三菱4WDスポーツ「GTO」がV6ツインターボ+4WD+4WSを搭載し398.5万円でデビュー【今日は何の日?10月25日】

三菱・GTO
三菱・GTO
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、三菱自動車のフラグシップスポーツの「三菱GTO」が誕生した日だ。GTOは、最高出力280psの高性能V6ツインターボエンジンを搭載した、最先端技術満載のスーパー4WD/4WSスポーツである。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄 三菱GTOのすべて、リトラクタブルヘッドライト車のすべて、20世紀スポーツカーのすべて、NSXのすべて、国産名車のすべて スペシャリティカー編

■V6 ツインターボ+4WD/4WSでGTOが復活

1990(平成2)年10月25日、三菱自動車から12年ぶりにGTOを名乗った「三菱GTO」がデビュー。280psの高性能V6ツインターボエンジンを搭載して、当時のスポーツカーとしては珍しいフルタイム4WDと4WSを組み合わせた先進技術満載のスーパースポーツとして注目を集めた。

三菱・GTO
三菱・GTO

先代にあたるスペシャリティカーのギャランGTO

1970年、三菱重工から分離独立して三菱自動車が誕生し、その年に新生三菱をアピールするイメージリーダーとしてデビューしたのが「ギャランGTO」だった。

三菱「ギャランGTO」
1970年にデビューした三菱「ギャランGTO」、スポーティなスタイルと走りで人気を呼ぶ

典型的なロングノーズ・ショートデッキに、シャープなダイナウェッジライン、リアは日本初となるファストバックにキュッと上がったダックテールのダイナミックなスタイリングが特徴だった。

エンジンは、最高出力100psの1.6L直4 SOHCのシングルキャブ仕様と110psのSU型ツインキャブ仕様、トップグレード「GTO・MR」には三菱初の1.6L直4 DOHCにソレックスを装着。GTO・MRは、最高出力125ps/最大トルク14.5kgmを発揮し、最高速度は200km/h超、0→400mは16.3秒と、文句なく当時最強の走りを誇った。

三菱「ギャランGTO」
1970年にデビューした三菱「ギャランGTO」、スポーティなスタイルと走りで人気を呼ぶ

スタイルも走りも時代の先端を走っていたGTOだったが、同時に登場したトヨタ「セリカ1600GT」などと比べると高価だったため大ヒットとはならなかった。しかし、それに値する十分な価値があると評価した走り好きからは、熱狂的な支持を集めた。

好調の三菱が投入したスーパー4WDを謳ったGTO

1970年に登場した「ギャランGTO」の販売終了から12年の時を経た1990年のこの日、新たにGTOを名乗った三菱GTOがデビューした。

三菱・GTO
三菱・GTO

1980年代、「パジェロ」や「RVR」などが大ヒットして三菱は好調期を迎え、さらにバブル景気の後押しもあり、その勢いに乗ってフラッグシップスポーツのGTOを投入。GTOは、実質的にはスタリオンの後継車だったが、車名はかつてスペシャリティカーとして多くのファンを魅了したギャランGTOを受け継いだのだ。

三菱・GTO
三菱・GTO

新型GTOは、ワイド&ローのZラインと呼ばれるダイナミックなボディに、曲面ガラスを使ったカプセル状のキャビンなどの斬新なエクステリアとインテリアを採用。エンジンは、最高出力225ps/最大トルク28kgmの3.0L V6 DOHC NA(無過給)と280ps/42.5kgmの同エンジンのツインターボ仕様で、最高出力は当時の出力自主規制値で最大トルクは他を圧倒するダントツのパワーを誇った。

三菱・GTO
三菱・GTOの6G72型エンジン

NA仕様の車両価格は333.5万円、高性能ツインターボ仕様は398.5万円。当時の大卒の初任給は、17万円(現在は約23万円)程度だったので、単純計算では現在の価値でNA仕様が約451万円、ターボ仕様が約539万円に相当する。

三菱・GTO
三菱・GTOのコクピット

ツインターボ仕様はかなりの高額ではあるが、次項に述べる最先端技術が搭載されていることを考慮すると、装備の割にはリーズナルブと言えた。

GTOが装備した数々の最先端技術

GTOには、高性能エンジンだけでなく、キャッチコピー“スーパー4WDスポーツカー”に相応しい多くの最先端技術が採用されていた。

三菱・GTO
三菱・GTOの4WSシステム

・フルタイム4WD+4WS
センターデフ式フルタイム4WDに加えて、車速50km/h以上で後輪を前輪と同じように操舵する4WSを使って、高速での旋回性能を向上。

三菱・GTO
三菱・GTOのESCとディスクブレーキ
三菱・GTO
三菱・GTOのフロントサスペンション
三菱・GTO
三菱・GTOのリヤサスペンション

・ECS(電子制御サスペンション)
走行条件に応じてフロントおよびリアの4本のショックアブソーバーの減衰力を3段階に制御。

・ベンチレーテッドディスク
フロントのブレーキは、対向4ピストンのアルミキャリパーに冷却性能に優れた大容量ベンチレーテッドディスク、リアもベンチレーテッドディスクを装着。

三菱・GTO
三菱・GTOの可変スポイラー

・アクティブ・エアロシステム
車速80km/h以上で前後スポイラーを可変化させ、揚力とダウンフォースを制御。

三菱・GTO
三菱・GTOのアクティブエキゾーストシステム

・アクティブ・エキゾーストシステム
スイッチによってマフラーの流入経路を変更し、排気音をノーマルモードとサイレントモードの2種に切替え可能。

三菱・GTO
三菱・GTOの6G72型エンジン
ホンダ「NSX」
1990年にデビューしたホンダ「NSX」

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GTOは、三菱の技術の粋を結集したスポーツモデルだったが、北米では評価されたものの国内では同時期に登場した「NSX」や「スカイラインGT-R(BNR32型)」のような旋風を巻き起こすことはできなかった。4WD+4WS化によって車重が重くなり、特にフロントヘビーだったために、軽快さが要求される日本市場では評価されなかったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…