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■ワンランク上の快適性を追求したツーリングワゴン
1999(平成11)年9月15日、ホンダから上級ワゴン「アヴァンシア」がデビューした。ホンダは、1990年代のワゴンブームにまず1991年に「アコードワゴン」を投入。さらにワンランク上の上級ワゴンとして、セダンのような高級感とワゴンの広い室内空間を融合したアヴェンシアを投入したのだ。
ツーリングワゴンブームを巻き起こしたレガシィ
1989年にデビューしたスバルの初代「レガシィ」に設定されたセダンとツーリングワゴンは、スバル自慢の水平対向エンジンを搭載し、2.0Lターボ仕様は当時最強の最高出力220psを誇り、当時低迷していたスバルの救世主となる大ヒットを記録した。
なかでもツーリングワゴンは、それまでの商用車バンの地味なイメージを払拭して、パワフルなエンジンを搭載したスタイリッシュな新世代“ツーリングワゴン(ステーションワゴン)”というジャンルを開拓した。
レガシィ・ツーリングワゴンの大ヒットに刺激を受けて、他メーカーからワゴンが相次いで市場に投入された。代表的なのは、日産自動車「ステージア」、トヨタ「カルディナ」、「カローラフィールダー」、ホンダ「アコードワゴン」、「アヴァンシア」、三菱自動車「レグナム」、マツダ「アテンザスポーツワゴン」である。
ホンダは、米国生まれのアコードワゴンを日本に投入
レガシィに対抗してホンダが最初に投入したワゴンは、1991年に発売が始まった米国生産の「アコードワゴン」だ。
4代目アコードのプラットフォームをベースに、専用設計の高剛性ワゴンボディを構築。アメリカンな雰囲気のスタイリッシュなフォルムと、大きな開口のテールゲート、また荷物の量に応じてシートを別々に倒せる6:4分割可倒式リアシートなど、実用性の高さが特徴だった。
パワートレインは、2.2L直4 SOHCエンジンと、キメ細かなシフトパターンが得られるS(スポーツ)モード付4速電子制御ATの組み合わせ。アコードワゴンは、米国生まれであることを積極的にアピールしたことで、アメリカ風のスタイリッシュなモデルというイメージが出来上がり、人気獲得に成功した。
続いて上級ワゴンのアヴァンシア投入
アコードワゴンよりもワンランク上の上級なワゴンとして1999年のこの日デビューしたアヴァンシアは、セダンのような高級感と広い室内空間をコンセプトにして開発された。
米国生産のシビックのプラットフォーをベースに、4ドアにテールゲートを備えた高級感を意識させる流麗なフォルム。最大の特長は、ゆとりの車室空間であり、後席は大人がゆったりできるスペースを確保し、さらに前席の中央に空間を持たせることで前後席間のウォークスルーも可能としたこと。
パワートレインは、2.3L直4 VTECエンジンと4速AT、3.0L V6 VTECエンジンと5速ATの組み合わせ。駆動方式は、FFと4WDが用意され、前後ともダブルウィッシュボーンのサスペンションにより、高級セダン並みの乗り心地が実現された。
車両価格は、FF仕様で223.5万円(2.3L)/269.5万円(3.0L)、ちなみに当時の大卒の初任給は、19.7万円(現在は約23万円)程度なので、単純計算では現在の価値で261万円/315万円に相当する。
アヴァンシアの完成度は高く、アコードワゴンよりもワンランク上の層をターゲットにしたが、その魅力はユーザーには伝わらず、厳しい販売を強いられてしまった。
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圧倒的に広く快適な室内空間で上級ワゴンをアピールしたアヴァンシアだったが、当時のツーリングワゴンブームが求められたのは、高級感よりもレガシィのようなスポーティな走りとマルチパーパスな実用性、利便性だった。2003年には、国内販売を終了した。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。