キャンピングカーにクーラーは必需品! 夏が終わった今こそ、来年の「暑さ対策」を考える

2024年も全国で開催されているキャンピングカーショーは盛況だが、装備は年年変化しつつある。それは近年の日本の気候変動が大きく影響している。現在、マストになりつつあるキャンピングカーの装備とは?

キャンピングカーの「暑さ対策」を考える

キャンピングカーは「クルマ」というよりは、「アウトドアギア」や「家」といった価値観に近い。もちろん走るものだから走行性能も重要だが、ベース車はトラックやワンボックスカーなのでハイスペックというわけではない。それよりも、車中泊時の快適性が重要であり、居住空間のセンスや雰囲気が大切になってくる。

昨今のキャンピングカーは、居住空間のラグジュアリー化がさらに進んでいるが、加えて電装系の充実化というのも各社の謳い文句のひとつになっている。市場では100〜200Ahのリチウムイオンサブバッテリーを標準装備にするというのが定番化しているが、それで十分な電力かどうかはライフスタイルによって異なってくる。

住居スペースのラグジュアリー化が進む近年のキャンピングカー。

夜に煌々と明かりを点けて、たくさんの家電を使うスタイルであれば、200Ahでも足りないし、逆に自分のように照明は暗め、使うのはデジタルガジェット用電力くらいということであれば、105Ahのディープサイクルバッテリーで十分なのである。

だが、実際にオートキャンプをしてみると、現代の日本ではもっと考えなければならない装備があることに気づく。それは「暑さ対策」ギアだ。まず絶対に必要なのが、バンコンやキャブコンといったタイプに関係なく、換気ファンは装備した方がいい。

ファンは車内で調理するために必要と考える人が多いようだが、どちらかというと「空調」のためだ。ファンがあれば車内の熱気や湿気を素早く放出させることができるし、吸気モードが付いているファンなら扇風機代わりになる。

ファンを上手く活用すると、熱気や湿気を素早く放出し冷房効率が高まる。

また夏場だけでなく、冬も換気をしておけば、車内の結露を大幅に低減させることができる。結露防止は快適性につながるだけでなく、知らず知らずの内に車内に広がるカビの繁殖を防ぐことにもつながるのだ。

しかし、昨今の夏は35℃越えの酷暑が全国的に当たり前になった。夜になっても30℃を越えたままというのもザラで、ファンや車載扇風機を回すくらいでは寝苦しくて熟睡できないのである。

各タイプで長所と短所がある。クルマに合わせたチョイスが必要。

こういう状況を鑑みて、市場でスタンダードとなっているのがエンジン停止時の冷房設備だ。キャンピングカー用の冷房にはいくつかタイプがある。キャブコンやトレーラーで一般的なのが、家庭用100Vエアコンの装備だ。家に付いているものと同じで、室外機の設置や配管が必要になる。最近はバンコンでも採用されているモデルがある。

家庭用の100Vエアコンは冷暖房効率に優れるうえ、暖房が使えるのも利点の一つ。

このタイプは冷房だけでなく暖房も利かせることができ、また冷暖房効率も優れていると言われている。一方で、消費電力がそこそこ大きいため、サブバッテリーの蓄電量を考えてやらなければならない。

バンコンなどサイズが小さいモデルに採用される傾向にあるのが、12Vで稼動するクーラーだ。その名の通り冷房するだけのものだが、室外機がいらず、配管が容易というメリットがある。本体が小型で居住空間にデットスペースができないのも利点だが、消費電力はそこまで小さいと言えず、100Ahくらいでは4時間も動けばいいほうだ(もちろん外気温や設定温度によって異なるが)。

コンパクトな本体で省スペースで設置できる12Vのクーラー。冷房のみ使用できる。

最近ブームの「ポータブルクーラー」とは?

ここ2年ほどで、一気にユーザーの間に広がっているのが、ポータブルクーラーと言われる商品だ。ポータブルクーラーは、専用バッテリーやポータブル電源、サブバッテリーで稼働させることができる。車内に置いて、吸気、排熱用のダクトを車外に出せば使用OKの状態になる。商品によっては、冷暖房両用というものもある。

吸気、排熱用のダクトを窓などから車外に出せば使用できるので、他のタイプのエアコンより手軽に導入できる。

手軽だが性能はまずまずで、商品によっては12V用クーラーよりも利きがいいものもある。ただし、メーカーが謳っているほど消費電力は小さくなく、使用環境によっては3時間ほどしか使えない。また排水のための水タンクを用意しておかなければ、夜半に車内が大変なことになる。

どのタイプも外部電源設備を使って使用するのがベストだ。消費電力に関係なく使えれば、外気温が30℃を越えていても比較的スピーディに車内を快適温度まで下げることが可能だし、陽が出た朝の時間でも汗をかかずに済む。

ちなみに、35℃越えの昼間に使用テストを行っている動画がアップされていることがあるが、これも外部電源設備を使わなければナンセンスだ。冷却効率が十分に上がらないうちに、サブバッテリーやポータブル電源が終わってしまうのがおちだ。断熱対策がしっかりとしているキャブコンだとまた違うが、バンコンや軽キャンパーだと、車内と冷やしているのと同時に、車体が太陽光に熱せられ、まさにイタチごっこの状態に陥ってしまうのである。

バンコンや軽キャンパーでのパーキング用クーラーは、あくまでも夜の就寝時に使うものという割り切りが必要だと思う。またキャブオーバータイプのクルマは、エンジンの熱が車内に上がってくるため、就寝時までにエンジン熱を下げておくという工夫も、就寝時の快適度をアップさせることをお伝えしておく。

このように書くと、パーキング用クーラーの性能は限定的と誤解を受けるかもしれない。実際、ショーでユーザーの声を拾うと、「パーキング用クーラーと冷蔵庫はいらないよ」という人がかなりいるのである。だが、むしろこの2つこそマストで購入した方がいい。クーラーと冷蔵庫が、“沸騰状態”に入ったと言われる日本の夏の車中泊をどれほど快適にしてくれることか。

来年の夏も、日本の“沸騰状態”は続くだろう。

筆者も今年の夏、北は北海道、南は紀伊半島まで約1万kmの車中泊旅に出かけた。北海道でもだが、夜間も30℃越えという日が何日もあった。また、標高1000m近い場所でも夜の気温が高く、温度計が27℃を示していたことも珍しくなかった。これで少しでも風があればいいのだが、無風だととても寝ていられないのである。

ポータブルクーラーを導入してからは、快適のひと言。畜電力との闘いという問題はあったものの、RVパークなどを使えば朝までグッスリ。ウチは犬同行なので、クーラーがあるとないとでは、犬の疲れもまるで異なってくるのである。

前述の通り、最近はパーキング用クーラーを標準装備するキャンピングカーメーカーが増えてきた。できればこういったモデルを購入するのがいいのだが、予算の都合や車種の好みもあるだろう。だが、もし夏も車中泊を楽しみたいなら、クーラーの装備はマストと考えておいた方がいい。

このようにオシャレなクーラーもビルダーによって制作されているので、今から余裕をもって導入検討を始めてもいいかもしれない。こちららはフロットモビールが製作した「シュピーレン」用のパーキングクーラー。

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…