スペアタイヤ廃止で募るパンク時の不安・・・パンク修理キットについて考える 【MFクルマなんでもラウンジ】 No.11

応急用タイヤからパンク修理キットへ・・・
クルマの基本構造は今も昔も変わらないが、細部に目をやれば、昔はあたり前にあったものがいまではなくなっているというものも少なくない。
今回の「ラウンジ」では、そのうちのひとつ、スペアタイヤとパンク修理キットについて考えてみる。
TEXT:山口尚志(YAMAGUCHI Hisashi)
PHOTO:山口尚志/中野幸次(★マークのみ)/日産自動車/本田技研工業/トヨタ自動車/スズキ/モーターファン・アーカイブ

心もとないパンク修理キットで大丈夫か?

クルマの話でよく語られる「走る」「曲がる」「止まる」のすべてに影響するのは重量だ。必要な機能・要件を満たしていることを前提に、自動車は軽ければ軽いほどいい。軽量効果が普通のひとでもいちばん手に取るようにわかるのは燃費の良し悪しだ。

ただ、軽量化=省エネ・省資源のためとはいえ、昨今、少々やりすぎじゃないかと思うものもある。

そのひとつとして私が疑問視しているのは、いまのクルマからスペアタイヤが取っ払われ、パンク時の対応をパンク修理キットで済ませようとしていることだ。

同じ不安を抱いている人、多いのではあるまいか。

今回の「ラウンジ」では、応急用タイヤ廃止とパンク修理キットについて再考する。

現行エクストレイルのパンク修理キット。

ただし、普段から「困ったときはJAF頼み」主義の人には関係ない話なので、Motor-Fan.jpの他の記事をお読みください。

グランドタイヤから応急用タイヤ&SST、そしてパンク修理キットへ

もともとスペアタイヤは、車両の走行用4つと同じタイヤ(グランドタイヤ)がトランクの床下ないし内壁にタテ置きで収められていた。ただし、走行用タイヤそのままではトランクスペースを圧迫するし、重量も嵩むことから、グランドタイヤよりも小径で幅も細く、より軽量の「応急用タイヤ」または「テンポラリータイヤ」と呼ばれるタイヤに変わっていった。

応急用タイヤが日本で認可され、初めて起用された国産車は1981(昭和56)年8月の6代目スカイライン(R30)だ。そうはいっても試験的導入だったのだろう、まずはR30のなかでも販売量は少数であろうと目された5ドアハッチバック車のみに限定していた。次に2カ月後の10月に追加された走りの「RS」に搭載され、1982(昭和57)年10月の改良時に、バンを除く全機種に拡大展開されている。

6代目スカイライン(R30型・1981(昭和56)年8月)。
テストとして、応急用タイヤを右後ろにはめたR30スカイライン5ドアハッチバック2000GT-EX。
「何の問題もない。なぜもっと早く認可しなかったのか」と、当時モーターファン誌で主筆を務めた星島浩さんが、運転席から感想を述べる。
この並びではわかりにくいが、応急用タイヤのほうがグランドタイヤよりも小径にして細身。
応急用タイヤに限らず、R30では上級機種にスペアタイヤの空気圧警報が備えられていた。何かの理由で空気圧が下がると、オーバーヘッドコンソール上のランプで警告する。黒いひもは、その圧を測るセンサーの配線。
もともとR30はトランク右内壁にスペアタイヤを収容するが、応急用タイヤになる5ドアはその張り出しが小さくなるのでトランクスペースが拡大する道理だ。
全景はこのとおり。左右非対称の荷室形状となる。

RSの1週間後の昭和56年10月末には、マイナーチェンジを受けた同じ日産の2代目フェアレディZ(S130型)が、それまで荷室左にゴロンと横に床置きしていたグランドタイヤを、これまた日本初の「スペースセーバータイヤ」・・・通称「SST」に代えている。前述応急用タイヤだってスリム化・小径化を図った「スペースセーバー」だったが、このSSTは、平素は空気を抜いてゴムをつぶした状態・・・すなわちより薄くして小径にした状態で荷室右内壁に収めてトランク「スペース」を「セーブ」。当時の日産は別名「折りたたみ式応急用タイヤ」とも呼んでいた。
使用時にシガーライター電源による専用の電動ポンプで空気を充填させたのは、いまのパンク修理キットと同じだ。

2代目フェアレディZ後期型(S130型・1981(昭和56)年10月。写真は1982年型)。


このSSTは、1978(昭和53)年8月の、S130へのチェンジ時点、アメリカ輸出用には当初から搭載されていたが、日本向けはこのときには認可が下りず、マイナーチェンジ時に認可され、晴れて搭載されたという経緯がある。

モーターファン1982年2月号でのテストシーン。スペースセーバータイヤ(SST)は、実は使用時はグランドタイヤよりも全体が大径になる。
シガレットライターから電源を取り出し、電動コンプレッサーにて空気を充填する。これはいまのパンク修理キットと同じだ。
後期型S130Zのトランクルーム。右内壁にSSTが収容されている。
前期S130のトランクルーム。スペアタイヤがルームを占領している! SSTの恩恵がいかほどかがわかるというものだ。

以後、SSTは知らず、応急用タイヤは少しずつ増えていったが、これがパンク修理キットに置き換わり始めたのは2005~2010年あたりからだろうか。
もとより軽量化、省スペース性が謳い文句だった応急用タイヤなのに、さらなる省エネ・省資源志向の高まりでついぞ応急用タイヤそのものが軽量化のターゲットにされて更迭、そのスペースにはコンプレッサーと薬剤で構成されるパンク修理キットが収まることになったのである。

応急用タイヤ廃止の理由

以前、おおよその答えはわかっていながらも、あらためてスペアタイヤが廃された理由を自動車メーカーにたずねたことがあるが、下記4つの理由が返ってきた。

1.パンクの確率が減ったため。さらには新車時から廃車まで、ただの一度も使われないまま廃棄処分に至ってしまう例がほとんどであり、環境保護の観点からもよろしくない。
2.軽量化のため。応急用タイヤ&ジャッキをなくしてパンク修理剤に代え、軽量化を図ることでわずかでも低燃費を狙う。
3.荷室スペース拡大のため。
4.パンク修理キットでの作業は、車載のコンプレッサーで空気も同時に入れるのでジャッキアップ作業もタイヤ外しも不要。したがってジャッキ工具類も廃止。

・・・・・・・・・。

やはり想像どおりの内容だった。

私もパンクの目に遭い、工具や応急用タイヤを取り出すや、せっせ、せっせと交換作業をしたことがあるが、いくら小型軽量といっても応急用タイヤは重いことは重いし、ジャッキアップ操作も含めてタイヤ交換は楽な作業ではない。

だからといって応急用タイヤそのものをなくしてしまっていいものなのか。
いまのトヨタヤリスだったか日産ノートだったかで、装備リストを見て、応急用タイヤばかりか、ジャッキをはじめとする工具一式までもが省略されているのを初めて見たときはぶったまげたものだ。

パンク(に限らず、機械の故障はみなそうなのだが)は急病と同じで、夜昼問わず突然起きる。昼間の明るい時間帯ばかりでなく、余儀なく深夜に山間道を走っているときにだって起きる可能性があるわけだ。計画的にパンクさせる奴はいない。いまどきはパンクしたらJAFを呼べばいいヤという人が大半なのだろうが、JAFを待たず、さっさと自分で処置してさっさと先に進みたい人だっているだろう。

深夜の山間道での登坂路。こんなシーンでパンクしたときのことを思うとゾッとする。

ここでいっちょ、最悪の場合・・・人っ子ひとり、クルマっ子1台いない、しかも熊でも出そうな携帯電話圏外の深夜の道でパンクに遭ったときのことを考えてみよう。JAFも呼べないのだから自分で解決するしかない。

これを応急用タイヤで対応するなら・・・

ジャッキ一式。これは旧ジムニーシエラのもの。

1.荷室から応急用タイヤと工具一式を取り出す。
2.パンクしたタイヤのナットをゆるめておく。
3.ジャッキアップする。
4.パンクしたタイヤが浮いたらナットをさらにゆるめてタイヤを外す。
5.応急用タイヤを取り付け、ナットを仮締めする。
6.ジャッキで車体を降ろす。
7.応急用タイヤ接地後、ナットを締めて完了。

となる。

輪留めをするとか、作業中、万一ジャッキが外れて車体が落ちたときのため、ジャッキアップする側の車体サイド下に応急用タイヤなり外したタイヤなりを横置きするといったことはあたり前のことなので省いたが、まあタイヤの付け替え作業はこういった段取りだ。

これがパンク修理キットだと次のようになる。作業項目や数値はメーカーや車種によって多少異なるが、全体的には同じだ。こちらはABC・・・で並べていく。

さきのエクストレイルのパンク修理キット。左が薬剤、右が電動コンプレッサー。

A.パンク修理キットを取り出し、コンプレッサーからのホースをタイヤに接続する。
B.コンプレッサーの電源プラグを車内のアクセサリー電源に差し込む。
C.修理剤ボトルをコンプレッサーにセットする。
D.エンジンを始動し(バッテリー上がり防止のため)、コンプレッサーのスイッチをON。
E.パンク修理剤と空気が同時にタイヤに充填される。タイヤが指定圧になるまで入れ続ける(圧力計はコンプレッサーに取り付けられている)。
F.指定圧になったらすべてを取り外す。
G.すぐに約5kmの距離を80km/h以下で走行する(補修材をタイヤ内部全面に行き渡らせてパンク穴をふさぐため)。
H.走行後、再度コンプレッサーをタイヤに接続して空気圧を確認する。
I. タイヤ圧が130kPa未満の場合 : 応急修理不可。
  130kPa以上、指定圧未満の場合 : 再度5km走り、Hを行う。
  指定圧となっている場合 : 100km以内を80km/h以下で走り、本修理に向かう。

と、こんなぐあい。

私の考えでは、ジャッキアップやタイヤ外し&取りつけといった力作業が不要なのはパンク修理キットのメリット。ついでにキットに含まれるコンプレッサーが、自宅の車庫ででもタイヤ圧点検に使えるのも便利だ。

こういった利点は認められるものの、やはり私は一律パンク修理キットになることは疑問で、置き換え用の応急用タイヤの現物があるほうが、いざというときの安心度は高いと考える。

というのも、上記2例を見ればおわかりのとおり、パンク修理キットでの対処は作業が煩雑だからなのと、パンク穴が大きかったり、その部位が修理の効かないタイヤサイド(サイドウォール)であった場合は、パンク修理キットでは解決しないからだ。そしてパンク箇所が確認できない中で作業した際、応急処置が完了したか、そうでない規模のパンクだったかどうかは上記 H まで行なってでないとわからないのも敬遠する理由になっている。修理不能が判明した場合、G までの作業は無駄になる。

外気温によりけりで、空気充填に要する時間だけでも5~20分かかるという。その前後の路上での作業時間を入れれば30~40分、走る時間も入れると、何だかんだで初めから終わりまで60分は見ておいたほうがいいだろう。

それに対し、応急用タイヤなら、空気圧が規定圧になってさえいれば、対処は交換一発ですむ。慣れたひとなら10分前後ですべてが完結、ひとまずの難逃れの確実性は、パンク修理キットの比ではない。

要するに、パンク修理キットのほうが作業の手間と時間がかかる割に確実性が低いのだ。

難逃れの後、パンクタイヤを修理しなければならないのはどちらも同じだが、キット処置したタイヤのほうが手間がかかるのはパンク修理キットのデメリット。薬剤の除去にかなり難儀するという。この点について、私が出入りしている販社に「大変でしょうねえ?」とたずねたら、「たーいへんですよぉ」と裏返った声で返答された。そりゃそうだろう、穴を特定してピンポイントでふさぐのではなく、上記Gの作業で薬剤を遠心力でタイヤ内周に一巡させ、そのどこかにあるはずの穴を、内圧を保持できるまでにふさがなければならないのだ。薬剤の量は多いし、粘度だって相当高いはずだ。ホイール外周にだって付着しており、内部はタイヤ側もホイール側もドロドロのヌタヌタのムニョムニョになっている。この販社の場合、付着した薬剤を手作業で拭うのだと。修理に取っ掛かるまでが長い。タイヤ専門店だと「修理剤で直したタイヤはもう使えないです」といい切ってしまうところもあるという。

また、パンク修理キットの使用期限は数年で、使わなくても交換が必要になる。クルマの使用年数が10年ならその間(かん)2度3度交換する必要があるわけで、これはこれで無駄になる。これも販社に聞けば値段は4,000円弱だと・・・キットにしても先々売れることが約束されているわけだから、キットメーカーもきっとウハウハ(しゃれ)、自動車メーカーとの癒着すら疑いたくなる。

ことほどさような理由から、応急用タイヤをやみくもに悪者視できるほどパンク修理キットが優れているとは思えないのだ。
たとえそれが軽量であっても、省スペース性を活かして床下収納が得られても、そして3列シート車で3列め椅子を床下に落とし込んでも荷室寸を稼げるのが、応急タイヤレスの効用であるにしても、だ。
軽量化のためとはいえ、応急用タイヤ廃止とのこれらトレードオフによる不確実性は決して小さくない。
また、軽量化=低燃費を図るといっても、ユーザーレベルで実感するほど効果が表れるとは思えない。誤差ほどの差も生まれないだろう。

eKワゴン荷室のアンダーフロアスペース。
さらに下にパンク修理キットがあるのは、やはり応急用タイヤ実物がないからだ。
現行ステップワゴンの3列目シート格納状態。この状態でも荷室天地はかなり大きい。
室内側から。これとて応急用タイヤレスにしてフロア下を稼いでいるからできたことだ。
現行エクストレイルのアンダーフロアスペース。手前にもの入れ、向こう側にパンク修理キットを置いているが、ボード下にはさらに・・・
アクティブノイズコントロールのユニットが収まる。
初代オデッセイの室内(1994年)。応急用タイヤは3列目シート右に設置されていた。3列め乗員はタイヤと隣り合わせで座ったわけだ。
2代目オデッセイの室内。さすがに2代目以降は荷室床下に移された。

パンクの率が下がったから問題ないのか?

昔に比べてタイヤがよくなってパンクの確率が下がったから問題ないというやつがいたが、そんなのは一眼的なものの見方しかできない証拠でとんだ浪花節、あきれるという言葉以外知らない。

パンクの確率も時間で見るのか台数で見るのかで考え方が変わってくるが、ひとまず台数で考えることにし、その確率が仮に1%だとしよう。100台に1台パンクに遭う計算である。それを「問題ない」といっていいのはクルマやタイヤの造り手&売り手側か、クルマをひとりで100台所有するお金持ちだけだ。
本田宗一郎風にいうなら、道路上に100台並ぶクルマのうちの1台がパンクに遭おうものなら、そのクルマ&ドライバーにとっては100%のパンク率だ。複数持ちだろうと100台持ちだろうと、ひとは絶対、2台同時に運転はできないからだ。

・・・ね? やっぱり応急用タイヤのパンク修理キットへの置き換えとパンク率の低下はまったく関係ないヨ。

新車を買うときは・・・

もし本稿を読んでいる方のなかに近々新車の購入を考えているひとがいて、狙っているクルマに工場オプションないし販社オプションに実物の応急用タイヤが用意されているなら、パンク時の面倒の少なさ、普段の安心感向上のためにも選んでおくことをお勧めする。たとえJAF依存型のひとであってもだ。
ざっと調べたところ、トヨタには応急用タイヤのオプションを用意しているクルマが多かった。さすがである。

これまで私はいまのクルマも含めて5台乗ってきた。最初の軽自動車といまの旧ジムニーシエラのスペアは走行用のグランドタイヤ。あとの3台は応急用タイヤだ。
そのうち3回パンクの目に遭っている。
1回目はブルーバード(U14)のときで左前輪、2回目はティーダのときで同じく左前輪、3回目はいまのジムニーのときで、右後輪だった。1回目と3回目は何回空気を入れても「他の3輪よりやけに空気の抜けが早いな」と気づき、販社で診てもらったら釘が刺さっていたことがわかってその場で修理した。

筆者のジムニーの右後輪トレッドを突き破ってくれた、記念にとっておいた釘。4.8cm! こんな長いもんがよくうまくトレッド鉛直に刺さってくれたものだ。

2回めのティーダのときは駐車場からの発進時、ハンドルを回すや、やけに重く感じ、「左前輪がもしや?」と気づいた。見たらホイールが接地するほどぺちゃんこになっていて、その場で応急用タイヤに交換した。これが新車で納めて3週間ほどで起きたのだからひどい話だ。

自分が自由に使えるクルマを手に入れたのが1999年。25年ばかりの間に3回パンク難にあったからざっと8年4カ月に1回の割合である。この頻度をどう考えるかは人それぞれとして、私の場合はクルマの年代もあり、幸いパンク修理キットの経験はない。これが修理キットだったら相当めんどくさい思いをしたと思う。そして懐疑心いっぱいで急場しのぎをしたにちがいない。
やはり実物の応急用タイヤと工具は必要だョ。

応急用タイヤ or パンク修理キットの日常点検

給油時などにタイヤ4本の空気圧確認をしているひともいると思うが、応急用タイヤを搭載しているひとはその5本目の確認もお忘れなく。いざ使う段になって空気が抜けていて使えなかったというのはつまらない話だ。
パンク修理キットのクルマにお乗りの方は、修理剤の使用期限の確認をお忘れなき様。そしてガソリンスタンドに行かなくともタイヤ圧確認ができるコンプレッサーを有効活用すべし。

もうひとつ、標準装備の応急用タイヤがなくなったとはいっても、それはオーソドックスな乗用車の話で、プロボックスやランクル、ジムニーのような類のクルマとなると話は別だ。

プロボックスなんぞライトバンだけに、過積載のことも考えているのだろう、昔のクルマよろしく、応急用タイヤではない、きちんとグランドタイヤをスペアに充てているのはさすがトヨタだ。いっぽうの日産ADは乗用車同様のパンク修理キットが標準で、スペアタイヤ(応急用タイヤではなく、グランドタイヤのようだ)とジャッキはメーカーオプション。このあたり、考え方が違うのだろう。

プロボックス。過積載を考慮してか、きちんと応急用タイヤが載せられている。
こちらは日産AD。ライトバンといえど、パンクはパンク修理キットで対応、スペアタイヤはグランドタイヤがオプションとなる。プロボックスもADも、収容場所は荷室の床下、というより床裏に吊り下げになっている。地面と相向かいなわけだ。

いっぽう、ランクルやジムニーとなると、世界的に見ればむしろパンクさせに行くかのようながれき道でこそ本分を発揮するクルマなので、さすがにこちらもパンク修理キットではなく、グランドタイヤをスペアタイヤにしている。

ランクル250と・・・
ランクル300。これくらいのクルマの極太・大径タイヤもかつては後ろに背負っていたが、いまはプロボックスやAD同様、荷室床下に吊り下げられている。写真でわかるだろうか。このクルマの性格からして、がれき道の登り、後退で地面に擦らないかと非常に心配になる。汚れもするだろうし・・・


ランクル70やジムニー(とシエラ)はスペアタイヤを丸裸のまま後ろに背負っているが、固定されたまま太陽光に風雨、暑さ寒さにさらしたままにするのはあまりにタイヤがかわいそうだ。これらを検討している方は、できればカバーを入手し、覆ってあげるといい。

ランクル70となるとスペアタイヤは昔のままおんぶされている。
こちらは現行ジムニーシエラだが、しょせん軽自動車ボディで、大径タイヤの床下吊り下げはスペースがないので不可。おんぶするしかない。初代ジムニーは室内側に設置していたが。
筆者の旧ジムニーシエラ。スペアタイヤは本来まる出しのままなのだが、太陽光、紫外線、風雨、ほこりの影響を考慮し・・・、
特別仕様「ランドベンチャー」用のアルミ製スペアタイヤハウジングを別途注文。値段は思い出したくないほど高かった。

そうそう、何で見たのか忘れたが、統計によると、タイヤ前後のうち、パンクするのは後輪のほうが多いのだそうな。前輪が蹴とばした釘ないし鋲を後輪が受けて踏むためだからと。
「へえ、そうなの。」と思ってタイヤローテーションのとき、自分のクルマの4輪のトレッド面を見てみたら、これまで乗ったどのクルマも、溝に食い込む小石・砂利の量は確かに後輪に多かった。これが釘ならパンクしているわけだ・・・パンクが後輪に多いのがわかるような気がした。

いま使っている旧ジムニーシエラの前輪。
対する後輪はこんなに砂利が溝に嵌まっている! と証明しようとしたのだが、考えてみたらいま履いているタイヤはダンロップのグラントレックAT5で、石を溝から吐き出すナントカイジェクターというパターンのタイヤだった。「ほんとかね」と疑ってあてにしていなかったが、つけかえてしばらくして見たらほんとに砂利が少ないのに驚いたことを忘れていた。だから統計の証明はできない。

そろそろスタッドレスタイヤに交換する時期だ。
みなさん、作業ついでにご自分のクルマを観察してみるといい。


お話戻って・・・

アメリカのナイト財団が開発し、黒い革ジャン着たお兄さんが乗っていたナイト2000の様に、鋭利なものをぶっ刺されてもパンクしないタイヤ、あるいはイギリスの諜報部員氏のボンドカーの様に、敵が撒いた鋲を踏んでもつぶれたそばからたちまち膨らんで復元するタイヤが採用されれば話は別だ。だがそうでないなのら、ぜひ自動車メーカーには過ぎた環境意識、軽量化を見直し、現状、応急用タイヤを用意していないクルマへの再搭載もしくはオプション対応を考えてほしいと思う。

軽量化はわかるが、世の中には「必要な無駄」というものもある。

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