【前編】実際に買ってわかった! キャンピングカー選びと車中泊生活の本当のトコロとは?

検討期間10数年を経て、ついに愛車となるキャンピングカーを決定した筆者。新たなキャンピンカー生活には、これまでの価値観を変える様々な体験が待っていたのである。

TEXT&PHOTO:山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)

とにかく目移りがすキャンピングカー選び、決めては何か?

タウンエースバンをベースにした、フロットモビールの「シュピーレン」は全長4045mm×全幅1665mm×全高1900mm。街中でも扱いやすいサイズが魅力だ。

キャンピングカーが欲しいなと思い始めたのは、もう10年以上前のことである。しかし、23区内に住む筆者は、駐車場の都合から複数台持ちができない。それゆえ、何となくキャンピングカーに替えるのを先送りにしていた。

いよいよキャンピングカー購入に踏み切ったきっかけは、やはり愛犬が家に来たことだ。犬と一緒に泊ろうとすると、宿泊施設の数は限られるし、宿泊費も高い。場所によっては、対応宿泊施設ゼロということも珍しくないのである。

さらに、犬を車内で待たせておくにも、“普通”のクルマだと設備が十分ではない。夏などは窓を開けて扇風機を回しておくという手もあるが、昨今の酷暑を考えるとこれは安全とは言えない。あれこれを考えると、やはりキャピングカーということになった。

愛犬もキャンピングカーを気に入っているようだ。

そして選んだのが、フロットモビールの「シュピーレン」というバンコン。選んだ理由は、装備がシンプルで使いやすいこと。つまり汎用性が高そうだったからである。業界で様々なモデルを見ていると、とにかく目移りがする。

どれもビルダーの独創的なアイデアとセンスが詰め込まれており、これはいいな!と思ってしまうのである。そこで、この10数年で一番最初に「いいね」と思ったモデルを購入することににしたのである。

筆者が選んだのは愛犬と過ごすのにピッタリの仕様

まず排気量が1500ccなので、軽自動車よりも長距離移動がラクだ。もちろん、車内空間も軽よりも広い。加えて、自動車税の安さも助かる。ベースが4ナンバー(登録は8ナンバー)なので毎年の車検だが、それを考えても3ナンバーよりも格安だし、1ナンバーではないので高速料金でのメリットもある。

さて筆者が選んだ仕様は、3シートバージョン。後席はバタフライシートが1席、あとは横向きシートが付いたタイプだ。特に同乗者を乗せる機会がないため、自分と犬が快適に使えればいいという頭しかなかった。

フロットモビールの「シュピーレン」の3シートバージョンは、助手席側の後席がバタフライシートとなり、あとは横向きのシートでフルフラットにすることができる。

加えて購入した車両には、105Ahのディープサイクルサブバッテリー、走行充電システム、外部電源システム、換気ファン、これにベッド&シート、シンクを装備。

さてシュピーレンを実際に使ってみると、後部はほぼベッドのまま。なぜなら、フルフラットなら犬が車内を歩きやすいからだ。また犬が寝たい場所で寝ることができる。第二にベッド下を収納スペースとして活用できることも、シートに戻さない理由だ。

愛犬の過ごしやすさを考えて、基本的にはフルフラットの状態にしている。

通常の状態でもフロア分は荷物を積めるが、その上に荷物を積み上げていくのは形状などが影響するから難しい。だが、フラットなベッドになれば、さらにその面積だけ安定して荷物が積むことができる。

ではベッドのままではどこでくつろぐのか…と思うだろうが、これはサイドオーニングを付けることで解決している。オーニングに下にテーブルとチェアを置けば、天候にかかわらずその下がダイネットになる。

設営が簡単なサイドオーニングを取り付けているので、車外をダイネット(食事などをするスペース)として活用している。

ベッド下には、コンテナボックス2個、ポータブル冷蔵庫、簡易トイレ、そしてペット用品を収納している。その他、生活に必要なものは、備え付けの収納スペースにしまうようにした。シンクは基本的に使わず、ここは蓋をして、1000Wのポータブル電源を置いている。

筆者の車両にはインバーターを付けなかったので、100Vがそのまま使えない。駐車中にガジェットなどを充電するためには、ポータブル電源があった方が便利だろうと思ったためだ。これが大正解で、夜間照明用や空調用電力はサブバッテリー、その他の電力はポタ電からと明確に分かれているので、結果的に電力の管理がしやすい。

ベッド下のスペースに収納や冷蔵庫があるので、就寝スペースを広く使うことができる。

クーラーは必須アイテム、どのタイプを導入するか悩む

さて、この夏は昨年を上回る酷暑だったため、ついには換気扇と扇風機のみでは耐えられなくなった。そこでパーキングクーラーの追加を考えたのだが、キャブコンならその追加も比較的容易だが、バンコンは取り付けに条件が出てくる。

まず100V家庭用エアコンを装備するのは、室外機をどこに置くかを考えなければならない。12Vクーラーならまだ現実的と言えようが、吸排気の配管やドレンホースも取り回さないとならない。フロットモビールではシュピーレン専用のクーラーを開発したが、車内レイアウトが変わってしまうため、今回は装着を見送った。

結局、愛車に装備することになったのが、エコフローの「WAVE2」。いわゆるポータブルクーラーというタイプの商品だ。SNSや投稿動画でもっとも評価が高かったので購入した。本体と併せて、専用のバッテリーも買ってみた。これについても、実際に車中泊をしてみると、いろいろなことが分かってきた。

ポータブルクーラーは、エコフローの「WAVE2」を選択した。

独創的なアイデアとセンスが詰め込まれた「シュピーレン」に満足

さて、今回の自分のキャンピングカー選びについて点数を付けるとしたら、85点といったところだろうか。評価する部分は、やはり使いやすさ。どこも丁寧に作られていて、アイデアも盛り込まれている。

例えば就寝時に冷たい飲み物が飲みたいと思った時、最後部の小さなベッドマットを取り除けば、ちょうどその下にポータブル冷蔵庫があるといった風だ。使う身になって考えられているなと、使うほどに実感する。

加えて、ベッド展開の容易さがいい。最近は後席にREVOなどのバタフライシートを使うバンコンが一般的だが、車内を完全フルフラットにする前に疲れてしまう…というほど行程が煩雑なモデルが少なくない。マットも重くて、並べるのに息が上がってしまうくらい。

備え付けの家具はシンプルで使いやすい。

その点、シュピーレンは非常に分かりやすく、作業もイージー。その点だけでも、このモデルにして良かったとつくづく思う。筆者はベッドにしっぱなしだが、毎日シートに戻すなら、この簡単さは大きなポイントになるはずだ。

家具のコンパクトさも美点であった。ゴージャスな家具がダメというわけではないが、タウンエースバンのように車内空間が限られていると、収納スペース以外はやはりデッドスペースになる。1人+1匹とはいえ、やはり就寝スペースはできるだけ広い方が快適なのだ。

ハイエースのロングワイドハイルーフベースくらいのバンコンなら空間に余裕もあるが、実際に使ってみると装備が多いほど居住空間が圧迫されることが分かった。できるだけシンプルな装備の方が、自分の使い方に合わせて拡張しやすいのである。

さて、納車から3か月で約1万kmの車中泊旅に出かけたが、そこで改めてキャンピングカー選びのポイント、そして日本での車中泊旅の現実を思い知ることになる。

(続きは後編へ)

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著者プロフィール

山崎友貴 近影

山崎友貴

SUV生活研究家、フリーエディター。スキー専門誌、四輪駆動車誌編集部を経て独立し、多ジャンルの雑誌・書…