ノート AUTECH CROSSOVERは休日が楽しみになるオールマイティ・スペシャリティカーだった!

いまコンパクトカー市場で人気を博している、日産「ノート」には様々なバリエーションが存在するが、その中でも独自の存在感を放っているのがコンパクトクロスオーバーの「ノート AUTECH CROSSOVER」だ。印象的な専用エクステリアによりSUVテイストに仕上げた一台…と捉えてしまうのは早計で、サスペンションや大径タイヤにより車高を上げた本格派のクロスオーバーだ。果たして、その走り味はどんな魅力を持っているのか。ワンデイドライブによって確認することにした。

REPORT:山本晋也(YAMAMOTO Shinya) PHOTO:井上 誠(INOUE Makoto)

Scene01:いきなりの高速道路で先入観が打ち砕かれた

高速道路では車高アップにネガがないことを確認。静粛性の高さにも驚かされた。

NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)の展開する「AUTECH(オーテック)」は、日産車をプレミアムスポーティに彩るブランドとして知られている。同ブランドのルーツを遡れば、日本においてメーカー直系カスタマイズという手法を生み出したオーテックジャパンにたどり着く。そうしたバックボーンもあって、伝統的なクラフトマンシップを感じることができるブランドとして認知されている。

そうしたAUTECHの名を冠するモデルは数多いが、その中でもある意味で異色の存在といえるのが「ノート AUTECH CROSSOVER」だ。

ノート AUTECH CROSSOVER
ノート AUTECH CROSSOVER

湘南生まれのブランドであることを示す、水面を思わせるエレガントな専用フロントグリルや、伝統のAUTECHブルーをアピールするエンブレムなどは、まごうことなくAUTECHファミリーであることを理解させるが、ノート AUTECH CROSSOVERでは専用サスペンションや大径タイヤを採用することで車高を25mmアップとしているのが特徴。名は体を表すというが、まさにクロスオーバー的な性能を与えられている一台なのである。

“海面の煌き”をモチーフにしたドットグリルが美しく輝く。

とはいえ、スプリングとショックアブソーバーともに専用設計とすることで車高を高めていると聞けば、「オフロード性能を高めたトレードオフで、オンロードではフワフワとした走り味になっている?」と、クルマ好きの諸兄であれば想像してしまうかもしれない。

そうした点をチェックすべく、いきなり高速道路から試乗をスタートさせることにした。試乗するのは、2024年5月にマイナーチェンジを遂げたばかりの最新のノート AUTECH CROSSOVER FOUR、つまり1.2L 3気筒エンジンが生み出した電力で前後モーターを駆動する電動4WDマシンである。

はたして、ノート AUTECH CROSSOVERは、想像とはまったく違う乗り味をみせてくれた。第一印象は、車高を上げていると感じられないくらいスタビリティは高い、というもの。走りはじめから先入観を打ち砕かれた。

試乗車には、日産自慢の先進運転支援システム「プロパイロット」がオプション装着されていたが、直進安定性は十分に高く、デフォルトのECOモードはワンペダル的に加減速のコントロールもしやすい。あえてプロパイロットを使わずに、自分でコントロールしたいと思ってしまうほど高速走行が気持ちよく、どこまで走っていきたくなる。

試乗車には高度な先進運転支援システム「プロパイロット」がオプションで備わっていたが、ハンドルやアクセルを操作したくなる走り味。
追い越し車線も余裕しゃくしゃくで走ることができるパフォーマンスを持つ。

Scene02:初めてのワインディングがこれほど楽しめるとは!

美しい景色よりもノート AUTECH CROSSOVERの走りが楽しかった。

あまりに高速道路が楽しいため、予定よりずいぶん先のインターチェンジまで走ってしまった。地図をみると、小説のタイトルになったこともある有名な峠道が近いようだ。あえてナビで目的地をセットせず、ただ山のほうに向かって気ままに走ってみることにした。

紅葉が進行中といった風景を見ながら、峠道への看板を見つけると、迷うことなくワインディングロードに入っていった。

初めて走る峠道は、大きなヘアピンコーナーが時折顔を出すなど、スポーツカーでも楽しめそうなコーナーが続く。それぞれの曲率も把握していないため、コーナーに進入してからハンドル操作でアジャストするようなシーンも多かったが、ノート AUTECH CROSSOVERはナチュラルで素直なハンドリングを披露してくれた。

今度はドライブモードをSPORTに切り替えてみる。ワンペダル的に加減速をコントロールできるのはECOモード同様だが、より加速が鋭くなり、減速も強くなった印象に変身。つまりリズミカルにワインディングを走り抜けるにはピッタリのモードだ。

そんな右足のコントロールにも、ノート AUTECH CROSSOVERの専用サスペンションは応えてくれる。大径タイヤといっても扁平率は60%となっているため、それなりにたわんでしまうはずだが、タイヤとサスペンションが絶妙にマッチしていることもあって、狙い通りのラインで走ることができる。少々オーバースピードだと感じてもアクセルを抜いて減速すれば、それをシャシーが受けとめてくれる懐の深さも、初めてのワインディングではありがたい。

SPORTモードを選べば、アクセル操作だけでコーナーに合わせた速度調整もバッチリしやすい。
試乗車は電動4WD、舗装路でもトラクションの優位性は実感できる。

Scene03:脇にある林道で+25mmのアドバンテージを実感

林道の入口ではロードクリアランスが余裕たっぷりであるメリットを実感。

そうしてワインディング走行を楽しんでいると、林道の存在を示す看板が目に入ってきた。

あまりにもスポーティなドライビングが楽しめているので、すっかり忘れてしまっていたが、ノート AUTECH CROSSOVERは25mm車高がアップしている。その実力を林道で試してみるか、とウインカーを出してみたが…。残念ながら林道は閉鎖されていて入ることはできない。

しかも入口付近は、未舗装のスペースで、なおかつ斜度の強いスロープ形状になっていて平坦ではない。このスペースで向きを変えるにしてもノートの床下やオーバーハングが干渉してしまうかもと思えるような状況だ。

おそるおそる姿勢を変えつつ、クルマを止めては運転席から降りて地面とのクリアランスを確認していたのだが、まったく干渉する気配はない。25mmという数字だけをみると”ちょっと上がった”と思ってしまうかもしれないが、リアルワールドでは明らかに余裕がある。

あらためて、これだけロードクリアランスを確保していながら、ワインディングで右に左にハンドル操作をしたときにロールが大きかったり、タイヤ接地感がスポイルされたりといったネガをまったく感じないのも、驚くポイント。これぞAUTECHのクラフトマンシップによる絶妙のセットアップといったところだろうか。

また、電動パワーステアリングについても専用セッティングになっているという。専用の大径タイヤの採用により、タイヤ幅が広がることで、アシスト量を増やし過ぎて、妙に軽々しいフィールになってしまうこともあるが、ノート AUTECH CROSSOVERについていえば、しっとりとした味付けでタイヤのわずかな変形を掌で把握しながらグリップを引き出すことができる。そうしたフィーリングには、専用のレザーステアリングも効いていることだろう。

専用セッティングとなった電動パワーステアリング、ブルーステッチの効いた本革ステアリングホイールともにしっとりとした乗り味を生み出している。
くねくねとしたタイトなワインディングでもロールは気にならない。

Scene04:タイトな湖畔の細道もスイスイと走ることができた

心のままにワインディングを下り切れば、そこは湖畔だった。

気持ちよくワインディングを走っているうちに下りきってしまった。そうして、市街地を通り抜けようと走っていると、湖の存在を知らせる看板があった。その矢印に合わせてウインカーを出し、到着したのは想像していたよりコンパクトで小さな湖だった。

せっかくなので湖畔にノート AUTECH CROSSOVERを停め、ひと息ついてみる。

試乗車はAUTECH CROSSOVER専用色のオーロラフレアブルーパール&スーパーブラックの2トーンカラー。あらためて眺めていると、やっぱりAUTECHブルーは水辺が似合う。

そして、ロードクリアランスの余裕がひと目でわかるほどでありつつ、全高が1545mmと機械式駐車場に対応するサイズであることのメリットがあることも思い出した。

さらにいえば、湖畔の道は狭く、場所によっては対向車とすれ違うことも難しいと思えるほどだったが、そんな道を走って湖を一周してもドライバーはストレスを感じなかった。

そう、ノート本来のコンパクトボディや取り回しの良さはクロスオーバー仕様であっても失われていない。

シーンを選ばない扱いやすさと、どこでも実感できる上質な走り味、それこそがノート AUTECH CROSSOVERの本質的な魅力といえる。クロスオーバー仕様でありながらも、走行シーンを問わないオールマイティなスペシャリティカーなのだ。

きっとオーナーになれば、毎週末の休日にノート AUTECH CROSSOVERを駆って、どこかへ出かけたくなるだろう。目的地への移動手段ではなく、移動自体までレジャーになる一台となること請け合いだ。

やっぱりAUTECHブルーは水辺がよく似合う。
湖畔の道は、すれ違うにはギリギリの道幅。全幅1700mmとコンパクトかつ見切りもいいのでタイトな道もするすると走れる。

NOTE AUTECH CROSSOVER Specification

「ノート AUTECH CROSSOVER FOUR」主要諸元
全長×全幅×全高:4110mm×1700mm×1545mm
ホイールベース:2580mm
最低地上高:165mm
車両重量:1370kg
最小回転半径:5.2m
タイヤサイズ:195/60R16 89H
乗車定員:5名
メーカー希望小売価格:306万3500円

ノート AUTECH CROSSOVER 公式サイト

※持込み登録でNMC扱いとなります。
登録時の車両重量等は実測値が適用されますので、主要諸元(設計値)とは異なる場合があります。
登録ナンバーは、全車5ナンバーとなります。

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専用セッティングとなった電動パワーステアリング、ブルーステッチの効いた本革ステアリングホイールともにしっとりとした乗り味を生み出している。

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試乗車には高度な先進運転支援システム「プロパイロット」がオプションで備わっていたが、ハンドルやアクセルを操作したくなる走り味。

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高速道路では車高アップにネガがないことを確認。静粛性の高さにも驚かされた。

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ワインディングを力強く登るノート AUTECH CROSSOVER FOUR

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SPORTモードを選べば、アクセル操作だけでコーナーに合わせた速度調整もバッチリしやすい。

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くねくねとしたタイトなワインディングでもロールは気にならない。

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試乗車は電動4WD、舗装路でもトラクションの優位性は実感できる。

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美しい景色よりもノート AUTECH CROSSOVERの走りが楽しかった。

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心のままにワインディングを下り切れば、そこは湖畔だった。

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湖畔の道は、すれ違うにはギリギリの道幅。全幅1700mmとコンパクトかつ見切りもいいのでタイトな道もするすると走れる。

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著者プロフィール

山本 晋也 近影

山本 晋也

1969年生まれ。編集者を経て、過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰することをモットーに自動車コ…