長距離ドライブに最適な日産スカイラインGTS-tタイプM(R32)
一瞬GT-Rに見えるこのクルマ、よくよく見るとリヤフェンダーが張り出してなく、5ナンバーのGTS-tタイプMだと気が付く。GT-Rのグリルを装備しているから勘違いしてしまうのだが、それ以外は極めてノーマル度が高い。これは何かこだわりがあるのだろうと思って、そばにいたオーナーを直撃してみた。
オーナーは初代セリカのマニアで有名な富樫賢二さんで、筆者とはかれこれ20年来の知り合いだった。でもR32タイプMを所有しているのは初耳。なぜタイプMを?と聞けば意外な言葉が返ってきた。「R32は速いし面白いクルマですが、タイプMには身軽さがあります。これが走りやすさにつながっているんです」とのこと。4台もGT-Rを乗り継いだ人ならではの感覚なのかもしれない。
購入したのは平成18年というから、すでに15年間も所有されていることになる。ただ、タイプMや初代セリカのほかにも所有車があるため、もっぱらこのタイプMは長距離ドライブ専用だとか。
GT-Rより乗りやすいタイプMだが、グリルを変更したのはGT-R乗りだった過去があるから。面白いのはホイールで、一見するとGT-R用に見える。でも、よく見ればタイプM純正だとわかる。これはガンメタに塗装したことによるマジックなのだ。
GT-R純正ボンネットは富樫さん自ら交換作業をされたとのこと。簡単に付くだろうと考えて、ネットオークションで格安だったボンネットを単体で購入。奥様に手伝ってもらいながらタイプMのヒンジに取り付けたものの、なんとキャッチの位置が違って閉められないことに愕然とされた。GT-Rは位置だけでなくホーンもキャッチに取り付けられているため、タイプMとは部品の形状がまるで違う。そこで再度ネットオークションでボンネットキャッチを手に入れ付け直された。
タイプMに搭載されたエンジンは2リッター直列6気筒DOHCターボのRB20DET型。RB26に比べてトラブルは少なく思うが、走行距離が10万kmを超えたくらいから調子を崩し始めた。
そこでディーラーへ持ち込み原因を探るも、なかなか特定することができない。O2センサーに始まり燃料ポンプやクランク角センサーなど、怪しい個所を新品部品に交換してみるが、それでも改善しない。結果的にトラブルの原因はインジェクターの詰まりだと判明したが、ここまでの整備だけで100万円ほどかかってしまったとか!
メンテナンスに費用はかかったが、それ以外の作業はなるべくご自分で行っているという。前後に装着したNISMO製タワーバーは、これまたネットオークションで数千円で買ったもの。自分でできるモディファイを楽しみながら、肝心な部分はしっかり整備する。これが長く乗る秘訣のようだ。
室内は比較的オリジナルのままを保っている。というのもタイプMは長距離ドライブを楽しむことが多いから、できるだけ乗りやすく実用性を保って欲しいためだ。今年は住んでいる都内から鹿児島まで自走されたりと、毎年のように遠方まで走っているそうだ。
シートはフロントの2脚をGT-R純正に変更している。ホールド性が高いことで疲労度を低減できるからだろう。表皮に社外のカバーを被せているが、純正シートらしく使い勝手や実用性を優先するオーナーらしいモディファイだ。
R32スカイラインもすでに30年選手だから、維持費がかかるのも仕方ないこと。ただこのタイプMに限って言えば100万円近い整備代を費やしたので、しばらくトラブルとは無縁でいられそうだ。80年代や90年代の国産車にこれから乗ろうと思うなら、やはり維持費を用意しておくのが確実ということだろう。