トヨタの元WRC王者が選手権の行方を左右?2024年は9戦中7戦でパートタイムドライバーが勝利する奇妙なシーズンに

2022~23年にトヨタでチャンピオンに輝いたカッレ・ロバンペラがフル参戦を休止している2024年のWRC。ロバンペラはパートタイムドライバーとしてトヨタの3台目を元WRC王者のセバスチャン・オジエとシェアしているが、それによって今年のWRCはちょっと奇妙なシーズンになっている。様々なシリーズが“夏休み”に入っているこのタイミングでここまでの戦いを振り返る。

FIA世界ラリー選手権(WRC)はラリーの世界最高峰シリーズだ。2024年シーズンのカレンダーは全13戦で構成され、1月のラリー・モンテカルロで始まり、11月のラリー・ジャパンで閉幕を迎える。

2024年はポイントシステムが大幅に変更された。これまではラリーの最終的な順位に基づき上位10名(1位から順に25、18、15、12、10、8、6、4、2、1ポイント)と、パワーステージの上位5名(1位から順に5、4、3、2、1ポイント)にチャンピオンシップポイントが授与されていた。

一方、今季はイベント初日から土曜日終了時点での総合順位と、最終日となる日曜日のみの順位、そしてパワーステージの結果、と合計3度の得点機会が設けられることとなった。

土曜日終了時点でのポイントは総合1位から10位までに授与される(1位から順に18、15、13、10、8、6、4、3、2、1ポイント)が、これはラリーを完走したもののみに与えられる。つまり、土曜日を総合トップで終えても、翌日曜日にリタイアとなれば無得点となる、ということだ。

そして、日曜日はスーパーサンデーと称され、その日に行われるステージの合計タイムが計算対象となり、ポイントは1位から7位までに与えられる(1位から順に7、6、5、4、3、2、1ポイント)。

パワーステージについては変わっておらず、上位5位にボーナスポイントが与えられる(1位から順に5、4、3、2、1ポイント)。

2022年、23年にWRC世界王者となったロバンペラ

また、トヨタで2022年、2023年にドライバーズタイトルを獲得したカッレ・ロバンペラが、2024年シーズンはフル参戦を休止。トヨタの3台目のGRヤリス・ラリー1ハイブリッドをセバスチャン・オジエとシェアしている。

トヨタの若き大エースがパートタイムドライバーとなったこともあり、2024年のWRCは混戦模様となっている。

ここまでの9戦のうち、ロバンペラとオジエがそれぞれ3勝ずつを挙げている。そして、ヒョンデのティエリー・ヌービルとオィット・タナック、エサペッカ・ラッピがそれぞれ1勝ずつをマーク。現状では、フル参戦するドライバーで優勝を果たしているのはヌービルとタナックのみという奇妙なシーズンとなっている。

ヌービルは開幕戦モンテカルロで優勝。第9戦フィンランドを終えた時点でランキングトップにつけている。

そんな今季、現在ドライバーズランキングでトップに立っているのはヌービルだ。ヌービルは開幕戦ラリー・モンテカルロにおいて、1ラウンドで獲得できる最大ポイントである30ポイントを獲得(土曜日終了時に総合1位となり18点、日曜日のリザルトで1位となり7点、パワーステージで1位となり5点)。

その後は勝利から遠ざかってはいるものの、すべてのラウンドでポイントを獲得。デイリタイアを喫した第6戦ラリー・イタリア・サルデーニャにおいても、日曜日に獲得できる最大のポイントを持ち帰るなどしぶとく戦い、合計168ポイントを稼ぎ、初戴冠に向けて突き進んでいる。

元王者で大ベテランのオジエ。今年41歳となるが、少なくともリザルトからは年齢による衰えは感じさせない。

ランキング2位になっているのはオジエだ。8度のWRC王者はここまで6戦に出場して3勝、2位表彰台は3度という驚異的な戦績を収めており、ほとんどのフル参戦ドライバーを上回る141ポイントを獲得している。

ランキング3位にはタナック、同4位にはトヨタのエルフィン・エバンス、同5位にはMスポーツ・フォードのアドリアン・フォルモーが続いている。

6位につけているのはロバンペラだ。ロバンペラは前述の通り3勝を挙げているが、土曜日までのデイリタイアを2回、最終日でのリタイアを1回と、やや安定感を欠いている。

トヨタからフル参戦している勝田貴元は、ロバンペラに次ぐランキング7位。第3戦サファリ・ラリー・ケニアで2位となったが、ここまでで表彰台フィニッシュはその1回のみと苦しんでいる。

勝田貴元の2024年シーズンのハイライトは相性のいいサファリ・ラリー・ケニアで、総合2位を獲得。このラリーで18ポイントを稼いだ。

現状、ドライバー選手権で優位に立っているのはヌービルではあるものの、他のドライバーにもまだチャンスはある。とくに、選手権2位につけてるオジエやロバンペラが残りのラウンドでどのような活躍をするかはドライバーズ、マニュファクチャラーズの両選手権の行方を左右しそうだ。

マニュファクチャラーズ選手権は、ヒョンデがトップ。それにトヨタとMスポーツ・フォードが続くかたちだ。第9戦フィンランド終了時点ではヒョンデとトヨタの差は20ポイントで、残りの4戦で逆転する可能性は充分にある。

WRCの2024年シーズン第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャは、9月5~8日に開催される。

2024年世界ラリー選手権 ドライバーズランキング(第9戦終了時点/Top10)

Rank.DriverManufacturerPts.
1T.ヌービルヒョンデ168
2S.オジエトヨタ141
3O.タナックヒョンデ137
4E.エバンストヨタ132
5A.フォルモーフォード119
6K.ロバンペラトヨタ86
7勝田貴元トヨタ76
8E.ラッピヒョンデ33
9A.ミケルセンヒョンデ29
10D.ソルドヒョンデ27

2024年世界ラリー選手権 マニュファクチャラーズランキング(第9戦終了時点)

Rank.ManufacturerPts.
1Hyundai Shell Mobis World Rally Team395
2TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team375
3M-Sport Ford World Rally Team207

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