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新旧乗り比べ アシメトリック5 vs 6
今回、グッドイヤーから発表されたイーグルF1アシメトリック6(EAGLE F1 ASYMMETRIC 6)は、アシンメトリック5の後継モデルでウルトラハイパフォーマンススポーツタイヤとして位置づけられる。一見するだけでは、4本の真っ直ぐ伸びた太い溝や横溝の少ないブロックパターンによる、洗練されたハイグリップタイヤの印象に変わりはない。それだけ完成度の高いトレッドパターンとも言える。
しかし、新旧乗り比べてみるとその差は大きかった。ウェット路面でのグリップ感は明らかに異なり、先代モデルでは旋回初期の舵角は大きく、手応えも軽めなのに対し、アシメトリック6は操舵初期から手応えがしっかりしていて、なおかつ小さな舵角で旋回を始める。センター付近の落ち着きもあることから、何のためらいもなく、ステアリングを切り込める。特に滑りやすいうっすらと水が乗っているときの安心感は大きく。明らかにゴムが違う感じだ。
多くの水膜があるような所ではやや旋回方向の水切りが足りないように思えるが、旧モデルのようにすべり量は大きくなく、滑ってもすぐに回復してくれる点も良い。排水成分よりもゴムによるグリップ力に柔軟性が感じられる。聞くところによるとウェット性能に効くシリカは当然のこと、新樹脂を配合したコンパウンドが大きな効果を上げているようだ。新樹脂が何なのかは教えてもらえなかったが、魔法のゴムがあるわけではないので、研究成果の結果生まれた賜(たまもの)に違いない。
フルブレーキ時においては初期のGの立ち上がりが早くABS効果もサイクルが小さく感じられ、ウェット高負荷状態でもゴムの粘着力は音を上げない。結果Gが抜けることもなく常に高Gをキープすることでデータ的にもメータ読み70km/hオーバーからの制動距離が14m弱の旧モデルに対し、アシメトリック6は常に13m台真ん中当たりのデータを残し、ウェットグリップの高さを証明してくれた。
もっともタイヤは小さなピザ一枚分の接地面積と言われているなかで、機能を最大限発揮させることがすべて。接地がうまくいってこそゴムの性能が生きるわけで、グッドイヤーではあらゆるシーンで接地面積の適正化を行なうことに注力したドライコンタクトプラステクノロジーにこだわった。
結果、負荷の変動に対して常に理想的な接地面を確保することで、旋回初期から後半に到るまでグリップ変化の急変を抑えて、安定感をキープ。ウェット路面で安心してステアリングを切り増ししていける奥の深さは、この技術によるところが大きそうだ。感覚的に言えば操舵後半にサイドが踏ん張って急にGが抜けるようなことや、逆にセンター付近が強すぎて操舵初期の応答が鈍く、Gの立ち上がりが遅れるようなことが、このタイヤでは感じにくい。旋回初期からスムースにタイヤが沈み込み、限界付近では穏やかにGを逃がしていくような落ち着き感がある。
装着モデルを限定しない印象
乗り心地面でもこのしっとりと沈み込むフィーリングが大きな入力を包み込んでくれることで、路面から受けるショック音も小さく、快適性にも貢献してくれている。街乗りではこの効果は大きく、スバル・レヴォーグの固めのサスにもかかわらず、カドのない乗り味と静粛性を実現。もっともその動きのしっとり感がレヴォーグのキビキビ感を薄くさせ、コンフォート性にシフトさせた印象なのは好みの分かれるところ。トヨタ86やホンダ・シビックなどではやや舵角は大きめなものの、操舵初期から素直な動き出しを見せ、常に安定したGと穏やかなハンドリング性を見せてくれた。
見た目の上では新旧差がないように思われたが、実際にはセンターに伸びる3本のリブに刻まれた横方向溝は旧モデルより細かく配列し、溝幅も狭くすることで音の発生を抑えたり、タイヤサイドの形状に丸みを持たせ、さらに10%程度の軽量化も行なっているという。ウルトラハイパフォーマンスタイヤでありながら、快適性能をも両立させた裏には、細部に到るまで妥協の無い繊細な作り込みが行なわれた結果だった。
環境性能に対応すべく軽量化や、無駄のない動きによって、燃料消費も抑えてくれるというが、走りに関してもしっとり動く滑らかさが、スポーツモデルの粗さをマイルドにし、新採用のゴムはウエットグリップ向上に大きく貢献。次世代スポーツタイヤとしての使命をしっかり反映しつつ、幅の広い走りの性能も満たしてくれたことで、アシメトリック6は装着モデルを限定しない印象だ。
タイヤ選びを相談されたら、きっと最初に頭に浮かぶに違いない。そんな万能モデルのイメージが自分の限られたメモリーにインプットされた。ちなみに生産国はドイツとあり、全モデル共通だと聞いている。