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NA型初代ロードスター(ユーノス・ロードスター)がデビューしたのは、1989年。ライトウェイト・オープンスポーツカーの復活は世界中で歓迎され大ヒットを記録した。
筆者は、1.6ℓから1.8ℓに排気量をアップしたNA型〔NA8C型)を20代の頃新車で購入し、数年間ともに過ごした経験がある。
マツダは歴代ロードスターを現在も所有していて、今回試乗させてもらったのも、マツダの広報車両である。程度は極上といっていい1.6ℓモデルである。マツダとミズノの共同開発によるドライビングシューズの取材時にNAロードスターを短時間ドライブしてみた。
今さら言うのもなんだが、NAロードスターは乗り込んで、クラッチミートして動き出した瞬間から、顔がニヤけてしまう。無条件に楽しい。あぁ、こんなクルマだったな。全然速くないし、豪華でも静かでも広く使い勝手がいいわけでもないが、もうとにかく楽しい。こんなクルマ、いまはもうないな、と思う。
リトラクタブルヘッドライトを上げた時のユーモラスな顔つきも、キュートだ。NAロードスターを手放すとき(プジョー306Styleに買い換えたのだが)、「いつか必ずロードスターをもう一度買おう」と密かに誓ったものだ。
NAロードスターに試乗した1週間後、今度は現行(ND型)ロードスターを借りだした。グレードはもっともベーシックな「S」である。
Sは、ベーシックグレードなので6MTのみの設定だ。
運転してすぐに「NAロードスターの乗り味にもっとも近いのは、NDロードスターのSだな」と再確認した。
Sグレードは、それ以上のグレードに付く(AT車にはつかない)リヤのスタビライザーとトルクセンシング式スーパーLSDを装着していない。
ちなみに、トルクセンシング式スーパーLSDは、GKNドライブラインジャパンのLSDだ。ここでいう「スーパー」は「すごい・超」の意味ではなく、差動制限性能は限定されるが、コストパフォーマンスが高いのが特徴。ここでいう「スーパー」は「スーパーマーケットに行くように気軽さ」のスーパーだ。
話がちょっと脱線したが、現行ロードスターの好みは、筆者のように「S」の乗り味を好む人と、「RS」を好む人にわかれるのだそうだ。「Sが一番いいですよね」という人の多くは、かつてNAロードスターに乗っていた人が多いとも聞いた。
では(あまり意味はないけれど)比べてみよう。
NA vs ND サイズ比較 ボディサイズはほぼ同じ
ボディサイズは、なんと現行NDの方が全長は短い! だから、ドライバーズシートに座った感じがとても似ている。車重はともにベースグレード比較で、NAが940kg、NDが990kg。どちらも1トン切りだ。2020年代の現在、1トンを切る軽量さは本当に大きな魅力である。
タイヤは、
NA:185/60R14
ND:195/50R16
ここは四半世紀の時の流れを感じる部分だ。
パワートレーンは100ccダウンで10%パワーup
エンジンは、ともに直列4気筒DOHC、もちろん自然吸気エンジンだ。
NAロードスター 1.6ℓ直4DOHC
NAロードスターエンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:B6-ZE[RS] 排気量:1597cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:9.5 最高出力:120ps(88kW)/6500pm 最大トルク:137.3Nm/5500rpm 燃料供給:PFI 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:45ℓ
NDロードスター 1.5ℓ直4DOHC
NDロードスターエンジン 形式:直列4気筒DOHC 型式:P5-VP[RS](SKYACTIV-G1.5) 排気量:1496cc ボア×ストローク:74.5mm×85.8mm 圧縮比:13.0 最高出力:132ps(97kW)/7000pm 最大トルク:152Nm/4500rpm 燃料供給:DI 燃料:無鉛プレミアム 燃料タンク:40ℓ
NDの1.5ℓ直4SKYACTIV-G1.5は、高回転型のエンジンだ。NAのB6エンジンが上までは回りたがらない印象だったのに対して、G1.5は気持ちよく回る。とはいえ、ものすごいパワーがあるわけでもないし、トルキーなわけでもない。
S/B比(ボア/ストローク比)は
NA:1.071
ND:1.151
と現代のエンジンらしくNDの方がロングストローク型だ。
パワーウェイトレシオは
NA:7.833kg/ps
ND:7.5kg/ps
である。
燃費は
NAが10モードで12.2km/ℓ
NDがWLTCモードで16.8km/ℓ
モードが違うから直接比較できないが、遠い記憶ではNAロードスターの実燃費は10km/ℓほどだった気がする。今回、NDロードスターを283.6km走って14.0km/ℓだったから、乱暴に言ってパワーは10%アップしたうえで燃費が40%アップしたわけだ。
トランスミッションは、NAは5速MT、NDは6速MTである。ギヤ比を見てみると
NA:4速が1.000 5速0.814
ND:6速が1.000
である。現行ロードスター(6MT)の走りは、この6速=1.000(直結)というのが大きな特徴になっている。このギヤ比のおかげで、1から6速まで街中でも使いこなせるのだ。変速操作が楽しいのは、NAもNDも同じだ。
ちなみに、価格は
NAロードスター ベースグレード(1989年)170万円
NDロードスター S(2021年)260万1500円
である。税制が違うから価格を比べるのはナンセンスかもしれない(1989年は消費税が3%だった。その代わり自動車取得税があった)。
これまた、ちなみに
大卒初任給は
1989年:16万900円
2021年:21万3003円
だった。
「いつかは再びロードスター」といまでも思っている。
選ぶとしたら、やはりNAともっとも走り味が似ている(そしてもっとも安い)Sグレードだ。
Sは、エアコンがマニュアルで、ナビはOPでも付かないし、AppleCarPlay/AndroidAutoも付かない。でも、2020年代に、こんなに楽しい、こんなにピュアなクルマが新車で買える。次期ロードスターは電動化、なんて声も聞こえる。「電動化、いる?」と思っている人(筆者も含めて)、NDロードスター「S」、一度試乗しておいたほうがいいかもしれない。