日本導入はあるのか!? 三菱エクスフォースはRVRの後継モデルとなるコンパクトSUVだが日本円換算だとエクリプスクロスより高くなる?

日本車が大きなシェアを持つことで知られるインドネシアで、2024年7月18日~28日の期間、国際モーターショー「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024(GIIAS2024)」開催された。会場を筆者が巡り、出会った日本には日本車たちを紹介したい。今回はまことしやかに日本導入も噂される三菱エクスフォースをピックアップ!
REPORT&PHOTO:大音安弘(OHTO Yasuhiro)

RVRの後継モデルとなるコンパクトSUV

今回のインドネシア取材で、実車確認をしてみたかった一台のひとつが、三菱のコンパクトSUV「エクスフォース」だ。三菱車として、久しぶりの新型小型車であると共に、同地で生産されるご当地三菱車であるからだ。

「ガイキンド インドネシア国際オートショー2024(GIIAS2024)」の三菱ブースに展示されたエクスフォース。

前回となる2023年8月開催の「GIIAS2023」でワールドプレミアが行われ、インドネシアの発売を皮切りに、既にベトナムやフィリピンなどのアセアン地域への導入を開始。南アジア、中南米、中東、アフリカにも導入が予定されている世界戦略車なのだ。サイズ的にはRVRに近いため、海外の地域によっては、そのポジションを受け継ぐモデルとなるが、日本での展開は現時点では未定だ。

日本では2024年2月に生産終了、9月に販売終了となったRVR(3代目)。三菱ASXとして2023年から販売されているルノー・キャプチャーのOEM車が、一応4代目にあたるのだが……

三菱SUVに通じるエクステリア

エクスフォース「アルティメイト」。シャープなT字型ライトデザインを用いた新たなダイナミックシールドデザインがカッコイイ。

インドネシアで初対面したエクスフォースの第一印象は「カッコイイ」の一言だ。「Silky&Solid」をコンセプトに、優雅さと堅牢性を融合させたスタイリッシュかつ力強い本格的なSUVデザインに仕上げたという。

エクスフォース「アルティメイト」。テールランプもT字型デザインを採用し、シャープでスポーティな雰囲気。

特に印象的なのが、ダイナミックシールドを進化させたフロントマスク。個性的なT字型ヘッドライトを与えつつ、グリルガードを彷彿させるプロテクション付きバンパーと逆スタント形状大型グリルが、タフさとスポーティさを融合させ、クールなSUVであることを印象付けている。他のダイナミックシールドデザイン同様にインパクトは有るが、癖は弱められた印象だ。

ダイナミックシールドを進化させたフロントマスク。バンパーはプロテクション付きのようなデザイン。

マッチョなフェンダーアーチも印象的で、サイドビューも丁寧な造形でSUVらしいタフさを表現。その一方で、ルーフラインとガラスエリアは傾斜を強くしてクーペルックに仕上げることで、都会でも似合うシティクロスオーバーにも仕上げてある。

エクスフォース「アルティメイト」。サイドビューは、フェンダーのボリュームを強調したマッチョなデザインだ。

そのボディサイズは、全長4390mm×全幅1810mm×全高1660mmで、ホイールベースが2650mmとなっている。因みにRVRが全長4365mm×全幅1810mm×全高1640mm、ホイールベースが2670mm(※日本仕様)なので、ほぼ同等であることが分かる。

車名(仕様)エクスフォース(インドネシア)RVR(日本)
全長4390mm4365mm
全幅1810mm1810mm
全高1660mm1640mm
ホイールベース2650mm2670mm
最小回転半径5.2m5.3m
車重1245kgFF:1380kg
4WD:1450kg
エクスフォースとRVRのサイズ比較(RVRは「G」グレード)
「ブラックファントム」は、米国ソーラーガード社のウィンドフィルム。
リヤバンパーもプロテクション風の意匠となっている。
テールゲートデザインもフロントマスク同様に逆スラント。
リヤテールも、ヘッドライト同様のT字型デザインとなる。

先進性と現代的な機能とコンサバティブな操作系が同居するインテリア

ダッシュボードパネルは、三菱車初のメランジ生地が使われている。

インテリアも現行型三菱車の中では最もモダンなデザインに仕上げられている。ダッシュボードデザインは、パッド素材には三菱車初のメランジ生地が使われており温かみや触感も良い。8インチのデジタルメーターパネルと12.3インチのインフォテイメントディスプレイも一体となるデザインとなっていて先進感もある。

センターディスプレイとメーターパネルを一体化させたデザインのコクピット。

ボタン類は減らされているが、エアコン操作スイッチやモード切替、ATシフトレバーなど運転中に操作が必要となる機能については、しっかりとボタン類が残されているのもSUVらしい拘りだろう。

ステアリングのスイッチ類もオーソドックスなレイアウト。最新のADAS操作系を備える。
往年のデジタルメーターを彷彿させるデザインのメーターディスプレイは8インチ。
ソフトレバーはオーソドックスなストレートタイプ。シフトレバーを中心に左にパーキングブレーキスイッチ、右奥側にプッシュスタートスイッチ、右手前側にドライブモードセレクターを配置。
エアコン操作パネルは物理スイッチで、温度調節はトグル式。その下にシガーソケット電源とUSB電源を備え、その下のトレイはワイヤレスチャージャーになっている。

シートもホールド性の良さそうな造形で、触感や座り心地も良好。これならば悪路走破時も快適だろう。内装においても質感は高く、お手頃な新興国向け車という雰囲気はないことにも驚かされた。

ホールド性に優れるスポーティなデザインのフロントシート。
足元のゆとりもしっかり確保されたリヤシート。
ラゲッジルーム。リヤシートは4対2対4の分割可倒式で、中央シートバックはドリンクホルダー付きのアームレストを兼ねる。
展示車の「アルティメイト」はハンズフリーオートマチックテールゲートが備わる。

優れた悪路走破性を予感させるドライブトレイン

パワートレインは1タイプのみで、ガソリン仕様の1.5L直列4気筒DOHC MIVECエンジンにCVTを組み合わせる。最高出力105ps/6000rpm、最大トルク141Nm/4000rpmの実用スペックとなっている。1.8LのRVRよりも非力だが、その分車重も約200㎏も軽い1245㎏に留められているので、動力性能にも不足はないだろう。駆動方式は前輪駆動のみとなっている。

エンジンルーム。1.5L直列4気筒DOHC MIVECエンジンを横置きに搭載するFF車。トランスミッションはCVTを採用。
車名(仕様)エクスフォース(インドネシア)RVR(日本)
エンジン4A91型
1499cc水冷直列4気筒DOHC16バルブ
4J10型
1798cc水冷直列SOHC16バルブ
最大出力105ps(77kW)/6000rpm139ps(102kW)/6000rpm
最大トルク141Nm/4000rpm172Nm/4200rpm
燃料タンク42LFF:63L
4WD:60L
駆動方式FFFF/4WD
トランスミッションCVTCVT
ブレーキ前後:ディスク前:ベンチレーテッドディスク
後:ディスク
サスペンション前:マクファーソンストラット
後:トーションビーム
前:マクファーソンストラット
後:マルチリンク
タイヤサイズ225/50R18225/55R18
エクスフォースとRVRのパワートレイン比較(RVRは「G」グレード)
タイヤサイズは225/50R18で、展示車両はダンロップ・スポーツマックス060を装着。

三菱伝統のSUV機能は、しっかりと開発で活かされており、最低地上高は222mmを確保。FF車ではあるものの、アプローチアングル:21.0°、ランプブレークアングル:20.5°、デパーチャーアングル:30.5°としており、しっかりと悪路走破を意識した基本設計が盛り込まれている。

車名(仕様)エクスフォース(インドネシア)RVR(日本)
最低地上高222mm205mm
アプローチアングル21.0°20.1°
ランプブレークアングル20.5°18.9°
デパーチャーアングル30.5°31.4°
エクスフォースとRVRの悪路走破性参考数値(RVRは「G」グレード)

走行性能では、路面状況に合わせて「ウェット」「グラベル」「マッド」が選べるドライブモードに加え、往年のパジェロに備わっていた3連メーターをデジタルで表現したマルチメーター表示機能を持ち、高度、前後左右傾斜、方角などの表示も可能としている。このように、三菱SUVのノウハウをしっかりと盛り込んだ仕様となっている点も見過ごせないところだ。

シンプルな2グレード構成で現地価格は?

グレード構成は、「エクシード」と「アルティメイト」の2種類。展示車は全て最上位の「アルティメイト」である。アルティメイト専用装備としては、12.3インチの大型インフォメーションディプレイ、ドライブモード、スマートフォンワイヤレスチャージャー、有害物質を抑制するナノイーX機能、ハンズフリーオートマチックテールゲートなどがある。

12.3インチの大型インフォメーションディプレイを採用したインストゥルメントパネル。

そして、アルティメイト装備の目玉のひとつとしてヤマハと共同開発したオーディオシステム「ダイナミックサウンドヤマハプレミアム」がある。展示車で音楽の視聴が行えたが、割とよい音を奏でていた。もちろん、先進安全運転支援機能は全車標準化されているなど、なかなかの充実ぶりなのだ。

12.3インチスマートフォンリンクディスプレイオーディオを装備。
ドアにはヤマハのコアキシャルタイプの2ウェイスピーカーを搭載。

気になる現地価格は「アルティメイト」が4億1490万ルピア(約402万円)、「エクシード」が3億8190万ルピア(約391万円)と、なんと日本のエクリプスクロスのガソリン車の最上級グレード「P」(330万円)よりも70万円ほど高い価格であることが判明。充実の装備内容にも納得しつつ、この価格差と内容ならば最上位「アルティメイト」が断然お買い得だと思った。

内容的には前任車となるRVRよりもトータル性能を大きくアップデートしたエクスフォース。その守備範囲は新興国だけでは収まるものではない。もちろん、母国日本での活躍だって期待できる。ただ現地価格を考量すると、かなり日本では戦略的な価格とすることが求められるだろう。他国展開を含め、今後を見守っていきたいエクスフォースである。いずれにせよ、私の中にある新たな三菱車への期待を大きく膨らませてくれたことは間違いない。そう断言できるだけの感触を持ったファーストコンタクトであった。

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著者プロフィール

大音安弘 近影

大音安弘

1980年生まれ、埼玉県出身。幼き頃からのクルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者へ。その後…