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■軽の高性能競争にスバルが投入した高性能モデル
1972(昭和47)年6月29日、スバルが「スバル360」の血統を継ぐ「レックス」を発表(発売は7月)。1967年に登場した「ホンダN360」が火をつけた軽自動車の高性能競争に対抗するため、スバルはクラストップの性能を誇るレックスを市場に投入した。
●人気は国民車スバル360から高性能で廉価なホンダN360へ
1958年にデビューし爆発的な人気を獲得していたスバル360も10年が経過し、1967年に最高出力31psを誇る高性能で31.5万円という廉価なホンダN360の登場で販売は下降、スバルはその挽回ために1969年「スバルR-2」を発売した。
スバルR-2は、基本技術はR360を踏襲し、スタイリングはてんとう虫の雰囲気から脱却し、ベーシックな2BOXスタイルへ変貌。エンジンは、最高出力30psを発揮する360cc 直2 SOHC空冷2ストロークエンジンと、4速MTおよびオートクラッチと呼ばれた2ペダルMTが用意された。スバルR-2の出足は好調だったが、ライバル車の低価格かつ高出力戦略に遅れを取り、人気は頭打ちになって約3年で生産を終えた。
そして、さらなる高性能モデルとして1972年のこの日に登場したのが、スバルレックスだった。
●クラストップの高性能を武器にレックス登場
“ハード・ミニ”のキャッチコピーで登場したレックスは、前年にデビューした大衆車「レオーネ」譲りのフロントマスクと、全高がR-2よりも90mm低いワイド&ローのウェッジシェイプのスタイリングでスポーティさをアピールした。
パワートレインは、360cc直2 SOHC水冷2ストロークエンジンのシングル&ツインキャブ仕様の2種類と、4速MTの組み合わせ。ハイパワー仕様「GSR」の最高出力は、トップクラスの37psで0-400m加速は、軽としては異例の20秒を切る俊足ぶりだった。
駆動方式は、当時主流となりつつあったFFではなく、スバル360以来の伝統的なRR(リアエンジン・リアドライブ)。小さな車体の中に最大の室内空間を確保するためには、エンジンとトランスアクスルを一体化できるRRが有利だったのだ。
標準仕様の車両価格は、48万円(MT)/51万円(AT)とライバルよりも10万円程度高価な設定。当時の大卒初任給は、5.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約197万円/209万円に相当する。
その後、レックスはスバルの看板軽として20年間進化を続け、1992年に「ヴィヴィオ」にその座を譲り、20年間で累計190万台と堅調な販売でその歴史の幕を下ろした。
●ロッキー/ライズのOEMモデルとして、レックスが30年ぶりに復活
軽のレックスに馴染みのある人には驚きだったかもしれない。なんと2022年11月に「ロッキー(ダイハツ)/ライズ(トヨタ)」のOEMモデルとして新型スバルレックスが30年ぶりに、軽ではなくクロスオーバーSUVに変貌して復活したのだ。
スバルは、2022年発売の新型「クロステック」のラインナップに1.6Lモデルがなかったため、コンパクトモデルとしてその穴を埋めるためにOEM供給でレックスが設定されたようだ。ただし、新型レックスは1.2L直4 DOHCエンジンのみで、ロッキー/ライズで設定されている1.0Lターボや「e-SMART」ハイブリッドはなく、駆動方式もFFのみである。
軽自動車の初代レックスとは全く異るが、スバルにとって最小のSUVとしてラインナップ充実の意義はありそうだ。
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軽の高性能競争、1970年代のオイルショックや厳しい排ガス規制対応、さらに1980年代に流行ったボンネットバンブームに他社は様々な新型車で乗り切った。対するレックスは、これらの20年間に及ぶ難題を1つのモデルで乗り切った珍しい軽自動車である。が、ある意味、スバルらしい軽自動車と言えるかもしれない。
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