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■軽量FRオープンスポーツが特徴のカプチーノ
1991(平成3)年10月7日、スズキからFRのオープンスポーツ「カプチーノ」が発表された。FRスポーツの典型的なロングノーズ&ショートデッキのスタイリングに、ルーフ部はクーペ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンの4つの好みのスタイルが楽しめるのもユニークだった。
バブルが生んだ軽の2シータースポーツ“ABCトリオ“
1980年代には、“ハイソカー”と呼ばれるようなスポーティな高級車ブームが起こり、軽自動車でも高性能、高機能のクルマが人気を獲得した。そして、1980年代後半のバブル好景気の勢いに乗り1990年代初頭に3台の軽スポーツカー“ABCトリオ”がデビューした。ABCは、以下の車名のイニシャルをとったものである。
・“A”:マツダ・オートザム「AZ-1」(1992年9月~)
軽としては最初で最後(2024年現在)のガルウングドアを装備していることが最大の特徴。パワートレインは、スズキから調達した「アルトワークス」の最高出力64ps 660cc 直3 DOHCインタークーラー付ターボエンジンと5MTの組み合わせ。ミッドシップ(MR)レイアウトで、前後車両配分44:56を実現して俊敏走りを実現した。
・“B”:ホンダのMRスポーツ「ビート/BEAT」(1991年5月~)
ABCトリオの先陣を切って登場した軽初のMRの2シーターオープンスポーツ。パワートレインは、NAながらレスポンスに優れた高回転高出力の64ps 660cc直3 SOHCと5速MTの組み合わせ。MRらしい俊敏なハンドリング性と高回転型NAエンジンの伸びやかな走りがファン魅了した。
・“C”:スズキ「カプチーノ/CAPPUCCINO」(1991年10月~)
軽乗用車唯一のFRスポーツカー、詳細は後述。
FRながら最適な前後車重配分で俊敏な走りを実現したカプチーノ
ホンダのビートから遅れること5ヶ月、スズキはロングノーズ・ショートデッキの2シーターFRオープンスポーツのカプチーノを投入した。
スズキらしく軽量化にこだわり、ボンネットやリアパネル、フロアトンネルカバーなど可能な限りアルミや高張力鋼板を採用し、ABCトリオの中では最も軽量の700kgを達成。パワートレインは、アルトワークスの660cc 3気筒 DOHCターボエンジンと5速MTの組み合わせ。エンジンをフロントに縦置き配置するFRレイアウトと51対49の前後重量配分による俊敏な走りが自慢だった。
またカプチーノのルーフは、単なるソフトトップではなく、“4ウェイ・オープントップ”呼ぶユニークな装備を採用。これは、ルーフ部分を3ピース構造にして、分割式ハードトップを取り外すことによって、クーペ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンの4つの好みのスタイルに変更できる優れモノだ。
カプチーノの車両価格は145.8万円、当時の大卒初任給は17.3万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約185万円に相当する。ちなみに、オートザムAZ-1は149.8万円、ビートは138.8万円だった。
残念ながら発売時期がバブル崩壊と重なり、スポーツカー市場が冷え切ったため、1998年に生産を終えた。
MRのビートに対して実用性を重視したFRのカプチーノ
ホンダのビートは、エンジン横置きのMRでハイレスポンスの高回転高出力エンジンを搭載した典型的なスポーツモデル。一方のカプチーノは、エンジン縦置きのFRで中速トルクが太いターボエンジンを搭載して、実用性を重視しているのが特徴である。
それゆえ、カプチーノはビートに比べて、スポーツカーとしての面白みに欠けていたかもしれないが、運転しやすい余裕のある走りが体感できるスポーツモデルだった。
このように設計思想の全く異なる2つのモデルではあるが、それぞれの特有の楽しみ方はあり、それぞれに熱心なファンがついたのだ。
ユニークな軽スポーツのABCトリオだったが、開発時期はバブル期、しかし市場に登場したのはバブル崩壊時期と重なり、いずれも1代短期間で生産を終えてしまった。ただ、カタログから消えた後も長く中古車市場では高い人気を誇っているのだ。
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生産終了後も幾度となく、復活の噂が流れているカプチーノだが、現在は軽でなく1.3Lターボを搭載したコンパクトサイズのFRスポーツで2025年頃に復活する…という噂が流れている。真偽は定かではないが、復活を望んでいるファンは多いはず、復活の可能性に期待したい。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。