トヨタのマイクロカー、iQのチューニング版「iQ GRMN」が197.2万でデビュー【今日は何の日?11月13日】

トヨタ・iQ GRMN
トヨタ・iQ GRMN
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日11月13日は、トヨタのユニークなマイクロカー「iQ」をGR(GAZOO Racing)がチューンナップした「iQ GRMN」が誕生した日だ。専用のサスペンションやリアブレーキをディスク化するなどして、スポーティなマイクロカーiQを作り上げたのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・iQのすべて、clicccar

■iQ GRMNが100台限定で販売

2009(平成21)年11月13日、トヨタは全長が3000mmに満たないマイクロカー「iQ」をベースに、GR(GAZOO Racing)がチューンナップした「iQ GRMN(GAZOO Racing tuned by Meister of Nürburgring)」を限定100台で販売した。iQ GRMNは、2007年にスタートしたスポーティなコンプリートカーを作り上げるGRプロジェクトの第1弾である。

トヨタ・iQ GRMN
トヨタ・iQ GRMN

遊び心満載の新世代マイクロシティカーiQ

iQが初めて登場したのは、2007年のフランクフルトモーターショーと東京モーターショーだった。世界中でCO2削減が叫ばれる中でトヨタが提案したのが大胆なダウンサイジングであり、超コンパクトカーのiQコンセプトだった。

トヨタ「iQ」
2008年に誕生した個性的なスタイリングで注目されたマイクロカー、トヨタ「iQ」

翌2008年11月に発売されたiQの個性的なコンパクトボディは、市場からは大きな驚きをもって迎えられた。全長2985mm/全幅1680mm/全高1500mmは、軽自動車に比べて全長は410mm短いが、全幅は205mmも広いという、ユニークかつダイナミックなスタイリングで、異形のヘッドライトや運転席の扇形のセンターパネルなども目を引いた。

室内は前席がセパレート式、後席がベンチ式のレイアウトで、助手席を前方にセットすれば、大人3名と子供1名が無理なく乗れる室内スペースを確保。またシートは、新素材を採用しており、車重が900kgを切る軽量化にも成功した。

トヨタ「iQ」
2008年に誕生した個性的なスタイリングで注目されたマイクロカー、トヨタ「iQ」

パワートレインは、最高出力68ps/最大トルク9.2kgmの1.0L直3 DOHC(欧州向けには1.3Lガソリンと1.4Lディーゼルも用意)と電子制御CVTの組み合わせ。その後、2009年8月からは日本にも欧州仕様の94psの1.3L直4 DOHCエンジン搭載車が追加された。

車両価格は、標準グレードで150万円。販売台数は決して多くはなかったが、多様性が求められる時代に他に類を見ない個性的なコンセプトiQは、将来に向けて一石を投じたモデルとして大きな注目を集めた。

GRMNはトヨタのレーシングスピリットを注入するブランド

トヨタ「iQ GRMN」
トヨタ「iQ GRMN」の全長は軽より410mm短い

GRMN(ガズーレーシング チューンドバイ マイスター・オブ・ニュルブルクリンク)を説明しよう。GR(GAZOO Racing)は、トヨタの社内カンパニーであり、また同社がモータースポーツで培った技術を展開するブランド名である。またMNは“Meister of Nurburgring(ニュルブルクリンク・マイスター)”の略で、トヨタのマスタードライバーだった成瀬弘氏に代表されるニュルを舞台に活躍する熟練の技術者を指す。

トヨタ「iQ GRMN」
トヨタ「iQ GRMN」全長は短いが、車幅は軽より205mm広い

したがってGRMNは、そういった生えぬ抜きの熟練の技術者が開発したコンプリートカーのブランドを意味する。

ちなみに、GRシリーズを性能の高さで並べると、究極のスポーツモデルに君臨するのが“GRMN”、その下に位置するのが操る歓びを日常的に実感させる本格スポーツ“GR”、そして走りを楽しむエントリースポーツモデルの“GRスポーツ”に棲み分けされる。

GRMNを冠したモデルは、究極のチューンナップが施され、これまでに販売されたのは、今回の「iQ GRMN」と「iQ GRMN スーパーチャージャー」、「マークX GRMN」、「86 GRMN」、「ヴィッツGRMN」、「ヴィッツ GRMN ターボ」、「GRMNヤリス」がある。

トヨタ「ヴィッツGRMNターボ」
2013年に登場したトヨタ「ヴィッツGRMNターボ」
トヨタ「86 GRMN」
2015年に登場したトヨタ「86 GRMN」
トヨタ「GRMNヤリス」
2022年に登場したトヨタ「GRMNヤリス」

マイクロカーながら走りを極めたiQ GRMN

2009年11月この日、iQ GRMNの販売が100台限定で始まった。GRによりトヨタのモータースポーツの技術力を結集して作られたマイクロホットハッチiQ GRMNは、2ヶ月前に追加された1.3Lエンジン搭載のiQ 130Gをベースにしている。

トヨタ・iQ GRMN
トヨタ・iQ GRMN

iQ GRMNには、専用チューニングサスペンション(約30mmダウン)、16インチアルミホイール、強化ブレース、タコメーター、アルミペダル、リアルーフエクステンション、エンブレム“GRMN”、ドアスカッフエンブレム“GRMN”が標準装備され、オプションとしてフロントバンパースポイラー、フロントフォグランプ、サイドマッドガードなどが用意された。

パワートレインは、最高出力94psの 1.3L直4 DOHCエンジンと6速MTの組み合わせ。FFレイアウトで車重950kgの軽量ボディでパワフルな走りをアピール。車両価格は、ベースの130Gの160万円より37.2万円高い197.2万に設定されたが、発売からわずか1週間で予定台数の100台を完売した。

トヨタ・iQ GRMN SC
2012年にはスーパーチャージャー版も登場した
トヨタ・iQ GRMN SC
2012年にはスーパーチャージャー版も登場した

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トヨタだけでなく多くのメーカーで、コンパクトカーやミニバンでもスポーティブランドを用意している。多様性が求められる今、最初からメーカーがチューンナップしているスポーティなモデルが用意されているのは、ユーザーにとっては選択肢が増えて有難いことだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…