の東京オートサロンでベールを脱いだ。しかし、その実態は、前身となったeKクロススペース(以下、eK)のマイナーチェンジモデルである。eKもいわばSUV風スーパーハイトワゴンだったが、その内容や性能、あるいは同種商品ともいえるスズキ・スペーシアギアなどの売り上げを見るに、担当チームは「売れなさ過ぎ!」という忸怩たる思いを抱えていたという。そんな状況を打破すべく考え出されたのが、デリカミニだったわけだ。
エクステリア
一見するとeKとは別物の外装も、「デリカミニ化」で変更された部分はフロントフェイスとリヤバンパー、リヤガーニッシュ、ホイールアーチ、タイヤとホイールのみ。それだけでまるで別物に見せるのだから、自動車デザインは面白い。もともと軽規格ギリギリのボディサイズなので、特徴的なホイールアーチも別部品を付加しているわけではなく、ルーフと同様に塗装による塗り分けである。
乗降性
そんな外装とは対照的に内装は前身と大きく変わらない。650㎜のスライドドア開口幅や320㎜の後席スライド量はいまだクラストップ。リヤサーキュレーターやマルチアラウンドビューモニター、ラゲッジの樹脂フロアなどもeKから受け継がれた美点である。デリカミニの実用性や室内装備の機能性は今の目で見ても不足はない。その一方で、デリカミニ独特の佇まいに大きく貢献しているのが、4WDだけに採用された大径タイヤだ。これによって最低地上高も、4WDのみ以前より5㎜増加した160㎜となっている。前記のようにプレス部品やインテリアデザインには手が入っていないデリカミニだが、タイヤサイズを変更するのはマイナーチェンジとしては異例である。
インストルメントパネル
そんな4WDは乗り味もデリカミニ独自。eKの乗り味は基本的に日産ルークスと共通だったが、デリカミニでは4WDの乗り味は三菱専用チューンとなる。ちなみに、FFは従来同様にルークスと共通のままだ。というわけで、4WDはタイヤや地上高の変更に合わせて、ダンパーを最適化。絶対的な減衰力は従来と変わりないが、イニシャルスペーサーを調整して、低速時や不整路での乗り心地と安心感を高めている。さらに、グリップコントロールの制御も熟成されて、リアルな雪道や凍結路シーンにおける発進性能や安心感が高められているという。
居住性
そんなデリカミニはちょっとした不整路でもストレスなく走れるほか、舗装路でも豊かなストローク感による快適な乗り心地が印象的だ。4WDシステムは基本的に油圧多板クラッチによるオンデマンド式だが、あらかじめリヤに数%のトルクが掛かっており、トルク配分レスポンスも高い。舗装路でも純粋なFFより明らかな安定感がある。このように技術的な変更点はちょっとしたものだが、走りは確実により高級で豊かな味わいとなっているのがうれしい。
うれしい装備
月間販売台数 3224台(23年7月~12月平均値) 現行型発表 23年1月 WLTCモード燃費 20.9 ㎞/ℓ ※「G」系のFF車
ラゲッジルーム
それにしても、デリカミニは現代の軽自動車としては、デザインだけでなく走りや機能性でも異例なほど「キャラが立った」商品である。
※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.157「2024 軽自動車のすべて」の再構成です。