ホンダ創業者の本田宗一郎が設立した国際交通安全学会が創立50周年記念式典を開催

公益財団法人 国際交通安全学会(International Association of Traffic and Safety Sciences/以下IATSS)は、9月17日(火)に虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)にて、創立50周年記念式典を開催する。

設立50周年という節目、学会の事業活動を拡大

IATSSは、ホンダの創業者である本田宗一郎氏、藤澤武夫氏の「理想的な交通社会の実現に寄与する」という思いを実現するために、1974年9月17日に両氏とホンダが拠出した基金をもとに設立された。

写真左から本田宗一郎氏と藤澤武夫氏

1970年代の日本では、モータリゼーションが急速に進展し人々の生活に多大な便益をもたらした一方で、当時死者数が1万人を超えていた交通事故をはじめ、渋滞や交通公害などさまざまな問題を引き起こした。こうしたなか、ホンダは1970年に二輪車・四輪車メーカーとして初めて「安全運転普及本部」を設置し、交通参加者の観点から交通問題、安全の問題を考え、安全運転普及に向けた指導者の養成、安全運転教育、安全啓発キャンペーンの実施など、交通安全の実践活動をすすめてきた。しかしながら、交通事故をはじめとする数々の問題は、人間、機械、環境の3つの要素が複雑に関係しあって生じるものであり、ホンダとしての企業努力だけでは限界が訪れた。

それまでの安全運転普及活動の経験から、交通問題の本質的解決のためには多岐にわたる専門分野の有機的な結びつきによる新しい科学の研究の必要性が認識されるようになり、「交通安全をはじめとする交通社会全般の課題に対し、自由に討議・研究してその成果を社会に提言する」ことを目的にIATSSが設立された。IATSSは、交通工学など文理にまたがるさまざまな専門家、評論家、ジャーナリストなどが会員となり、交通社会に関わる研究を進めてきた。そして研究成果を広く社会に発信し提供することで、諸問題の解決に大きく貢献してきた。

IATSSは日本だけでなく、交通問題が深刻なアジアの開発途上地域などにおいても研究・実践活動を展開。こうした活動を通じて、開発途上地域の交通問題の解決を目指すと同時に、そこで得られた知見を日本の交通政策にも生かす「共創」の姿勢を追究してきた。1983年にはマレーシアで開催されたIATSSの国際シンポジウムに本田宗一郎氏と当時の首相であるマハティール・ビン・モハマド氏が同席。「将来のASEAN発展の源泉は人材育成である」というマハティール氏の持論に本田氏が共感し、藤澤氏とともに個人資産を提供して、1984年にアジア諸国の次世代を担う若者を対象とした研修事業「IATSSフォーラム」を設立した。IATSSフォーラムは、8週間の集中した体験学習と現場実践を通して自国発展のためにリーダーシップを磨くもので、2024年までの39年間でASEANだけでなくインドを含むアジア10か国から1143名の卒業生を輩出した。

第1回IATSSフォーラム修了式の様子

IATSSは創立50周年にあたり、現在までの重要な事業活動に貢献した方々への感謝、そして将来の学会の活性方針の展望を共有するために、創立50周年記念式典を開催する。そして今後も、理想的な交通社会の実現に向けて、さまざまな分野の専門家と関係性を築き、学会の事業活動を拡大していく。

■「IATSS創立50周年イベント」概要
・開催日時:2024年9月17日(火)13:30~16:40(開場13:00)
・開催会場:虎ノ門ヒルズフォーラム(〒105-6305 東京都港区虎ノ門1丁目23-3 虎ノ門ヒルズ森タワー 5F)
・主催:公益財団法人 国際交通安全学会(IATSS)
・参加料:無料(事前申込制)
・申込期日:2024年9月3日(火)12:00まで
・申し込みURL:https://www.iatss.or.jp/event/ceremony_50th/
・登壇者
武内和彦(公財)国際交通安全学会会長、(公財)地球環境戦略研究機関(IGES)理事長
毛利衛 宇宙飛行士、日本科学未来館名誉館長
蓮花一己 日本自動車連盟(JAF)副会長、帝塚山大学名誉教授・客員教授
永田潤子 大阪公立大学教授
野中ともよ NPO法人ガイア・イニシアティブ代表
※敬称略

■IATSS概要
●法人名:公益財団法人 国際交通安全学会(International Association of Traffic and Safety Sciences)
●所在地:〒104-0028 東京都中央区八重洲2-1-1YANMAR TOKYO 6F
●設立:1974年9月
●会長:武内和彦
●活動の目的:理想的な交通社会の実現に寄与
●学会の構成:評議員会、理事会、専門部会
●専門部会
・研究調査部会:交通およびその安全に関する調査研究
・広報出版部会:交通およびその安全に関する広報
・出版・褒賞助成部会:交通およびその安全に関する活動に対する褒賞
・IATSSフォーラム部会:諸外国における理想的な交通社会実現のための国際交流
●会員数:59名(2024年8月現在)
●公式サイト:https://www.iatss.or.jp
※敬称略
■IATSS沿革
1974年
本田宗一郎、藤澤武夫および本田技研工業株式会社による基金をもとに、財団法人としてIATSS設立
1975年
日本においてシンポジウムを初開催和文の学会誌「IATSS Review」創刊
1976年
国際シンポジウム初開催(以後、1984年まで国内外で交互に開催)
1977年
英文国際学術論文誌「IATSS RESEARCH」創刊
1979年
「国際交通安全学会賞」を創設。毎年1回表彰を実施
1983年
マレーシアにおいて、国際シンポジウムがアジア初開催。マハティール首相(当時)の持論に本田宗一郎が共感、IATSSフォーラム設立検討開始
1985年
本田宗一郎・藤澤武夫が私財を投じて「IATSSフォーラム」開始
2011年
公益財団法人設立登記
2015年
第1回国際フォーラム「GIFTS(Global Interactive Forum on Traffic and Safety)」開催
※敬称略

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