日産「ノート オーラNISMO」がマイナーチェンジ!4WDを新設定し旋回性が向上、RECAROシートはパワーリクライニングに!

日産のノート・オーラNISMOが7月18日にマイナーチェンジした。新たに4WDグレードが設定、エクステリは空力要素を織り込んで進化、BOSEパーソナルサウンドシステムをオプション設定し、従来から設定のあるRECAROシートにパワーリクライニング機能を追加したことなど見どころは多い。テストコースでの試乗を通して進化したノート・オーラNISMOの実力に迫る。

TEXT :世良耕太(SERA Kota) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

ノート・オーラNISMOが新たに4WDグレードを設定

日産ノートオーラNISMO「NISMO tuned e-POWER 4WD」 全長×全幅×全高:4120×1735×1505mm ホイールベース:2580mm 車両重量:1280kg(2WD)、1390kg(4WD)

ノート・オーラNISMOがマイナーチェンジした。進化のポイントは3つ。従来は2WD(FF)のみだったが、新たに4WDグレードが設定されたこと。空力要素を織り込みながら、デザインを進化させたこと。BOSEパーソナルサウンドシステムをオプション設定し、従来から設定のあるRECAROシートにパワーリクライニング機能を追加したことである。

2021年にオーラNISMOが発売されて以来、4WDを望む声は多かったという。その背景には、ベースとなるオーラ(とノート)がリヤに高出力(最高出力50kW、最大トルク100Nm)のモーターを搭載する4WDの高い性能をさかんにアピールしていたことと無縁ではない。現行世代のノート/オーラの4WDは雪道などの低μ路で走破性を確保するだけでなく、ドライ路面では機敏に動くし、前後のモーターを制御することによりフラットライド感の強い上質な走りを実現している。いい4WDがあるのに、なぜNISMOに設定しないんだ、というわけだ。

NISMOロードカーを開発する日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)でもモーター4WDの価値には気づいており、早くから研究はしていた。だが、4WDにすることで重くなる。重くなるクルマをどう速く走らせるのか。「きちんと4WDを使いこなさないとお客様にとって魅力的な商品にならない」「だから正直、勉強の時間をいただいてしまったところはある」と、開発にあたる技術者は話す。

日産ノートオーラNISMO 車両価格::307万2300円(2WD)、347万3800円(4WD)

リヤモーターの出力/トルクアップで旋回速度が向上

日産ノートオーラNISMOでは初となる4WDグレード「NISMO tuned e-POWER 4WD」が登場。

マイナーチェンジ版オーラNISMOに設定された4WDグレード(NISMO tuned e-POWER 4WD)は、重量ハンディを跳ね返すだけの魅力ある商品に仕上げることができた、ということだ。NISMOらしい魅力ある4WDに仕上げるために、リヤのモーターは最高出力/最大トルクを引き上げた。最高出力は20%アップの60kW、最大トルクは50%アップの150Nmである。

オーラはエンジン(HR12DE型1.2L直列3気筒自然吸気)で発電した電力でモーターを駆動して走るe-POWERを搭載する。フロントモーターの最高出力は100kW、最大トルクは300Nmだ。発電システムとバッテリーの能力から、フロントの100kWとリヤの60kWを足した160kWの最高出力が出るわけではないが、リヤモーターの出力/トルクアップによりリヤの駆動力の割り当てを大きくすることはでき、旋回速度の向上に生かすことができる。

発電用エンジン:1.2L直列3気筒(HR12DE) フロントモーター最大出力:100kW(136PS)/3183-8500rpm フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm リヤモーター最大出力:60kW(82PS)/3820-10024rpm リヤモーター最大トルク:150N・m(15.3kgf・m)/0-3820rpm

2WDの車重は1280kgなのに対し、4WDは1390kgで110kg重い。そのため、コーナー進入のボトムスピードは4WDより2WDのほうが高いが、立ち上がりは高いトラクション能力を生かし、2WDより早いタイミングでアクセルを開けることが可能。2WDを上回るスピードでコーナーを脱出していく。

ただ速いだけでなく、気持ちいいのがオーラNISMO 4WDの持ち味だ。切り増しや切り戻しといった修正操舵をしなくて済むよう制御のチューニングが行なわれており、旋回立ち上がりでは2WDに対して操舵量が11%低減(より小さな舵角で旋回できる)。リヤに駆動力を配分することでフロントタイヤに余力が生まれるため、直進時は2WDに対して6%応答性が向上しているという。

ENKEI「MAT工法」による軽量化と高剛性を両立するエアロホイール。タイヤサイズは205/50ZR17

この点、テストコースでの試乗で確かめることができた。ドライブモードはECO(デフォルト)、NORMAL、NISMOの3種類設定されているが、積極的に走りを楽しみたいシチュエーションでは断然、NISMOモードがいい。後輪駆動力はECO<NORMAL<NISMOの順で強くなる(加速力はECOでも基準車のSPORT相当だ)。

タイトなコーナーほどリヤの強力なモーターの恩恵は感じやすく、立ち上がりではリヤが力強く押し出しながら鼻先が内側を向いていく動きが味わえる。脱出時に意図してアクセルを強めに踏んでも、FF車によく見られるようにフロントが外に逃げていく素振りは見せない(ポテンシャルの高いタイヤ=MICHELIN PILOT SPORT 4の恩恵も見逃せない)。コンパクトな車両サイズもあり、(例えば20〜25Rの)タイトコーナーが連続する山道はオーラNISMO 4WDが最も得意とするステージとなるに違いない。

レッドとブラックを基調としたインテリア

BOSEかRECAROの悩ましい選択

進化のポイントの2つめであるデザインは、ブラッシュアップの表現がふさわしい。フロントはグリルの開口を最小限にしてドラッグ(空気抵抗)を低減。4WDはリヤモーターの追加による重量増を少しでも相殺すべく、2WDに対して12%軽量化した専用ホイール(ENKEI製)を採用した。

通気効率を最適化し開口部を最小化したフラッシュタイプデザイン。

リヤはバンパーコーナー部のサイドエアスプリッターがバンパー下端まで伸びているのが変化点。ボディサイドの流れが車体後面に巻き込むのを防ぐ(早く巻き込むほどドラッグ増につながる)効果を高める狙いだ。合わせて、バンパー下部のブラック部分の形状を最適化し、リフト(揚力)低減効果を高めている。

見えないところに手を打っているのも、「より速く走れる性能を目指す」NISMOらしい開発姿勢の現れである。リヤバンパー下面にカバーを追加したのは、流れをスムースにし、フロア下面で発生する負圧を増やしてリフトを抑えるため。リヤにモーターを搭載するとフロア下に構造物が増えるため、空気の流れを邪魔してしまう。4WDを設定しても最適な空力特性を得るために、見えないところにも手を打ったというわけだ(カバーは2WDにも付けている)。

「ツイン・ウイング」のデザインのリヤまわりは、ボディサイドからの気流を切り後面を整流する機能由来のモチーフ。リアサイドエアスプリッターが空力性能向上とビジュアルインパクトを与える

基準車に設定のあるBOSEパーソナルプラスサウンドシステムについては4WDと同様、オーラNISMOにも設定してほしいという要望を多く受け取っていたという。その声に応え、新たにオプション設定された。

「BOSE パーソナルプラスサウンドシステム」を新たにオプションとして設定

また、マイナーチェンジ前から設定のあったオプション設定のRECARO製スポーツシートには、運転席、助手席ともにパワーリクライニング機能が追加された。従来は腰の位置にあるダイヤルでリクライニングの角度を調節する構造だったが、狭い場所に手を入れる必要があり、操作性は必ずしも良くなかった。パワーリクライニングのスイッチはシートクッションの側面にあるため、手を降ろせば自然に触れる位置にあり、操作しやすい。

「NISMO専用チューニング RECAROスポーツシート」 にパワーリクライニング機能を搭載。従来のダイヤル式調整機構に比べ格段と便利になった。

悩ましいのは、BOSEパーソナルプラスサウンドシステムとRECARO製スポーツシートは、どちらか一方しか選べないことだ。オーラNISMOはオーディオよりもむしろ走りを楽しむクルマだし、ユーザーに迷いが生じてはいけないという思いもあり、BOSEの設定は見送った経緯がある。だが、NISMOであっても豊かなサウンドを楽しみたいというニーズは多く、今回の決断に至った。

スポーツ走行をした際にはとくにホールド感の高さが身に染みるRECAROも捨てがたいし、ヘッドレスト内蔵スピーカーを含む8つのスピーカーがもたらす迫力のサウンド(運転の邪魔をしない音づくりが秀逸)も捨てがたい。これからオーラNISMOを検討するみなさん、さんざん悩んでください!

日産ノートオーラNISMO「tuned e-POWER 4WD」 こちらはディーラーオプションのエアロパーツを多数装着している。
日産ノートオーラNISMO「tuned e-POWER 4WD」 

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…