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■FCXが世界で初めて米国政府の認定を取得
2002(平成14)年7月25日、ホンダの「FCX」が燃料電池車として世界で初めて米国のEPAとCARBの認定を取得した。ホンダは1990年代から本格的なFCV(FCEV)の開発に取り組み、コンパクトカーFCXが米国政府の認定を取得。FCEV実用化の第一歩を踏み出したのだ。
●1990年代から本格的に取り組んだホンダのFCEV
FCEVは、車載タンクに充填した水素と吸入した大気中の酸素を反応させて発電する、燃料電池の電力を使ってモーターで走行する。原理的には、発生するのは水のみで有害な排出ガスが出ない、エネルギー効率がガソリンエンジンの約2倍と高い、水素を製造するために石油以外の多様な燃料が利用可能などのメリットがあり、究極のエコカーと位置付けられている。
ホンダは、1990年代から本格的に燃料電池車の開発に取り組み、1999年には「FCX-V1」と「FCX-V2」という2つのFCEV実験車を発表。その後、「FCV-V3」を経て、2002年に完成した4人乗りのコンパクトカーのFCXは、156.6Lの高圧(35MPa)ボンベを搭載し60kWのモーターで最高速度150km/h、1回の水素充填による航続距離は355kmの性能を達成した。
FCEVの心臓部である燃料電池スタックは、バラード社製のPEFC(固体高分子膜型)。PEFCは、作動温度が広く出力密度が高いため、現在はほとんどのメーカーが採用している電池スタックである。
●日米でリース販売開始、米国では個人向けリースも
2002年のこの日、FCXは燃料電池車として初めて米国EPAとCARBの認定を取得し、11月には日本でも国交省の公道走行認可を取得した。
これを受けて、ホンダは年末の12日2日に、FCXの1号車を米国カリフォルニア州のロサンゼルス市庁と日本の内閣府に納車。内閣府での納車では、当時ホンダの社長である吉野CEOが小泉純一郎首相に直接キーを手渡す、盛大なセレモニーが行われた。
その後、日米ともリース販売先を拡大し、日本では2004年の箱根駅伝や様々なプロジェクトなどに参加し、FCEVの環境性能と実用性の高さをアピール、ついにFCEVが公道を走り始めたと大きな注目を集めることに。
米国では、2005年にカリフォルニア州で世界初となる個人向けのリース販売も開始。個人向けリース用のFCXは、2002年の初期型に対し、モーター出力を80kWに向上させ、航続距離を430kmまで延長するなど大幅な改良が加えられた性能アップ版だ。
●FCXは、その後FCXクラリティ、そしてクラリティFCへと進化
ホンダは、その後FCXの進化版であるミディアムクラスのスタイリッシュな「FCXクラリティ」を開発し、2008年11月からリース販売を開始した。モーター出力を100kWまで向上させ、さらに“V Flow FCスタック”と呼ぶ新セル構造の燃料スタックの採用などで、パワープラント全体の重量出力密度2倍、容積出力密度2.2倍によって、大幅な軽量コンパクト化と高出力化を達成した。
2016年には、FCXクラリティをさらに進化させた「クラリティ・フューエルセル(FC)」のリース販売を開始。2014年から、トヨタのFCEV「ミライ」が市販化(個人向け販売)しているのに対して、クラリティFCは官公庁や企業へのリース販売だった。
クラリティFCは、2020年6月に個人向けのリース販売も始めたが、2021年8月に生産をいったん終了。一方のトヨタのミライは、2020年12月にモデルチェンジして継続的に進化を続けている。
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ホンダは、いったんFCEVの生産を終了していたが、今年(2024年)中に日米で発売予定の新型FCEV「CR-V e:FCEV」に関する情報を2月に先行公開した。最大の特徴は、FCEVに外部充電ができるプラグイン機能を融合させて利便性を向上させたこと。CR-V e:FCEVの登場が、やや停滞気味のFCEVの起爆剤になるかもしれないので、期待したいところだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。