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■登録車No.1となった新世代コンパクトカー誕生
2001(平成13)年6月21日、ホンダが5ドアの新型コンパクトカー「フィット」を発表(発売は翌日)。斬新なスタイリングと、シートアレンジが自在な広い室内空間、世界トップレベルの燃費により、ホンダ初の登録車トップの座に君臨した。
●ヴィッツは、新世代コンパクトカーとして大ヒット
当時リッターカーと呼ばれた排気量1.0Lクラスのコンパクトカーは、軽のハイトワゴンと1.5Lクラスの小型車の狭間で、中途半端な存在になっていた。従来の利便性と安価が売りだったリッターカーのイメージを一掃したのは、1999年に登場したトヨタの「ヴィッツ」だった。
ヴィッツは、コンパクトカー定番の2ボックススタイルではなく、丸みを帯びた斬新なフォルムを採用し、室内はロングホイールベース化することで居住空間と荷室を確保。パワートレインは、1.0L直4 DOHC VVT-i(可変動弁機構)と、5速MTおよび4速ATの組み合わせ、駆動方式はFFと4WDが選べた。
親しみやすいスタイリングと実用的かつ機能的なパッケージングを実現し、世界中で爆発的なヒットを記録。ヴィッツは、その後の日本のみならず世界のコンパクトカー市場に大きな影響を与えたのだ。
●打倒ヴィッツで登場したMMコンセプトのフィット
ヴィッツが開拓した新世代のコンパクト市場に新たに名乗りを上げたのが、ホンダのフィットだ。ホンダ伝統の“MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想、すなわち”人のためにスペースは最大に、メカは最小”に基づいて開発された。
最大の特徴は、コンパクトカーでありながら圧倒的なスペースユーティリティを実現したこと。通常は後席下に配置する燃料タンクを、前席下の車両中央に配置したセンタータンクレイアウトを採用し、ワンクラス上の低床の室内空間を生み出したのだ。
パワートレインは、新開発の1.3L直4 i-DSIエンジンとホンダマチックS-CVTの組み合わせ。i-DSIは、1気筒の燃焼室に2つの点火プラグを対角に配置し、点火タイミングをずらすことで急速燃焼を実現する方式。これにより、燃費はクラストップの23km/L(10-15モード)を達成、これはヴィッツのCVTより4割程度優れた数値だった。
また、優れたエンジン性能と軽量なボディが相まって、小気味よい走りも実現。車両価格は、ローグレード(2WD)で106.5万円からハイグレード(4WD)144.0万円。ちなみに当時の大卒初任給は19.7万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値でローグレードが約124万円に相当する。
2001年の販売は、半年足らずで10万台を超え、翌2002年は25万790台を記録。2年目でカローラを凌ぎ、ホンダとして初の登録車トップの座を獲得した。
●最新型フィットは、販売台数がヤリス(4代目ヴィッツ)の1/3と苦戦
フィットとヴィッツは、その後モデルチェンジし、ハイブリッド車や安全運転支援技術の追加などによって進化し続けた。しかし、コンパクトカー市場には、日産自動車「ノート」やトヨタ「アクア」、「ルーミー」などの人気モデルの登場に加え、軽のハイトワゴンも領域侵犯し、フィットとヴィッツの存在は徐々に薄れてしまった。
そして、2020年2月10日にヴィッツ(4代目)がそれまでの海外ネーム「ヤリス」に車名を変更、一方のフィットもその4日後に4代目フィットがデビューした。新型フィットも堅調な人気を獲得しているが、2023年販売実績ではフィットは登録車トップのヤリスの1/3と大差をつけられ、苦戦が続いている。
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ホンダファンなら、利便性ならN-BOXで十分、ちょっと贅沢ならフリードが良いと考えるのか、2台ともフィットを上回る販売を記録し、フィットの存在感が薄れている。2026年頃と予想されている次期フィットに期待したいところだが、激戦区のコンパクトカー市場、存在感を示すには、あっと驚く秘策(EV?)が必要ではないだろうか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。