ホープスターはジムニーの祖先を作っただけではなかった

ホープスター・ユニカー(1960)クーペのようなピックアップ【週刊モーターファン ・アーカイブ】

写真ではヘッドライトの奥まった造形としているが、その後ヘッドライトは手前に移設された。照射範囲の問題だったかもしれない。
独自のクルマづくりを進めるホープスターにあって、きわめて個性的なモデルがこのユニカー。軽トラックなのに、その出で立ちはクーぺ風(?)
作業用であっても、パーソナルユースを必要とする、当時のニーズが生み出した1台でもある。
週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。
解説●渡辺 陽一郎(モーターファン別冊 360cc軽自動車のすべて より 2015年刊)

第二次世界大戦の後、1950年代には複数の軽自動車メーカーが誕生した。ホープ自動車もそのひとつ。52年に3輪商用車「ホープスター」の製造と販売を開始して、その後も複数の軽自動車を手掛けた。

67年には軽自動車サイズのオフロード4WDとして「ホープスターON」を商品化したが、この時点でホープ自動車は経営に行き詰まっており、遊園地向けの乗り物などに力を入れるようになっていた。そこで「ホープスターON」の設計と製造権をスズキに譲渡。スズキが改めて設計を行ない、70年に初代ジムニーとして本格的に発売されている。

まさにファニーフェイス。精悍さよりも異なるキーワードをテーマとしていたに違いない。それほどまでに、可愛らしさを狙っているようにも見える。

この流れから分かるように、業績はいまひとつだったが、高い技術力を備えるメーカーであった。

ホープ自動車の商品の中で、特に注目されるのが60年に登場したユニカーだろう。それまでに手掛けた3輪商用車のノウハウを活かし、4輪の軽トラックを仕上げた。

僅か3mに全長を収めなければいけないのが、360cc軽自動車の宿命。しかし、 その制限のなかでいかに伸びやかに見せるかも腕の見せどころ。 1960年3月撮影。

特に個性的なのがデザイン。ボンネットの前端が下側に回り込み、ヘッドランプはその中に収まるように配置されているのがオリジナル。後にややヘッドランプを前進させるなど変更を受けるが、ボディを真横から眺めるとヘッドランプが見えない個性的なスタイルを持っていた。

エンジンはボディ中央の下側に搭載され、ボンネットまわりを自由にデザインできた。丸型ヘッドランプが少し中央寄りに装着されたボリューム感のあるフロントマスクは、49年に登場したサーブ92などを連想させる。フルホイールキャップも備わり、外観を乗用車風に仕上げた。

空冷2気筒のエンジンの冷却ファンには、カウルリングが装薦される。これによって、冷却風の流れを拡散させすに安定させているようだ。エンジンの単体重量は63kgと軽い。

エンジンは2サイクルの空冷直列2気筒で排気麓は356cc。最高出力は17ps(5500rpm)を発生した。3速MTにはシンクロナイザーも装着され、滑らかな変速操作が行なえた。サスペンションはフロント側が独立懸架、リヤ側はリーフスプリングを備えた車軸式だが、ラバーブッシュが装着されている。

荷台は長さが1205mmで幅は1140mm。エンジンをボディの中央に搭載したから、ボンネットは短めで、荷台に十分な寸法が与えられた。

簡素な室内だが、合理的でもある。ステアリングポストのカバーがその先端ではメーターパネルとなっている。

ユニカーにはバン仕様も設定され、バリエーションの拡大を図っている。

61年にはモデルチェンジを実施して、荷台の長さを1238mmに拡大。エンジンはロータリーバルプを備えたタイプに刷新され、15度傾けて搭載することにより、乗員に振動を伝えにくい配慮も施した。今ではほとんど語られることのないマイナーな軽商用車だが、独創的な技術が数多く採用されている。

ホープスター初の4輪車

ステアリングにはラック&ピニオン式を採用。また重欝配分(F:R)が空車時53:47、フル積載時が33.5:66.5と変化するためか、 フロントタイヤのキャスター角は3度と大きく取られている。最大積載量は350kg。

SPECIFICATIONS:Unicar (1960)

〈寸法重量〉
全長:2995mm
全幅:1280mm
全高:1450mm
車両重量:480kg 
乗車定員:2人
〈エンジン〉
空冷直立2気筒
ボア×ストローク:60.0×63.0mm
総排気量:356
最高出力:17ps/5500rpm 
〈トランスミッション〉
3MT
〈駆動方式〉
RWD 
〈サスペンション〉
前・独立式 後・リーフリジッド式 
〈タイヤサイズ〉4.50-12-4P
〈最高速度〉70km/h
〈価格・当時〉29.5万円

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