軽自動車比較! ムーヴキャンバスとワゴンRスマイルの違いは?【全高1700mm以下のスライドドアモデル】

初代ダイハツ・ムーヴキャンバスのエクステリア
全高1700mm以下の軽自動車で初めて、両側リヤスライドドアを採用したのが初代ダイハツ・ムーヴキャンバスだ。同モデルは、スマッシュヒットを飛ばし、スズキがワゴンRスマイルを投入するまでニッチでありながらもこのカテゴリーでは、唯一の存在だった。全高1700mm以下でリヤに両側スライドドアを備える2台を比べてみた。

TEXT:塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro) PHOTO:DAIHATSU、SUZUKI

両側スライドドアでスマッシュヒットを飛ばした初代ダイハツ・ムーヴキャンバス

ダイハツは、2016年9月にムーヴよりも全高を25mm高めたムーヴキャンバスを登場させた。プラットフォームはタントがベースで、ムーヴを名乗ったのは、その知名度の高さも使いたいという思惑もあったはずだ。先代タントは1750mmという全高に加えて、助手席側のピラーレス(ピラーイン)構造の「ミラクルオープンドア」を備えている。左側からの子どもやお年寄りなどの高い乗降性だけでなく、チャイルドシートへの乗せ降ろし、ベビーカーなどの大きな荷物の積載まで、テールゲートを開閉しなくても完結する利便性の高さが美点だ。一方、こうした使い方をしないためミラクルオープンドアは不要で、タントほどの全高も要らないとなると、2023年に生産を終えたムーヴ、それよりも前の2017年に販売を終えたムーブコンテを選ぶことになる。タントよりもさらに背高のウェイクもあったが、タントの助手席が特徴的であるために、ライバル社(車)に流れていったという流れもあったかもしれない。

現行(初代)ワゴンRスマイルのエクステリア

初代ムーヴキャンバスは、背が高すぎないのに両側スライドドアを実現し、さらに「母娘」をメインターゲットに据えた可愛らしい内外装デザインやカラーリングでスマッシュヒットを飛ばすことになる。搭載されるパワートレーンは、NAエンジンのみだった。ダイハツ最大のライバルであるスズキは、遅れること約5年、2021年9月にワゴンRスマイルを発売。筆者はワゴンRスマイル発売後に『軽自動車のすべて2022』で試乗記や居住性、積載性、使い勝手などの比較記事を執筆したが、当然ながら実質的に一世代違うため、全方位において後発のワゴンRスマイルが上回っていることを実感させられた。しかし、ムーヴキャンバスもその後、2022年7月にフルモデルチェンジを受け、同じ土俵に立ったことになる。

現行ワゴンRスマイルは、初代ダイハツ・ムーヴキャンバスの対抗馬として登場

ワゴンRスマイルのリヤビュー

前置きが長くなったが、現行ワゴンRスマイルも女性ユーザーをメインターゲットに据えている。丸目のヘッドライトを備え、ブラック、ホワイト、アーバンブラウンという多彩なルーフカラーを用意する2トーンカラーのほか、モノトーンも設定。内装のカラーパネルもアイボリーパール(光沢タイプ)、ネイビーパール(光沢タイプ)、アイボリーとカラーによって印象が大きく異なる。色によっては男性でも気兼ねなく使える配慮がされている。後席は、左右別々にスライド&リクライニングが可能で、後席は荷室側からもワンタッチでダブルフォールディングができる。後席前倒しのフラット性は、2代目ムーヴキャンバスを上回る。さらに、スズキのお家芸である助手席背もたれの前倒し機構(助手席の背もたれが完全にフラットになる)により、長尺物の積載にも対応する。

ワゴンRスマイルのインパネ

ワゴンRスマイルは、NAエンジンのみで、マイルドハイブリッドと純ガソリン車を設定。マイルドハイブリッドのWLTCモード燃費は、25.1km/L、マイルドハイブリッドなしは23.9km/Lで大差はない。動力性能はそれなりだが、乗り心地や静粛性などは現在の軽自動車の平均的な水準を超えている。

ムーヴキャンバスは2代目になり、後発のワゴンRスマイルと同じ土俵に

2代目ムーヴキャンバスの「セオリー」

一方の2代目ムーヴキャンバスは、初代のイメージを受け継ぐ「ストライプス」に加え、モノトーンのボディカラーのみとなる「セオリー」を新たに設定している。後者は、男性ユーザーの取り込みを狙ったシックな内外装、カラーが特徴だ。「セオリー」は、シックな内外装カラーに加え、専用のメッキ調のピンストライプやメッキリヤバンパーモールを備えることで、上質感が追求されている。内装色は、「セオリー」がシックなブラウン基調でネイビーとの2トーン。「ストライプス」は、ボディカラーとコーディネイトされたホワイト基調の2トーンとなっている。

2代目ムーヴキャンバスのインパネ

また、「DNGA」化されたことで、走りのクオリティを高め、さらに初代で未設定だったターボエンジンも設定しているのがトピックスだ。ターボを選べば、4人乗車して高速道路を走行してもモアパワーを感じさせるシーンが減り、街中でも過給されればそれほどエンジンを回さずに済むようになった。走りの洗練度は、「DNGA」化もあり、フットワークや乗り心地、静粛性などの面で初代を上回っている。

ムーヴキャンバスの「置きラクボックス」

また、使い勝手最大の特徴は、後席下に配置された収納の「置きラクボックス」で、床に荷物を置きたくない人への配慮となっている。そのため、後席前倒し時の段差はワゴンRスマイルよりも大きくなっている。後席は240mmのロングスライドが可能で、荷室は床下収納と背の高い荷物に対応している。

ムーヴキャンバスのラゲッジ

両モデルともにデザインやカラーなどの好みで選んでも後悔はしないクオリティに達している。なお、2代目ムーヴキャンバスのWLTCモード燃費は、NAが22.9km/Lが最高値で、ターボは22.4km/Lが最高値で差はほとんどない。ターボ車が欲しいのなら2代目ムーヴキャンバスのみとなる。

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著者プロフィール

塚田 勝弘 近影

塚田 勝弘

中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー…