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■3ナンバーボディとなり豪華さをアピールした6代目シルビア
1993(平成5)年10月12日、日産自動車はスペシャリティカー、およびデートカーとして大ヒットした5代目「シルビア(S13型)」をモデルチェンジして6代目に移行することを発表(発売は10月26日)。ダイナミックなスタイリングの3ナンバーボディに変貌し、FRならではの爽快な走りに磨きをかけた。
走り自慢のFRクーペとして人気のシルビアの軌跡
シルビアは、1965年に高級スペシャリティカーとして誕生した。5代目までのシルビアの足跡を簡単に振り返ってみる。
・初代CSP311型(1965年~1968年):走る宝石と称された流麗なスタイリング
最大の特徴は、最先端の流体力学を取り入れた鋭角的に削ぎ落した多面で形成された“クリスプカット”の美しいボディライン。一方で、その流麗なスタイリングを実現するために、ボディの多くの部分を熟練工による手叩きで仕上げたために高額となり、販売台数は約4年で554台にとどまった。
・2代目S10型(1975年~1979年):北米重視のアメ車風フォルム
直線的な流麗なフォルムの初代に対して曲線を多用した躍動感のあるアメ車風フォルムに変貌。外観の大胆な変貌の割には、メカニズムに先進性が感じられず、元祖スペシャリティカーのトヨタ「セリカ」を意識したが、対抗馬にはなれなかった。
・3代目S110型(1979年~1983年):流行りの角型4灯ヘッドライトとセンターピラーレス
走りを重視したスペシャリティカーに相応しい直線基調のウェッジシェイプを採用。低いノーズラインと角目4灯のフロントマスク、傾斜したフロントウインドウ、リアのオペラウインドウが特徴。デートの際に女性からも好まれる“デートカー”の元祖的なモデルとして人気を獲得した。
・4代目S12型(1983年~1988年):リトラクタブルヘッドライトの白い稲妻
基本的なウェッジスタイルは先代を継承したが、フロントマスクは先代の角型4灯からリトラクタブルヘッドライトに変更。パワフルな走りは若者から人気を獲得したが、やや高額であったこともあり販売は伸び悩んだ。
・5代目S13型(1988年~1993年):華麗なフォルムと走りで魅了して大ヒット
シルビアの中で最も人気を獲得した5代目は、先代までの直線基調のイメージから一転、リトラクタブルヘッドライトを止めて曲線を取り入れたワイド&ローの流麗なスタイリングに変更。4WSなどの先進技術を搭載し、高性能エンジンを搭載したFRスポーツの走りは、FFが主流になりつつある中、その存在感は際立った。華麗なスタイリングとFR特有のスポーティな走りから、ホンダ「プレリュード」とともにデートカーの代名詞的な存在となったのだ。
シルビア史上、唯一の3ナンバーボディとなった6代目S14型
1993年のこの日登場した6代目シルビアは、歴代シルビア初の3ナンバーボディとなった。これは、1989年の税制改正によって、自動車税の税額が排気量のみで決まるようになったこと、またバブル経済の勢いもあり、シルビアもその流れに乗った形となったのだ。
スタイリングは、先代同様のロングノーズのクーペスタイルを継承しながら、先代より全長は50mm、全幅は40mm拡大し、全高は5mm高くなり、よりダイナミックになった。
パワートレインは、最高出力160ps/最大トルク19.2kgmを発生する2.0L直4 DOHC&220ps/28.2kgmのターボエンジンと、5速MTおよび4速ATの組み合わせ。エンジンには、高応答のNVCS(可変バルブコントロール)を搭載し、応答性に優れたボールベアリング式ターボの過給圧を電子制御するなど、出力とともに応答性の向上が達成された。
車両価格は、NA仕様が169.7万~226.6万円、ターボ仕様が239.8万~267.6万円。当時の大卒初任給は18.5万円程度(現在は約23万円)だったので、現在の価値ではNA仕様211万~282万円、ターボ仕様298万~333万円に相当する。
よりダイナミックにFRならではの走りが評価された6代目シルビアだったが、バブル崩壊やRVブームの到来などの逆風を受けて、先代とは一転、販売面では苦戦した。
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同時期にライバルのトヨタ「セリカ」も6代目へモデルチェンジした。シルビアと同じく3ナンバーボディに変更してスポーティさに磨きをかけたが、セリカも同じく苦戦を強いられた。そして、シルビアもセリカも次期モデルが最後となって、シルビアが37年間、セリカが36年間続いた名車の歴史に幕を下ろすことになったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。