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■R33型スカイラインに4WDモデルが追加
1993(平成5)年11月8日、日産自動車の9代目「スカイライン(R33型)」の約2ヶ月遅れで4WDモデル「GTS-4」が追加された。狭い室内空間が不評だったR32型の反省を踏まえて、R33型は3ナンバーボディのGTカーとなり、さらに安定した高速走行を実現する4WD(アテーサE-TS)モデルが登場したのだ。
R32型スカイラインGT-Rで採用されたアテーサE-TS
スカイラインの走りの象徴として設定されたGT-Rは、1969年の3代目“ハコスカ”で初めて設定され、その後短命ながら4代目“ケンメリ”でも設定された。が、その後はスカイラインGT-Rの名はしばらく封印された。
スカイラインGT-Rが復活したのは、1989年にデビューした8代目(R32型)である。その3ヶ月後に、最高出力280ps/最大トルク36kgmを誇る2.6L直6 DOHCエンジン(RB26DETT)を搭載した待望のスカイラインGT-Rが登場したのだ。
久しぶりに復活したR32型GT-Rの目標のひとつは、圧倒的な速さでレースに勝つことだった。そのためには、レース用にハイチューニングされたRB26DETTのハイパワーをフルに路面に伝える4WDシステムが必要だった。
そこで開発された4WDシステムが、“アテーサE-TS”である。これは、後輪駆動をベースに走行条件に応じて前輪トルクを配分する湿式多版クラッチを使った“電子制御トルクスプリット4WD”方式である。通常のトルク配分は0:100の後輪駆動だが、路面状況や走行状態に応じて4輪駆動の50:50まで、自動的に連続制御を行う。その結果、コーナリング時のオーバーステアやアンダーステアを回避して、GT-Rのようなハイパワーモデルでも安定した高速コーナリングが実現できるのだ。
3ナンバーボディで走りと快適性を両立させたR33型
1957年に誕生して一世を風靡したスカイラインも、7代目(R31型)や8代目(R32型)を迎える頃には人気は徐々に下降線を辿っていた。かつての輝きを取り戻すべく1993年8月に登場したのが、9代目(R33)スカイラインである。
R33型の特徴は、ボディを3ナンバーに拡大して、余裕の車室空間を持ったGTカーへと変貌したこと。ボディタイプは、先代同様4ドアセダンとクーペが用意され、やや丸みの帯びたスタイリングが採用された。
エンジンは、4気筒が廃止されすべて6気筒に統一し、2.0L直6 SOHCと2.5L直6 DOHC、同ターボで最高出力250ps/最大トルク30kgmを発揮するエンジンの3機種を設定。組み合わされるトランスミッションは、5速MTと4速および5速ATである。
高性能エンジンと4輪マルチリンクサスペンションや一部グレードで採用されたスーパーHICAS(4WS)などの効果で、優れた走りとフットワークを実現。しかし、バブル崩壊による厳しい市場環境の逆風は如何とし難く、GTカーとして完成度を高めたR33型の販売も苦戦を強いられた。
スカイラインにもアテーサE-TS
R33型スカイラインデビューの3ヶ月後、上記のR32型スカイラインGT-Rで開発されたアテーサE-TSを搭載したGTS-4が追加された。GTS-4は、2.5L直6 DOHCエンジン搭載の4ドアセダンと2ドアクーペそれぞれに設定された。
車両価格は、4ドアセダンが300.2万円(5速MT)/309.9万円(4速AT)、2ドアクーペが301.8万円(5速MT)/311.5万円(4速AT)。当時の大卒初任給は、18.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でセダンが375万円/387万円、クーペが377万円/389万円に相当する。
ほぼ同一仕様のクーペ(アテーサE-TS未装備)が、241.3万円(5速MT)/255.0万円(4速AT)なので、アテーサE-TS装備によって価格は60万円ほど高くなっている。
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FRと4WDのいいとこ取りのアテーサE-TSは、レースでは多少のトラブルはかかえたものの、最強エンジンRB26DETTの強さを発揮して連戦連勝し、新たなGT-R伝説を作り上げた。希少となったハイパワーモデルだが、速さを追求しつつ安全性に運転を楽しむためには、高度に制御される4WD技術はすでに不可欠となっているのだ。
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