現行Aクラスは、Aクラスとしては4代目モデルに当たる。とはいえ、現行と同じCセグのモデルになったのは3代目からだから、なんとなくその前のAクラスとは別の流れ、という気がしなくもない。
デビューは2018年。型式はW177型(セダンはV177型)だ。最新のメルセデス・ルックのフロントフェイスもだが、デビュー当時に注目を集めたのは、新世代インフォテインメントシステムの「MBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」だ。AIを駆使した音声認識で「Hi Mercedes!」と話しかければ、カーナビの目的地設定やエアコンの温度調節を「声」でコントロールできるというのが話題になった。
そういえば、MBUXに気をとられていて、ちゃんと試乗したことがなかったことに今さらながら気がついて、Aクラスをテストドライブに連れ出した。
今回のクルマは、広報車ではなくメルセデス・ベンツのレンタカーサービス「Mercedes-Benz Rent」を利用した。Mercedes me@Shinagawa Prince Hotelで借りだしたのは、A200dである。
ところで、Aクラスのセールスが非常に好調なのをご存知だろうか? 国内の輸入車の販売台数のトップは長年VWゴルフとBMW MINIというド定番モデルが争ってきたが、2020年はAクラスがゴルフを抑えて2位、現行モデルデビュー翌年の2019年は4位だったから、現行Aクラスはヒットモデルと言っていい。
なぜ人気なのか? まずはキーを渡されてクルマを眺めるところで「ああ、メルセデスだ」と思える存在感があること。ボディサイズは全長×全幅×全高:4420mm×1800mm×1420mm、ホイールベース:2730mmだから、いわゆるCセグの普通のサイズだ。MAZDA3のハッチバックとほぼ同じ寸法である。でも、存在感がすごい。大きなスリーポインテッドスターマークもさることながら、ちょっと長めに見えるボンネットフードとルーフのおかげで、1クラス上のクルマに見える。立派なのだ。
シートに腰を下ろしてインパネを見回す。最新のメルセデスらしい、ちょっと煌びやかでいかにも多機能な感じ。エアコンの吹き出し口はジェットエンジンのタービンをイメージしたものだという。大きなセンターディスプレイもセンターコンソールのタッチパッドも、最新のスマートフォンのようだ。いや、iPadのようだ、と言った方がいい。
2.0ℓ直4ディーゼルの走りはどうか?
今回の試乗車はA200dだ。つまりディーゼルエンジン搭載モデルである。エンジンをかける。非常に静かだ。マイカーのBMW320dより確実に静か。そしてエンジンの回り方が「軽い」。
搭載するエンジンは、OM654型2.0ℓ直4ディーゼルターボだ。A200dに載るのは、「OM654q型」で「q」が付くのは、横置き用のOM654型である。
スペックは
最高出力:150ps(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm/1400-3200rpm
ちなみに、CクラスやEクラスが積む220dになると
最高出力:194ps(143kW)/3800rpm
最大トルク:400Nm/1600-2800rpm
GLEが積む300dになると
最高出力:245ps(180kW)/4200rpm
最大トルク:500Nm/1600-2400rpm
になる。つまり245ps/500Nmまでいけるエンジンを150ps/320Nmで使っているわけで、そこがこの軽いフィーリングに繋がっているのかもしれない。無理をしていないから、余裕があるのだ。とはいえ320Nmもあれば、1.5トンのAクラスは軽々と動かせる。
まずは、通勤路。いつもの都内の市街地を14kmほど走ってみる。燃費計は14.5km/ℓを示していた。WLTCの市街地モード(14.3km/ℓ)よりもいい。
メルセデス・ベンツの多くのモデルで共通する美点は小回りが効くことだ。Aクラスも例外ではない。最小回転半径5.0mは、同じCセグカーと比べて飛び抜けて小さい。
VWゴルフTDI:5.2m
MAZDA3FB:5.3m
BMW 118d:5.4m
といった具合。ハンドルの切れ角が大きいのは、駐車やUターンなどでのストレスを減らしてくれる。
少し遠出してみることにした。
今度は、首都高~東北道に乗って少し遠出してみる。
試乗車は、AMGラインのオプションを装着していたから、タイヤは225/45R18サイズのコンチネンタル EcoContact6を履いていた。乗り心地はどうか? これが悪くない。というか良いのだ。Aクラスに関しては、先代の初期型に試乗したことがあるのだが、その時は「バタバタしていて乗り心地もあんまりいいとは言えないなぁ」と感じたのだが、現行モデルは全然違った。首都高の舗装の継ぎ目を乗り越えるときも深い上下動がない。
「なんだかA200d、いいじゃん」という想いを強くしたのが、燃費性能だ。制限速度を守って高速道路を走行すれば、26~27km/ℓで走ってくれる。100km/h巡航時のエンジン回転数はメーター読みで1450rpmくらいだから、静粛性も問題なし。WLTCの高速道路モード(23.0km/ℓ)は楽に上回った。
今回は416km(高速道路5割、郊外路3割、市街地2割くらいの割合で)走った。トータルの燃費は24.4km/ℓ(平均時速56km/h)だった。WLTCモード(19.2km/ℓ)を大きく上回る結果に正直驚いた。
軽油:142円/ℓ レギュラーガソリン:163円/ℓで考えると(高い! 2021年12月の平均価格)今回の24.4km/ℓは5.82円/kmということになる。レギュラーガソリンで同じだけの燃費(実際の費用として)を出そうと思ったら、28.0km/ℓで走らないといけない。つまりハイブリッドモデル並の燃費性能をA200dは持っているということになる。320Nmのトルキーな走りは、やはり魅力的だ。A200d、いいじゃないか。
「Hi Mercedes!」はどうか? MBUX導入当初は、車室内の会話で「メルセデス」という言葉が出るたびにシステムが反応して、ちょっと鬱陶しかったのだが、最新のMBUXは進化していた。が、「Hi Mercedes!」と仲良くなるには1日は短すぎる。Mercedes-Benz Rentの係の方に伺うと、貸し出し毎にMBUXの設定をリセットしているそうで、いうなれば学習が進んでないMBUXを使ったわけだ。オーナーになったら、毎日付き合うことで、自分好みの「Hi Mercedes!」にだんだん仕上がっていくのだろう。
1日付き合ってみて、A200d、かなり気に入った。1.4ℓガソリンターボ搭載モデルのA180にも乗ってみたくなった。A200dが468万円に対してA180は409万円だ。ガソリンモデルにはガソリンモデルの味がありそうだ。機会を作ってまた試乗してみたい。
メルセデス・ベンツAクラス A200d
全長×全幅×全高:4420mm×1800mm×1420mm
ホイールベース:2730mm
車重:1540kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:OM654q型
排気量:1949cc
ボア×ストローク:82.0mm×92.3mm
圧縮比:15.5
最高出力:150ps(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320Nm/1400-3200rpm
燃料供給:コモンレール式筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:43ℓ
WLTCモード燃費:19.2km/ℓ
市街地モード 14.3km/ℓ
郊外モード 18.6km/ℓ
高速道路モード 23.0km/ℓ
車両価格○468万円