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インテリアはバレーノから進化
マルチスズキは22年に2代目バレーノを発売した(日本未導入)。スイフトより少し大きな全長3995mmのハッチバックである。それとプラットフォームを共有して今回のフロンクスが開発されたのだが、実はインテリアはデザインもバレーノをベースとしている。
インテリアを担当したデザイナーの増田 茜さんによると、「バレーノのインテリアは本社主導でデザインし、それをベースにフロンクスにする変更部分は本社がサポートしながらマルチスズキ主導で進めた」という。
バレーノのインパネは、センターから左右に広がるウイング形状のシルバー加飾がひとつの特徴だ。スイフトがセンタークラスターをドライバー側に向けてスポーティさを高めているのに対して、バレーノは左右対称の落ち着いたイメージ。水平方向の伸びやかな広がり感も含めて、スイフトよりひとつ上の車格を表現したデザインと言ってよいだろう。
そのバレーノをベースに、フロンクスの開発にはどんなコンセプトで臨んだのか? 増田さんがこう答える。「コンセプトはエクステリアと同じで、SUVの力強さや逞しさを表現する。それに加えて、バレーノより上級に見えることを目指した」
大きく変更したのがインパネ中段だ。バレーノでは伸びやかなウイング形状だった加飾に替えて、立体的で骨太な加飾を採用。それをヒーコンパネルの脇まで下方に延ばして縦基調の流れを作ったのは、SUVらしい力強さの表現だ。さらにその下にもうひとつ、サイドルーバーにつながる加飾(スズキではサイドルーバー加飾と呼ぶ)を追加して、車格感を高めている。
ブラックとボルドーに主従関係を付けた配色
フロンクスの内装色はブラック&ボルドーのツートーン。スズキ車でボルドーは初めてだが、それを選んだ理由を聞くと、「高級感があると同時に、ブラックと組み合わせることでスポーティにも見える。深みのある色なので、力強いインテリアの雰囲気にもマッチすると考えた」と増田さん。そして、「基本的にどこの仕向地でもこのツートーンだが、日本向けだけはブラックの比率を増やしている」と続けた。
サイドルーバー加飾は日本以外の仕向地ではマットなシルバーなのに対して、日本仕様は艶のあるパールブラック塗装を採用。ドアのインナーハンドル回りやアームレストの加飾も同じパールブラックでコーディネートしている。
ドアトリムの配色も異なり、ドアハンドルが入る肩口部分の硬質樹脂パネルを、日本仕様はブラックに変更した。日本以外はインパネのボルドー色がドアにつながるイメージなのに対して、日本仕様はブラック基調のなかにインパネやドアのボルドーが「島」のように独立している。その意図を増田さんは、「ブラックとボルドーに主従関係を付けたほうが、日本のお客様にはよいと考えた」と説明する。
シートも日本以外はサイドサポートがボルドーなのに対して、日本仕様は座面の膝下とバックレストの肩から上をボルドー。このボルドー部分とサイドサポートには合皮を張っている。「フロンクスで合皮を使っているのは日本だけ」(増田さん)とのこと。ボルドーの主張は抑えつつ、質感をしっかり高めたのが日本仕様というわけだ。
攻めのカラー・ラインナップ
ボディカラーは全7色で、アークティックホワイトパール以外は日本では新色だ。インド生産のおかげで色選びの楽しみが増えた。しかも、ダーク系のセレスティアルブルーとブルーイッシュブラックだけがモノトーンで、残る5色はブラックルーフと組み合わせたツートーンという攻めた設定である。
アースブラウンやルーセントオレンジといったSUVらしい色がある一方で、注目したいのはスプレンディッドシルバーだ。近年の日本ではシルバーの販売シェアが低迷気味で、それを設定しない車種も増えてきているが、「少し青味のシルバーなので先進感があるし、フォルムと相俟ってダイナミックに見える」と語るのは、エクステリアを担当した前田貴司さん。この新しいシルバーが日本でシルバー人気が復活するきっかけになったら面白い。
なお、フロントグリルは材着のブラック。インドのフロンクスにはまだADASのレーダーがないが、日本仕様はそれを装備するため塗装できないからだ。素材はスイフトやスペーシアで実績ある三菱ケミカル製「DURABIO」というバイオポリカ(主成分が植物由来)。前田さんは「光沢と輝きあるので、塗装しなくても質感が高い。新鮮さも演出できたと思う」と胸を張る。
全長3995mmはダイハツ・ロッキーと同じだが、全幅が1765mmあるのでヤリスクロスやヴェゼルなどBセグメントのSUVはすべてライバルになりそう。日本市場に向けてしっかり対策してきたフロンクスのデザインが、この激戦区でどう受け入れらるか? これはもう楽しみという以外にない。