ベントレー、W12エンジン搭載車の生産を完了……最も成功した12気筒エンジンの歴史に幕

ベントレーは、英国クルーにある本社で、手作業による最後の高性能W12気筒エンジンの生産を祝った。ベントレー・ドリームファクトリーの生産ラインから最後のW12エンジンを搭載したベンテイガ、コンチネンタルGT、フライングスパーが姿を消し、ベントレーの歴史における重要な章が幕を閉じる。ベントレーのW12エンジンは、2003年に初代コンチネンタルGTに搭載されて以来、実に10万台以上のモデルに搭載されており、現代で最も成功した12気筒エンジンと言えるだろう。エンジニアの絶え間ない開発により、最後のW12エンジンは初代モデル比較で、出力は34%、トルクは54%向上し、同時にCO₂排出量は25%削減された。

初代W12エンジンの卓越したエンジニアリング

12気筒エンジンの洗練性とパワーを、コンパクトなパッケージで実現することを求めて、ベントレーのW12エンジンは誕生した。ふたつのV6エンジンが共通のクランクシャフトを共有することで、コンパクトなW12は従来のV12よりも24%も短く、2003年に発表されたコンチネンタルGTの張りのある筋肉質なラインに理想的なものとなった。

ベントレーのエンジニアが自社開発した新しいインテーク、エグゾースト、ターボチャージャー、インタークーラーシステムにより、2003年のコンチネンタルGTは、552bhpを発生。最大トルクは1600~6100rpmで649Nmに達し、ベントレーが得意とする広い回転域でのパワーが実現された。

各W12エンジンはクルーで手作業で製造され、その工程にはおよそ7時間を要し、2600個の部品を丹念に組み立てる必要があったという。完成したエンジンは驚くほどスムーズに回転し、最適なパワーと信頼性を発揮できるように、ピストンとコンロッドは1グラム単位でバランスよく組み合わされる。リークテスト、コールドテスト、ホットテストを経て完成したW12エンジンは、車両総重量 2420kgのコンチネンタルGTを、わずか3.6秒で100km/hまで加速させることができた。

第2世代W12エンジンは広いモデルに搭載

2015年に導入されたベンテイガでは、年にわたる設計、開発、テストの結果、W12エンジンのデザインが一新された。ツインスクロールターボチャージャーがより速いレスポンスと即時トルクを実現し、ふたつの異なる燃料システムがパフォーマンスと排出ガスの妥協点を解消。ベンテイガのオフロードパフォーマンスに対応するため、エンジンはあらゆる方向に最大35度の傾斜角度で性能を発揮するようテストされた。第2世代W12エンジンは、ベンテイガ、コンチネンタルGT、コンチネンタルGTコンバーチブル、フライングスパーを含むモデルレンジの先代モデルに取って代わって搭載された。

W12エンジンの別れの曲

ベントレーは、20年以上も生産されたW12エンジンの生産終了を記念して、ベンテイガ、コンチネンタルGT、コンチネンタルGTコンバーチブル、フライングスパーに120台の「スピードエディション12」特別仕様車を限定生産することを発表した。専用モデルでは、「Edition 12」のバッジ、トレッドプレート、シート刺繍、シリアルナンバー入りのエンジンプラークなど、ベントレーならではでの特別装備が施されている。

W12エンジンはまた、「コーチビルト・バイ・マリナー」をラグジュアリーブランドの頂点に位置付けるうえで大きな功績を残した。バカラル・バルケッタは、わずか12台というベントレーでも最も希少な2ドアモデルで、最高出力650bhpのW12エンジンを搭載している。わずか18台のクーペと16台のコンバーチブルが、オーナーの仕様に合わせて手作業で製造され、それぞれに740bhp、1000NmのBentley W12エンジンが搭載される。

新型ハイブリッドパワートレインが導く未来とは

現代において最も成功を収めた12気筒エンジンである6.0LツインターボW12は、まったく新しい、パフォーマンス重視のパワートレインに置き換えられる予定であり、ベントレーの新たな時代を切り開くものである。ウルトラ・ハイパフォーマンス・ハイブリッドは、パワフルなV8内燃エンジンと先進のバッテリー技術を組み合わせ、「エレクトロチャージング」による強力なハイブリッドシステムにより、最高出力782馬力、最大トルク1000Nmという強烈なパフォーマンスを発揮する。

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