【新型フリードvsシエンタ】居住性や積載性の差は?e:HEVの完成度も含めてフリードに軍配!?

新型にスイッチしたホンダ・フリードとトヨタ・シエンタは、2列シートと3列シートを設定するコンパクトカー/コンパクトミニバンとして、ガチンコとなるライバル関係にある。「トヨタvsホンダ」という構図において、販売面ではトヨタが優位に立つことが多く、ここ1、2年は現行シエンタがリードしてきた。しかし、2022年まではフリードの方が売れていて、新型の投入で巻き返しを図る。

新旧フリードとシエンタのサイズの違いは?

5ナンバーサイズを基本とするフリード、シエンタ。フリードは新型になり、「クロスター」が前後のホイールアーチプロテクターを装着したことで、3ナンバーサイズに突入した。最小回転半径は新型クロスターも含めて、5.2mと変わっていない。一方のシエンタは、全車5ナンバーサイズ枠にこだわっていて、最小回転半径は5.0mに抑えている。


ここで、両モデルのサイズを比較してみよう。

旧型フリード(FF):全長4265×全幅1695×全高1710mm/ホイールべース2740mm

フリード・エアー(FF):全長4310×全幅1695×全高1755mm/ホイールべース2740mm

フリード・クロスター:(4WD)全長4310×全幅1720×全高1780mm/ホイールベース2740mm

シエンタ(FF):全長4260×全幅1695×全高1695mm/ホイールベース2750mm

新旧フリードを比べると、45mm長く、45mm背が高くなっている。新型のクロスターは、先述した加飾の分、ワイドになっていて、パッケージングの面での影響はないはず。全長が45mm延びたのは、e:HEV対応のためで、全高が45mm高くなったのは、シャークフィンアンテナの採用によるもの。先代のルーフアンテナを立てた状態だと、先述したように、先代の方が105mm高くなる。つまり、全高はアンテナの形式(種類)による差であり、全長とクロスターの全幅以外はあまり変わっていない。なお、居住性を左右するホイールベースも同値だ。

また、現行シエンタと旧型フリードでは、サイズはほとんど変わらなかったが、新型になったフリードは、ほぼ水平基調のルーフラインとベルトラインやキャラクターラインにより、伸びやかなサイドビューという印象を受ける。

新型フリードとシエンタの居住性の違い

既述のように、新型フリードにおける全長の伸張は、e:HEV化のためとしていて、プラットフォームを踏襲することもあり、パッケージングの面で劇的な変化は抱かせない。3列目の足元空間をはじめとした居住性の高さで優位に立つのは、フリードで、2列目を最後端にしてサードシートに座ると、膝前空間は感覚的には倍くらい違う。3列目シートの背もたれ、座面の厚みがあるのもフリードの方で、シートサイズでもフリードの方が有利だ。また、3列目の頭上空間もフリードの方が広く感じられる。

フリードの3列目シート。

さらに、2列目にキャプテン(セパレート)シートも設定するフリードに対して、シエンタの2列目はベンチシートのみとなっている。座り心地を重視するのならフリードのキャプテンシートが有利で、実際に高速道路も含めた一般道で乗り比べると、ベンチシートの方が身体の動きも抑制できることもあり快適だった。これは、ベンチシートも設定するフリード同士の比較でも言えることで、2列目の快適性を重視するのならフリードのキャプテンシート(6人乗り)を推奨したい。

フリード6人乗り仕様の2列目は独立したキャプテンシートとなる。

1列目での大きな違いは、着座位置がフリードの方が高い点で、シートハイトを最も下げると、シエンタは一般的なコンパクトハッチよりも少し高い程度となる。その状態だと身長171cmの筆者でも前方の見晴らし性が悪化するので、シートハイトを上げて行くことになる。

フリードの1列目シート。

新型フリードとシエンタの乗降性、積載性をチェック

乗降性は1列目と2列目に関しては、体感上は大差は感じられない。3列目は、ルーフラインが水平基調になるフリードの方が頭上まわりには余裕がある。また、フリードのキャプテンシートは、2列目と3列目間の前後ウォークスルーが可能になる反面、3列目の乗降時は2列目を前に出して、背もたれを前倒しするため開口部は小さめ。フリードのベンチシートとシエンタ(ともに7人乗り)は、2列目をタンブル(折りたたみ)させることで、開口部足元が大きくなる。

フリードとシエンタの設計、考え方の違いは、積載性にも現れている。シエンタは、先代と同様に3列目を左右跳ね上げ式としている。シートの軽量化により先代よりも軽い力で操作できるようになり、低い位置に跳ね上げることで操作性と斜め後方の視界にも配慮した。一方で、サードシートのヒール段差(床から座面前端までの高さ)が低く感じられるようになった。

シエンタの3列目は、床下格納式だが、2列目を先にタンブル(床下格納)させる必要があるのと、荷室側からサードシートを格納することになるのだが、腕を身体ごと大きく前に伸ばして操作する必要がある。3列目を格納しっぱなしであれば、シエンタは床下に収まる分、すっきりした空間が出現する利点がある。ただし、2列目と3列目を格納(もしくは2列目を前に出した)する際とシートを戻す(起こす)時の手間はフリードの方がかからない。

フリード6人乗りの室内レイアウト

大幅に進化した新型フリードは、とくにe:HEVの完成度が高い

フリードe:HEV AIR

さて、「e:HEV」化された新型フリードの走りは、スタート時の静粛性はもちろん、中低速域のスムーズさ、加速時の音・振動面の抑制など、先代のハイブリッドよりも大幅に進化している。街中であれば主役はモーターで、加速が欲しい際のレスポンスも良好そのものだ。高速道路などでの急加速時でもリニアシフトコントロールの採用は恩恵として感じられ、よりリニアな加速感をもたらすのも印象的。エンジン始動時の音・振動もほとんど意識させず(もちろん察知できるものの)、よほどの急加速時でない限り、「e:HEV」は上質さという点でも純ガソリンエンジン車よりも、ライバルのシエンタ(THSⅡ)よりも上に立つ。

フリードe:HEV用エンジン 1.5L直列4気筒 最高出力:78kW/6000-6400rpm/最大トルク:127Nm/4500-5000rpm モーター最高出力:90kW 最大トルク:253Nm

さらに、電動パワステの切り始めからのフィーリングもより違和感がなくなり、高速域でのナチュラルなハンドリングも美点だ。また、先代からプラットフォームを踏襲することもあるのか、出始めのホンダ車としては、乗り心地の良さも好印象だ。乗り味では、1列目、2列目、3列目と後方に行くに従って静粛性も含めて不利になるものの、1列目と3列目間の会話もそれほど声を上げなくてもできた。なお、フリードの自慢装備であるリヤクーラーの有無は、3列目でも絶大で、同装備装着車の方が売れているというのも頷ける。

新型フリードの1.5Lガソリンエンジン車は、カリカリ音を伴う先代の直噴からポート噴射に変わり、静粛性が高まっているのが朗報。燃費への影響は、コンマ5(0.5km/L)だそうで、メリットの方を選択したのだろう。「e:HEV」よりも90〜100kg程度軽いこともあり、軽快感でも上だ。動力性能ではモーターアシストのある「e:HEV」には及ばないものの、街乗り中心でコスパも重視するのであれば、純ガソリンエンジン車を選択する手もありだろう。

フリード ガソリンエンジン 1.5L直列4気筒 最高出力:118ps(87kW)/6600rpm/最大トルク:142Nm/4300rpm

シエンタは、ハイブリッドであればカタログ燃費の良さに加えて、実用域でのEV(モーター)走行の頻度が多く(長く)などの利点を享受できる。良くも悪くもパワステの手応えが軽く、高速域での直進安定性もそれなりだが、よりカジュアルな感覚で運転できるという美点がある。

ホンダ・フリード AIR
トヨタ・シエンタ

キーワードで検索する

著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…