有人戦闘機とともに戦うAI制御の無人戦闘機たち!? 三菱重工が「戦闘支援無人機コンセプト」を発表

三菱重工ブースに展示された「戦闘支援無人機コンセプト」の模型。高度なAIを搭載し、有人戦闘機パイロットからの簡易な指示をもとに、「自分で考えて」戦うことが想定されている(写真/筆者)
10月16日から19日の日程で、東京ビッグサイトにおいて開催された『2024国際航空宇宙展』では、宇宙開発分野と並び防衛分野での出展も目立った。なかでも注目を集めたのが三菱重工ブースにて展示された「戦闘支援無人機コンセプト」の模型である。これは次期戦闘機に随伴・連携して、さまざまな任務を遂行する「AI制御の自律型無人機」であり、まさに未来の戦闘システムと言えるものだ。【自衛隊新戦力図鑑】
TEXT:綾野剛之(AYANO Takayuki)

将来の戦闘機は無人機を率いて戦う

現在、日本はイギリス、イタリアと共同で次期戦闘機の開発計画「GCAP(グローバル・コンバット・エア・プログラム)」を進めている。2035年頃の配備を目指すもので、日本ではF-2戦闘機の後継と位置付けられている(詳しくは本年8月18日の記事を参照。

イギリス防衛大手BAE社のブースに展示されていた次期戦闘機計画「GCAP」の模型。次期戦闘機は、複数の戦闘支援無人機を率いて戦うことが想定されている(写真/筆者)

GCAP戦闘機は、現役機(F-35など)の「次の世代」の戦闘機であり、ステルス性能はもちろん、より一歩進んだ能力・機能を持つことになる。そうした機能のひとつが「複数の無人機との連携(チーミング)」であり、無人機が偵察から戦闘まで幅広い任務を遂行することが期待されている。防衛省では、この無人機を「戦闘支援無人機」と呼び、実用化に向けた研究を進めている。

三菱重工の「戦闘支援無人機コンセプト」

では、今回展示された三菱重工の模型を見てみよう。ステルス性を追求した「のっぺり」としたデザインで、当然ながらコックピットは存在しない。模型の全長は、おおよそ1m強。1/10スケールであり、実機は11~12m程度になるようだ。「戦闘機に随伴する無人機」と聞くと小型なものをイメージしがちだが、F-35(約15m)やF-22(約20m)と比較しても、意外に大きい。三菱重工の担当者によれば、有人戦闘機と同じ武装(ミサイルなど)を搭載することを考えると、それなりの大きさの機体が必要とのことだ。

「戦闘支援無人機コンセプト」模型の下面。胴体中央の線はミサイルなどを収納するウェポンベイの開閉部と思われる(写真/筆者)

また、今回の展示では、役割(攻撃/偵察)ごとに主翼や兵装を変更するモジュール設計や、民生部品や民間生産技術の転用による生産性の向上といったアイデアも示されていた。場合によっては「使い捨て」にされる無人機だけに、機能性だけでなく低価格であることも重要なのだ。

コンセプトのひとつに「アトリタブル(損耗許容性)」が挙げられている。有人機と異なり、無人機は危険な任務で「使い捨てる」場合もある。使い捨てても惜しくない価格であることは、無人機にとって重要だ(写真/筆者)

なお、注意したいのは、本機は「三菱のコンセプト」であり、そのまま自衛隊に採用されるわけではないことだ。防衛省の戦闘支援無人機に向けた取り組みは、いまだ要素技術研究の段階であり、具体的な用途や性能の決定、そして機体設計は、まだまだ先の話となる(三菱重工は、要素技術研究のうち、AI開発などを受注している)。今回展示された模型は、現時点におけるアイデアのひとつ…と考えておくべきだろう。

戦闘支援無人機と併せて展示されていたのは、「使い捨て」を前提としたミサイル型の偵察ドローン。これはランチャーなどから発射するもので、三菱重工が2023年に開発を受注した「目標観測弾」のプロトタイプだろう。「ARMDC-20X」は、「Affordable Rapid prototype Missile Drone Concept(低価格・迅速用途試作ミサイル型ドローン案?)」の、社内2番目(「10」の次で「20」)の試作機体(X)という意味とのこと(写真/筆者)

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著者プロフィール

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綾部 剛之

軍事関連をメインとした雑誌/書籍の編集者。専門は銃器や地上兵器。『自衛隊新戦力図鑑』編集長を務めて…