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日本初の国産ファミリー装甲車
陸上自衛隊に新たな装甲車が導入された。今年度(2024年度)より調達が開始された「24式装輪装甲戦闘車」と「24式機動120mm迫撃砲」だ。これまで「共通戦術装輪車 歩兵戦闘型/機動迫撃砲型」の名前で知られていたが、今回の概算要求で初めて「24式」の名が明らかとなった、わが国の最新鋭国産装甲車だ。
共通戦術装輪車は、平成28年度(2016年度)より調達が開始された16式機動戦闘車の車体をベースに開発された車両で、24式装輪装甲戦闘車(旧 歩兵戦闘型)は隊員輸送用に、機動120mm迫撃砲(旧 機動迫撃砲型)は迫撃砲を搭載できるように、それぞれキャビンなどが改修されている。共通車体による車両開発、いわゆる「ファミリー化」は、部品が共通化されるなど整備・補給面でメリットがあり、他国では一般的な開発手法だが、日本では本車が初めてとなる。
概算要求と同日に発表された防衛装備庁の資料によれば、装甲戦闘車は乗車人員11名とされており、陸上自衛隊の普通科隊員1個分隊(10名前後)を輸送できる。また、機動120mm迫撃砲は、フランス製の半自動装填式120mm迫撃砲「2R2M」を装備する。これは陸上自衛隊が90年代から配備している120mm迫撃砲RTから派生した車載砲であり、隊員にとっても馴染のある砲と言える。また、同車のファミリーには、まだ制式名称の無い「偵察戦闘型」もあるが、今年度から予算計上されており、おそらくは来年度に「25式」の名前を冠すると予想される。
現時点で、最終的に装甲戦闘車は232両、機動迫撃砲が102両、偵察戦闘型が116両の調達が予定されており、これらは有事の即応部隊である「即応機動連隊」に配備される見込みだ。24式シリーズの登場により、日本の即応戦力は大きく増強される。
旧式車両の長期保管を計画
新しい車両が調達される一方で、古い車両に関しても注目すべき動きがあった。「予備装備品の維持」として退役車両の保存・保管のため7億円が予算計上されているのだ。これまで陸上自衛隊では、退役車両は原則すべて解体されていたのだが、「継戦能力を強化するため」として、使用可能な車両を長期保管する方針が示された。
この変化は、現在も続くウクライナ戦争の影響だろう。ロシア軍は侵攻前の現役保有戦車とほぼ同数(3000両)を喪失しながらも、数千両と言われる保管戦車の再利用により戦争を続けている。報道によれば今年の春に完全退役した74式戦車を約30両、さらに90式戦車を数両、また多連装ロケットシステム(MLRS)約10両の保管が計画されているようだ。
また、高温多湿の日本では屋外保管は装備の劣化が想定されるため、予算では「保管設備の設置」も言及されている。このような施設の建設も、日本では初めてとなるわけだが、どうせなら一部を一般公開して、車両の動態展示などをしてはくれないだろうか…と、マニアな筆者は考えてしまう。安全保障への理解を深める、よい機会ともなると思うが、いかがだろうか?