日常はバッテリーに蓄えた電気のみでEV走行、休日のレジャーなどではFCが発電する電力も合わせて長距離ドライブ、といった移動の用途や運転状況に合わせてエネルギーの使い方を選択できる
CR-V e:FCEVは、日本の自動車メーカーが発売するモデルとして初めて(ホンダ調べ)、外部から充電可能なプラグイン機能を持つ燃料電池自動車。FCEVが持つ長い航続距離と水素の充填時間の短さといった特長はそのままに、家庭や外出先で充電できるプラグイン機能を加えることで利便性をさらに高めている。これによりCR-V e:FCEVの一充填走行距離(※1)は約621km、一充電走行可能距離は約61km(※2)を実現した。また北米地域や中国などで販売している6代目CR-Vをベースにすることで、SUVならではのユーティリティやパッケージにより、多様なニーズにも応える。
※1:“一充填”は水素満充填、バッテリー満充電時
※2:WLTCモード走行パターンによるホンダ測定値
CR-V e:FCEVでは、コアとなる燃料電池(FC)スタックを刷新するとともに、補機類の合理化や低消費電力化を徹底。新構造のセルユニットの採用や生産性の向上などにより、「クラリティ フューエルセル」に搭載されていた従来システムに対してコストを3分の1に削減した。また、耐食材料の適用や劣化抑制制御により、耐久性を2倍に向上させたほか、耐低温性も大幅に向上している。このFCシステムは、ホンダとゼネラルモーターズ(GM)が共同開発し、両社の合弁会社であるFuel Cell System Manufacturing, LLC(米国ミシガン州)で製造される。
フロントフェンダーに設置されたAC充給電コネクターは、日本と米国における普通充電の規格である「SAE J1772」を採用。普通充電は6.4kWに対応し約2.5時間(※)で満充電が可能。また、AC200V電源に加えAC100V電源での充電にも対応している。
※EV航続可能距離の表示がゼロになった時点から、満充電までのおおよその時間
また、普通充電口に差し込んでAC100V電力が取り出せるAC車外給電用コネクター「Honda Power Supply Connector(パワーサプライコネクター)」を標準装備。1500Wまでの消費電力に対応し、アウトドアなどのレジャーや停電時の電源として活用できる。荷室内に設置されたCHAdeMO方式のDC給電コネクターに「Power Exporter e:6000(パワーエクスポーターイー6000)」、「Power Exporter 9000(パワーエクスポーター9000)」などの可搬型外部給電機を接続することで、最大で一般家庭の約4日分の電力(※)5を供給することも可能。災害時の非常用電源として、自宅や避難所、小規模のオフィス・店舗などで利用できるほか、排出ガスもなく音も静かなので、屋内のイベントなどにも活用が可能だ。
※一般家庭における1日の平均消費電力量を10kWhとして試算した場合
CR-V e:FCEVでは、水素による発電電力と、充電バッテリーからの電力を組み合わせて有効に活用するエネルギーマネジメントモードを装備。日常走行ではバッテリーに蓄えた電気のみでEV走行、休日のレジャーなどではFCが発電する電力も合わせて長距離ドライブ、といった移動の用途や運転状況に合わせてエネルギーの使い方を選択できる。センターコンソールに設置されたeボタンで「AUTO」「EV」「SAVE」「CHARGE」の各モードが選択可能だ。
また、スマートフォン感覚でナビゲーションやオーディオなどの操作を快適に行える「Honda CONNECTディスプレー」に、FCEVならではの機能を追加。水素ステーションの稼働状況がリアルタイムで分かる「水素ステーション検索機能」、充電に使用する電流量を調節することで合計電力量を契約アンペア以下に抑制する「充電電流設定」、あらかじめ設定した水素残量になると自動で給電を停止し、車外給電などでの水素の使い過ぎを防ぐ「給電下限水素残量設定」など、充電/外部給電の使い勝手を最大限に引き出す便利機能を備えている。
ダイナミクスの面では、SUVとしての安心感や快適性と、操る楽しさを兼ね備えるCR-Vをベースに、モーター駆動によるFCEVならではのスムーズでトルクフルな走りを追求。また、重量物である水素タンク2本と大容量バッテリーを含むIPU(インテリジェントパワーユニット)を可能な限り低く、かつ車両中心近くに搭載する低重心レイアウトにより、重厚で上質な乗り味とリニアなハンドリングを実現した。
また、サスペンションには、入力に応じて減衰力を変化させ、操縦安定性と乗り心地を高い次元で両立する振幅感応型ダンパーを採用。細かな振動を吸収して快適な乗り心地を提供するとともに、コーナリングでは進入から立ち上がりまでコントロールしやすい優れた接地性を発揮する。
パッケージングの面では、歴代CR-Vが培ってきたSUVならではのゆとりの空間を確保するために、FCシステムとプラグイン機能のふたつの主要メカニズムを搭載するスペース効率を徹底的に追求。そのうえで、乗員が使い勝手のよさや安心感を実感できる工夫を施した。
FCスタックを核とするFCシステムと、モーターやギヤボックス、PCU(パワーコントロールユニット)を一体化した駆動ユニットを組み合わせ、フロントフード下に集約することで居住スペースへの影響を最小化。荷室部分に設置された水素タンクを棚状の平らな面で覆い、この上面から荷室の後端まで収納スペースを広げることができるフレキシブルボードを設定。荷室を上下2段に分けて使用できる。
このほか、ホンダ独自のコネクテッドサービス「Honda Total Care プレミアム」に加入すると、充電量の上限を80%~100%の間で5%刻みに設定できる「最大充電量設定」や、バッテリーの充電時間帯を曜日単位で設定できる「充電待機時間設定」、設定時間に合わせて車内を快適な温度に整え、バッテリーも満充電の状態で出発できる「お出かけ前タイマー設定」といった機能が利用できる。