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■走り自慢のロータリー第5弾サバンナデビュー
1971(昭和46)年9月6日、マツダ(当時は東洋工業)の「サバンナ」がデビューした。「コスモスポーツ」で世界初のロータリーエンジンの量産化に成功したマツダは、その後「ファミリア」、「ルーチェ」、「カペラ」とロータリーシリーズを展開。続いた第5弾サバンナはその中でも走りを極めたパワフルな走りが自慢だった。
マツダが進めたロータリーのモデル展開
世界初のロータリーエンジン量産化モデルは、1967年に誕生したマツダのコスモスポーツである。コスモスポーツは、最高出力110ps/最大トルク13.3kgmを発揮する10A型(491cc×2ローター)ロータリーエンジンを搭載した2シーターのスポーツカー。圧倒的な動力性能を誇ったが、車両価格は148万円(今なら1000万円超)と非常に高価なスポーツカーだったので、5年間の累計台数は1176台にとどまった。
マツダは、ここからロータリーエンジンの魅力を世界にアピールするため、ロータリーモデルのラインナップ攻勢をかけた。
・第2弾「ファミリア・ロータリークーペ(1968年~)」
大衆車のファミリアながら、気楽にスポーツ走行が楽しめた安価な70万円のスポーツクーペ。
・第3弾「ルーチェ・ロータリー(1969年~)」
マツダの最上級の中型セダンで、ジウジアーロによる丸目4灯の欧州風デザインが特徴。
・第4弾「カペラ(1970年~)」
“風のカペラ”のキャッチコピーで登場した中型車、米国に本格的に進出して米国で人気を獲得。
圧倒的な動力性能で走り屋を虜にしたサバンナ
そして登場した第5弾が、高出力が自慢のロータリーモデルのなかでも、特に走りを極めたサバンナだ。
2ドアクーペと4ドアセダンのボディに、4灯式ヘッドランプを持つ迫力あるフロントマスクと、ロングノーズ&ショートデッキの躍動感あふれるフォルムを採用。比較的小ぶりなボディに、10A型ロータリーエンジンを縦置きに搭載し、最高出力105ps/最大トルク13.7kgmを発揮した。
車両重量が875kgと軽量であったため、最高速度は180km/h、ゼロヨン加速は16.4秒と、これはレシプロエンジンの2Lクラスのスポーツカーを超える性能である。
さらに、翌1972年にはトップグレードの「サバンナGT」がラインナップに加わった。サバンナGTには、排気量を拡大した12A型ロータリーが搭載され、最高出力120ps/最大トルク16.0kgmで最高速度は190km/hを超え、多くの走り屋を虜にした。
サバンナGTの車両価格は、79.5万円。当時の大卒の初任給は約5.5万円(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で332万円に相当する。ちなみに、後述するライバルの日産「スカイラインGT-R(PGC10型)」の価格は、154万円だった。
スカイライン神話に終止符を打ったサバンナ
サバンナGTは、発売前からその走りをアピールするために、レース用にハイチューニングを施し、「サバンナRX-3(輸出名)」の名でレースに参戦した。
サバンナの名前を一躍有名にしたのは、1971年12月の「富士ツーリストトロフィー500マイルレース」だった。当時、スカイラインGT-Rは前人未到のレース49連勝で無敵の強さを誇っており、このレースは通算50勝がかかっていた。マツダは、230psにチューンナップしたサバンナRX-3を送り込み、スカイラインGT-Rの連勝を阻止して総合優勝を飾ったのだ。
その後も、1972年5月の「日本グランプリ」でもスカイラインGT-Rを下して総合優勝。以降、サバンナRX-3は1973年、1975年、1976年のグランプリ4連勝(1974年は中止)の偉業を成し遂げ、通算100勝の金字塔を打ち立てた。
世に、ロータリー時代の到来を告げ、サバンナの名が日本中に轟いたのだ。
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サバンナは、厳ついマスクでガソリンはよく食うが、めっぽう速いクルマとして、多くの走り屋やちょっとヤンチャな若者から一目置かれる存在だった。良くも悪くも当時のロータリーモデルを印象づけたクルマである。
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