日産ノート オーラ 現代版「小さな高級車」の素質あり!(残念なポイントもあるけれど…)

日産ノート オーラG FOUR leather edition 車両価格○295万7900円
日産ノート オーラは、「プレミアムコンパクト電動車」という、これまであるようでなかったニッチなマーケットに投入されたニューモデルだ。1週間ほど生活をともにして850km走ってみた。ノート オーラ、確かに大いに「小さな高級車」の素質アリ、である。

確かにプレミアム 違いがわかる世代に受けている

コンパクトなボディサイズ(全長×全幅×全高:4045mm×1735mm×1525mm)だが存在感はなかなか。

日産ノート オーラは、「プレミアムコンパクト」を狙った新型車だ。ベーシックコンパクトであるノートの派生であることは、名前やサイズから明らかだが、ノート オーラを「高級(高価)なノート」と思って選ぶ人は少ないだろう。素直に「日産オーラ」の方がしっくりくる(が、そうしたら「でも、ベースはノートでしょ」って言われてしまう)。

「小さな高級車」は、これまでも各自動車メーカーがトライしてきた(そしてあまり成功例がない)コンセプトだ。成功例がないのは、「ちっちゃいの高い!」ということに尽きる。大きいこと(ボディサイズもエンジン排気量も)はエライこと、という考え方だと、どうしても小さな高級車は成立しにくい。

ノート オーラは、そこにe-POWERをひっさげて乗り込んだわけだ。エンジンは発電用だから排気量の大きさはエラさに繋がらないし、電動駆動の滑らかさはエンジン駆動とは一線を画す。NVH(騒音・振動)も有利。上質なインテリアを与えられれば、成功の確率は格段にアップする。

全長×全幅×全高:4045mm×1735mm×1525mm ホイールベース:2580mm
トレッド:F1510mm/R1510mm 最低地上高:130mm
車両重量:1370kg 前軸軸重790kg 後軸軸重580kg 最小回転半径 5.2m

日産が9月8日に出したリリースによれば、発売3週間で受注が1万台を超えたという。多くがセダン、ミニバン、SUVからの乗り換えで輸入車からのノート オーラへのスイッチという人も多いという。狙い通りだ。40代以下が3割強、50代が3割(ということは60代以上が3割ということ)だという。これも狙い通りなのだろう。バブル経験世代の良いモノに触れたことがある層が選んでいるなら、確かにプレミアムコンパクトとして良い出来だと言える。

室内:長さ2030mm 幅1445mm 高さ1240mm
15工程もかかるという木目調パネルとツイードの組み合わせもいい。

まず、エクステリアデザインがいい。ノートよりアリアとの共通性が強く感じられて上品でカッコいい。ドアを開けてシートに乗り込むと、ツイードと木目調のパネル、9インチの大型ディスプレイと12.3インチのフルTFTメーターが、ベーシックコンパクトのノートとは明らかに違うクルマだと教えてくれる。

試乗車は、レザーシートの4WDであるG FOUR Leather editionで車両価格は295万7900円。BOSEパーソナルプラスサウンドシステム、ワイヤレス充電、NISSAN Connectナビゲーションシステム、プロパイロットなどが含まれるセットオプション40万1500円がついているから、実質車両価格は約336万円だ。安くはないが、プレミアムだと考えたら高くない。336万円はノート オーラでもっとも高いグレードである(ノート オーラNISMOというのもあるけれど)。この値段で買える「プレミアムコンパクト」はアウディA1くらいだろう(25TSFI アドバンスド332万円)。


後席は広いわけではないが、充分に使える居住性がある。
個人的はレザーではなくファブリックのシートの方が好みだ。

ノート4WDを試乗したときにも感じたが、リヤに68ps/100Nmという強力なモーターを載せた4WDシステムは非常に魅力的だ。

4WD代は25万8500円。個人的にはレザーシートは好みではないから要らないけれど、4WDは欲しい。悪路や降雪路でなくても4WDの恩恵は感じられる。高速道路の導入路のループでアクセルを少し踏み込んだときの気持ち良さはノートとノート オーラの魅力のひとつだ。

フロントモーターはノートと同じEM47型という新しいもの。ノートから20ps/20Nm向上させた136ps/300Nmになっている(リヤモーターは68ps/100Nmで同じ仕様)。1370kgの車重に300Nm+100Nmのツインモーターなのだから、走りは余裕綽々。モーター駆動の気持ち良さを満喫できる。

発電用のモーターは、第2世代に進化したe-POWERらしく充分に静かだが、始動時や低速走行時はやはり音も振動もそれなりだ。プレミアムコンパクトとして磨いていくべきポイントのひとつは、ここだろう。

発電用エンジン 形式:DOHC水冷直列3気筒 型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:82ps(60kW)/6000pm 最大トルク:103Nm/4800rpm 燃料供給:EGI 燃料:無鉛レギュラー 燃料タンク:36ℓ
タイヤはブリヂストンのトランザT005A
サイズは205/50 R17 89V
リヤサスはトーションビーム式。右側にリヤモーター(MM48型)が見える。
フロントサスはストラット式。

850km走って燃費はどうだったか?

今回は、週末のロングドライブも含めて850kmほど走行した。週末の東名高速道路は、集中工事も相まって地獄のような渋滞(帰路の上りは最大60kmの渋滞!)。そんなときは、もちろんプロパイロットを使った。本当に楽ちんだ。ゆっくりと流れている状態でのプロパイロットは頼りになる。ところが微低速~完全停止~少し動く~また停まる……というような状況になると、モーターのちょっと力行~回生……と思ったら少し力行がちょっとギクシャクする。気持ちよくない。もっとも酷い渋滞のなかではプロパイロットを切ってしまった。

シフトレバーまわりの質感はいい
プロパイロットはステアリング右側のスイッチでコントロールする

850km走ってみて、プレミアムコンパクトとしてのノート オーラ、非常に気に入った。ルノー・日産のモジュラープラットフォーム、CMF-Bを採用したクルマ(ノート、ルーテシア、キャプチャー)は、おしなべていい出来だと思うが、そのなかでもノート オーラ4WDがもっともいい。「小さな高級車」の素質大ありだ。ただし、現状ではまだ手放しで「プレミアムコンパクト=小さな高級車」だとは褒められない。

ドアの開閉音は安っぽいし、インテリアもノートと共通の部品は、やはりプレミアム感はない。室内灯やカップホルダーなどは、せっかくのプレミアム感を大きく削ぐ質感だ。次のステップで「ノート オーラ」から「オーラ」になるためにも、ディテールの質感アップを図ってほしい。

頭上のコンソールもがっかりポイント。もう少し上質にしたい。
室内灯も同じく。せっかくの上質なインテリアがこれで一気に貧乏臭くなる。
ノートと同じカップホルダーはちょっとがっかりポイント
左側のワイパーが運転席から見えてしまう。こういう「視覚的なノイズ」もなくしたいところだ。

ノート オーラの試乗でもっとも感動したところもお伝えしたい。それはオーディオだ。BOSEパーソナルプラスサウンドシステムという、ヘッドレストスピーカー、ワイドレンジドアスピーカー、ツイーターの8スピーカーに最先端のDSP内蔵アンプという構成のオーディオシステムは、文句なしに「プレミアム」だ。パーソナルスペースコントロール機能でリスナーが音の広がりを調整でき、ライブハウスのようなタイトな感覚から、アリーナの最前列で360°を包まれるようなサウンドまで自在に設定可能。実際に延々と続いた渋滞での走行で聴いた女性ボーカルは、本当に感動できるほど「良い音」だった。運転席だけでなく助手席も同じ音が楽しめるのも素晴らしい。このBOSEパーソナルプラスサウンドシステムがあるからノート オーラを選ぶ、というのもアリだと思うほど、いい。もともとBOSEのサウンドは車内で聴くとき、メリハリがうまく効いていて良い音を奏でてくれる(素人の感想です)が、そのBOSEサウンドでも、このノート オーラが一番良いと感じた。

ヘッドレストスピーカーの高価は抜群だ。
ドアにあるワイドレンジドアスピーカー
BOSEパーソナルプラスサウンドシステムの構成

さて、燃費はどうだったか。

今回は850.2km走って19.5km/ℓだった。
ノート4WDの試乗では22.2km/ℓだったから、燃費的には少々物足りない気がしたが、
ノート4WD試乗時の平均時速は38km/h
今回のノート オーラ4WDの試乗時の平均時速は47km/hだった。e-POWERは、高速走行よりも街中・郊外の方が得意なのだ。

今回は850.2km走って19.5km/ℓ(平均時速47km/h)だった。イグニッションをオフにする際に「ベスト燃費を更新しますか?」という文字とともに「最高値22.5km/ℓ」と出てきたから走り方自体はさほど荒くなかったはずだ。

WLTCモード燃費はノート オーラ4WDが22.7km/ℓでノート4WDが23.8km/ℓと5%ほどノート オーラの方が悪い。燃費だけを考えたらノート4WDの方がいいし、FFを選べば大きく改善する(ノート オーラFF:27.2km/ℓ)。ノート オーラの真骨頂は、経済性よりもプレミアム。19.5km/ℓ走るならよし、というところだろう。

かなりノート オーラ、気に入りました。買うなら……やはり25万8500円高くても4WDを選びたい。レザーシート(8万9100円高)は、個人的には必要ないからG FOUR 286万8800円になる。これにセットオプション40万1500円は必須だから合計327万300円。ボディ色はダーク系の方が似合う気がするから、バーゲンディーかミッドナイトブラックなんていい気がする。

日産ノート オーラ、電動化時代の「プレミアムコンパクト」として、スターになれる素質あり、だ。さらにディテールを磨き込んで、小さな高級車として成功してほしい。

開口部が広く使いやすい。ラゲッジの最小幅1030mm
高さは720mm
後席を倒すと奥行き最大1470mm
エクステリアはノートというより、小さなアリアという印象だ。
日産ノート オーラ

セールス好調! ブルーオーシャンだった国産プレミアムコンパクトで成功できたのはなぜ!?【日産ノート オーラ 試乗・その1】

Motor-Fan.jp編集部員の長野とライター小林が、ふたり一緒に話題の新型車に試乗。走りながら、あーでもないこーでもないとだらだら語り合う「異駆動音(いくどうおん)」な対談形式インプレッションを3回にわけてお送りします。今回試乗したのは、日産のプレミアムコンパクトカー、ノートオーラ。ふたりの駄話をゆる〜くお楽しみいただければ幸いです。 TEXT●小林秀雄(KOBAYASHI Hideo)

日産ノート オーラG FOUR leather edition
 全長×全幅×全高:4045mm×1735mm×1525mm
 ホイールベース:2580mm
 車両重量 1370kg
 車両総重量 1645kg
 Fサスペンション:独立懸架ストラット式
 Rサスペンション:トーションビーム式
 駆動方式:4WD
  発電用エンジン
 形式:DOHC水冷直列3気筒
 型式:HR12DE
 排気量:1198cc
 ボア×ストローク:78.0mm×83.6mm
 圧縮比:12.0
 最高出力:82ps(60kW)/6000pm
 最大トルク:103Nm/4800rpm
 燃料供給:EGI
 燃料:無鉛レギュラー
 燃料タンク:36ℓ
  Fモーター
 型式:EM47
 種類:交流同期電動機
 最高出力:136ps(100kW)/3183-8500rpm
 最大トルク:300Nm/0-3183rpm
  Rモーター
 型式:MM48
 種類:交流同期電動機
 最高出力 68ps(50kW)/4775-10024rpm
 最大トルク:100Nm/0-4775rpm
 動力用主電池 リチウムイオン電池
 □燃費
 WLTCモード 22.7km/ℓ
 市街地モード 21.8km/ℓ
 郊外モード 24.9km/ℓ
 高速道路モード 21.8km/ℓ

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…