スバルWRXにMTやワゴンに”tS”まである!? インドネシアが羨ましすぎる!……でも価格は1000万円!?

日本車が大きなシェアを持つことで知られるインドネシアで、2024年7月18日~28日の期間、国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024(GIIAS2024)」が開催された。筆者が会場を巡り出会った、日本には無い"日本車"たちを紹介したい。
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

右ハンドルで日本車天国?インドネシアの自動車事情

インドネシアの自動車事情を少し紹介しておくと、2023年の新車販売台数と現地生産台数でトップ5を日本の自動車メーカーが占めている。新車販売の9割が日本車メーカーといえば、より分かりやすいだろう。販売台数と生産台数共にダントツなのがトヨタ。それにダイハツ、三菱自動車、スズキ、ホンダが続いて、大きなシェアを持つ。ちなみにインドネシアは日本と同じ左側通行なのでクルマは全て右ハンドル車ということもあり、ほぼ日本と同じ車種も販売されている。

「GIIAS2024」のスバルブースに展示されたWRXとフォレスター。

その中でも少数派に属するのがスバルだ。実は2014年にインドネシアの新車販売からは一度撤退しており、ユーザーサポートのみを行ってきた。しかし、2022年に再参入を決断しており、現状ではエンジン車のみであるが、日本に近いラインアップを取り揃えている。

「GIIAS2024」のスバルブースにはWRXに加えBRZ(写真奥)にも大きなスペースが割かれ、レーシングイメージをアピールしていた。

もちろん車両の供給地は日本で、車体には「MADE IN JAPAN」の文字が躍る。現在、導入済みのモデルは「クロストレック」「フォレスター」「アウトバック」のSUVシリーズに加え、スポーツモデルの「BRZ」もある。今回、その中で目を引いたのが、スポーツモデルである「WRX」シリーズだ。

リヤウインドウに貼られた「MADE IN JAPAN」のステッカー。

セダンだけじゃない?WRXワゴンは実はレヴォーグ

WRXワゴンtSアイサイト

海外の現行WRXは定番のセダンに加え、レヴォーグをWRXワゴンとして導入しているケースもある。インドネシアも同様なのだが、そのラインアップは少し日本とは異なる。

WRXワゴンtSアイサイト
THULEのルーフボックスを装着。
WRXワゴンtSアイサイトのリヤシート。
WRXワゴンtSアイサイトのラゲッジルーム。

ひとつは、WRXシリーズは全て2.4L水平対向4気筒ターボエンジンとなること。最高出力275ps/5600rpm、最大トルク350Nm/2000~5200rpmとなっておりトルク特性が異なる(※)。ちなみに、海外仕様のWRXのスペックは北米仕様を含め、基本的には350Nmだ。
※日本仕様のWRX S4/レヴォーグ(2.4L)は最高出力は同様だが、最大トルクは375Nm/2000〜4800rpm。

WRX M/Tアイサイト
WRX tSアイサイト
WRXワゴンtSアイサイト

右ハンドルのMTが選べるインドネシア仕様WRX

WRX M/Tアイサイト

もうひとつが、セダンはMTを設定していること。日本には存在しないWRX MTを選ぶことが出来るのだ。もちろん6速MTだ。サイドブレーキもしっかりとハンドタイプとなる。

WRX M/Tアイサイトのコックピット。
6速MTとレバー式のサイドブレーキ。

ここは少し、いや、かなり羨ましいところ。海外向けモデルなのでMT用アイサイトも搭載されている。ちなみに北米やオーストラリアにも導入されるWRXのMTだが、アジア地区では非導入の地域もあり販売台数は多くないであろうにも関わらずMTを設定していることは、再参入したインドネシア市場への気合を感じるところだ。

WRX M/Tアイサイト

日本では出ないのか!? tuned bt STI「tS」!

そして最大の違いといえるのが、トップグレード「tS」の存在だ。日本ではSTIコンプリートカーとして人気を博していた「tS」だけに、大いに興味をそそられた。

WRX tSアイサイト

しかも、セダンとワゴン共に最上位グレードとして用意されているのだ。カタログをチェックしてみると「STIと共同開発した“tuned by STI”」とある。つまり、その略称として「tS」を名乗っているようだ。

WRX tSアイサイト

その違いを見ていこう。外観上の違いは意外にも控えめ。リヤテールに馴染みのチェリーレッドを用いた「tS」のエンブレムが輝くのみなのだが、そこがシブいともいえる。

WRX tSアイサイトのリヤエンブレム。
WRXワゴンtSアイサイトのリヤエンブレム。

さらにインテリアを見ていくと、ブラックを基調としながらインテリアの各部にレッドステッチを施し、ステアリングとメーターパネル内にSTIエンブレムが装着される。

WRX tSアイサイトのコックピット。

シートはウルトラスエード仕様となり、ヘッドレストにはどちらもロゴが入るが、WRXセダンがレザー表皮に「WRX」の刺繍加工、WRXワゴンがウルトラスエード表皮に「STI」のエンボス加工となるなどの違いがある。トランスミッションはCVTのスバルパフォーマンストランスミッションのみだ。

WRX tSアイサイトのフロントシート。
ヘッドレストのWRXロゴは刺繍加工。
WRXワゴンtSアイサイトのフロントシート。
ヘッドレストのSTIロゴはエンボス加工。

STIチューンの最大の特徴は、キャラ変システムであるドライブモードの装備だ。そのために、ダンパー特性の変更を可能とした電子制御ダンパーが装備されていることにある。つまり、メカニズム的には日本の「STI Sport」だが、内外装の仕様を大人っぽくまとめてあるのがこの「tS」であると言えそうだ。

また差別化として「STIマフラー」との記載もあり、豪華装備では、ハーマンカードンプレミアムオーディオが標準だ。ちなみに、WRXワゴンには日本にはない2.4Lターボを搭載した「GT-S」も用意されている。

現地での価格は一体いくら?

WRXシリーズの価格だが、エントリーモデルとなるセダンの「M/Tアイサイト」が8億7450万ルピア(約805万円)。セダンの最上位モデル「WRX tSアイサイト」が9億5950万ルピア(約898万円)。WRXワゴンの「WRXワゴンGT-Sアイサイト」が9億7550万ルピア(約913万円)。最上位モデルの「WRXワゴンtSアイサイト」が10億2950万ルピア(約964万円)という超高級車であることに衝撃を受ける。

WRX M/Tアイサイト
8億7450万ルピア(約805万円)
WRX tSアイサイト
9億5950万ルピア(約898万円)
WRXワゴン tSアイサイト
10億2950万ルピア(約964万円)

日本でも高くなったなぁ(WRX S4:447万7000円〜502万7000円/レヴォーグSTI Sport R EX:502万7000円)……と思うWRXだが、インドネシアに比べれば激安といえるかもしれない。

インドネシア仕様WRXシリーズ・フォトギャラリー

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…