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■軽の常識を変えた軽ハイトワゴンというジャンルを開拓
1993(平成5)年9月3日、スズキから軽のハイトワゴンという新しいジャンルを開拓した「ワゴンR」がデビュー。ワゴンRは、2024年現在、軽の主流となっている背の高いハイトワゴンおよびス-パーハイトワゴンのパイオニアであり、画期的な軽自動車である。
1980年代の軽ボンネットバンブームの人気と凋落
1980年代は、1979年に登場したスズキ「アルト」が提案した軽ボンネットバンが市場を席巻して一大ブームとなった。軽ボンネットバンとは、乗用車のようなスタイルの商用車であり、メリットは商用車にすることで物品税が非課税のため販売価格が下げられること。軽乗用車については、当時15.5%の物品税が課せられていたが、軽商用車は非課税だったのだ。
アルトは、衝撃的な47万円の低価格でデビューし、空前の大ヒットを記録。他社もボンネットバンの軽を投入し、市場は軽ボンネットバンブームが巻き起こった。
ところが、1989年に消費税が導入されたことで物品税は廃止され、商用車と乗用車の税制格差がなくなり、これにより軽ボンネットバンの大きなメリットが消失して、軽ボンネットバンブームは終焉を迎えた。
1990年代の軽ハイトワゴンブーム到来
1993年のこの日、軽ハイトワゴンの元祖「ワゴンR」が登場。ワゴンRは、車高を「アルト」より頭一つ分(255mm)高くした1680mm、さらにホイールベースをクラス最大の2335mmに設定し、従来の軽自動車になかった圧倒的なサイズ感と室内空間を実現した。
右側1ドア、左側2ドアの個性的な左右非対称の3ドアで、サイドシルの高さを低くしてフロアとの段差をなくし、さらにシートを上げて背もたれの角度を立てて、自然な姿勢での乗降を可能にしたことが画期的だった。
パワートレインは、最高出力55psを発揮する660cc直3 SOHCエンジンと5速MTおよび3速ATの組み合わせ。1995年にはインタークーラー付ターボモデルを追加し、商品力強化が図られた。
車両価格は、標準グレードで79.8万円、トップグレード(4WDターボ)で119.5万円に設定。ちなみに、当時の大卒初任給は約18.4万円(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で標準グレードが約100万に相当する。
爆発的な人気を獲得したワゴンRは、発売から3年2ヶ月の1996年に累計販売台数50万台、1998年に登場した2代目も好調をキープし、2001年には累計150万台を達成。なんと2008年まで軽販売台数のトップの座に君臨したのだ。
今や軽のスタンダードとなったハイトワゴンとスーパーハイトワゴン
ワゴンRの大ヒットを受けて、ライバルのダイハツから1995年に「ムーヴ」、1997年にホンダ「ライフ」、1998年には三菱自動車から「トッポBJ」と、続々と軽ハイトワゴンが登場した。
特にムーヴは、完全にワゴンRを意識したハイトワゴンで、ワゴンRが左右非対称の3ドアだったが、ムーヴは使い勝手のよい4ドア。ある程度の違いで、その後も長く、そして現在もワゴンRとムーヴの熾烈な販売競争は続いている。
さらに2003年には、ダイハツが全高を1725mmまで上げた「タント」を発売。ハイトワゴンよりさらに全高を上げたスーパーハイトワゴンという新たなジャンルを確立させ、その後スズキも「パレット」、「スペーシア」、ホンダ「N-BOX」、日産「デイズ」と続き、今やスーパーハイトワゴンが軽の主流となっている。
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現在、新車販売における軽自動車のシェアは、ほぼ40%に達し、その中でハイトワゴンとスーパーハイトワゴンを合わせると、軽乗用車の7割を超えるシェアを占めている。その火付け役となったのは、今から40年以上も前に誕生したワゴンRである。ワゴンRは、それまで“軽自動車は狭いからちょっとね”と考えていた人たちを振り向かせ、軽自動車をファミリーカーへと格上げさせた、軽自動車の歴史を変えた革新的なクルマなのだ。
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