打倒ジムニー!三菱・パジェロの魅力を軽に凝縮した「パジェロミニ」が111.8万円~デビュー【今日は何の日?12月13日】

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日12月13日は、三菱自動車の「パジェロミニ」が誕生した日だ。パジェロミニは、当時RVブームで一世を風靡していた「パジェロ」を軽自動車にギュッと縮小したような軽の4WDオフローダーで、スズキ「ジムニー」よりもソフトで都会的な雰囲気で人気を獲得した。
TEXT:竹村 純(JUNTAKEMURA)/PHOTO:三栄・三菱 パジェロミニのすべて

■パジェロの弟分として誕生したパジェロミニ

1994(平成6)年12月13日、三菱自動車からパジェロの弟分として軽自動車の4WDオフローダー「パジェロミニ」がデビューした。パジェロミニは、当時大人気だったパジェロをスケールダウンしたようなスタイリングと、優れたオフロード性能で人気を獲得した。

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ

パジェロのミニチュア版、パジェロミニ誕生

三菱・パジェロミニ
左が親パジェロ、右が子パジェロミニ

パジェロミニのコンセプトは、パジェロ譲りのオフロード性能とオンロードのしなやかな走り、そして軽自動車らしい取り回しの良さの追求だった。

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニのカットモデル

ボディは、モノコック構造をベースにラダーフレームに近い構造材を組み込んだビルトインフレーム構造で、オフロードでの強靭さを実現。スタイリングは、兄貴分の美点を忠実に継承した横開き式リアゲートを備えた3ドアスタイルで、まさしくパジェロのミニチュア版といったところ。

三菱・パジェロミニ
三菱「パジェロミニ」のリアビュー

パワートレインは、当時軽としては珍しい4気筒の660cc直4 SOHC(最高出力52ps/最大トルク6.0kgm)&DOHCターボエンジン(64ps/9.9kgm)の2種と、5速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動システムは、2WD(後輪駆動)とハイ&ローの4WDが選べるセレクティブ4WDが採用された。

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニに搭載されるエンジンは2種。左が4A30型NA、右が4A30型インタークーラーターボ

車両価格は、標準グレード(5速MT)が111.8万円(NA)/124万円(ターボ)。当時の大卒初任給は19万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約135万円/150万円に相当する。

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニの前後シート

当時の軽オフローダーは、スズキ「ジムニー」の独壇場だったが、パジェロミニはジムニーよりも都会的な雰囲気を持つややソフトなイメージで多くのファンを獲得した。

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ

パジェロミニとジムニーとの違い

三菱・パジェロミニ
三菱・パジェロミニ

当時軽のオフローダーとして人気を独占していたスズキの2代目「ジムニー(JA11型)」とパジェロミニミニを較べてみた。

スズキ・ジムニー
ライバルのスズキ・ジムニー

ジムニーも2代目になると、従来のジープルックから直線基調のRV風のスタイリングに変わった。その基本構造は、頑強なラダーフレームに悪路走行で威力を発揮する前後リジッドアクスルのサスペンションを装備した本格オフローダーである。

一方のパジェロミニは、前述のようにモノコックベースのビルトインフレーム構造で、足回りはフロントがストラット式の独立懸架、リアが5リンク式で前後ともコイル式を採用することでしなやかな乗り心地を実現している。

エンジンは、いずれもターボエンジンを設定して性能に大差はない。

以上のことから、ライバルのジムニーは本格的なオフロード性能に徹して、その分乗り心地はハードだが、本格オフロードを楽しむファンの心を掴んでいるのだ。一方のパジェロミニは、ある程度のオフロード性能を持ちつつ、オンロードの乗り心地も重視しているのが特徴である。

続いてジュニア、イオとパジェロファミリーを展開

パジェロミニの翌1995年に、同じくパジェロをダウンサイジングしたコンパクトサイズの4WDオフローダー「パジェロジュニア」がデビューした。

三菱「パジェロジュニア」
1996年にデビューしたコンパクトサイズの4WDオフローダー、三菱「パジェロジュニア」。室内が狭く人気は低迷

パジェロジュニアは、コストと開発費を極力抑えるために、パジェロミニのプラットフォームを流用。トレッドを拡大し、オーバーフェンダーと太い大径タイヤでオフローダーをアピールしたが、軽をサイズアップしたためコンパクトカーSUVとしては室内スペースが狭いといった中途半端な面が指摘されて販売は伸びなかった。

「パジェロイオ」
三菱「パジェロジュニア」の代替として1998年にデビューした「パジェロイオ」

その反省を生かして、1998年にはシャシーとボディを専用設計したパジェロジュニアの代替モデルのコンパクトSUV「パジェロイオ」が投入された。パジェロイオは、当初順調な販売を続けていたが、2000年を過ぎた頃にはRVブームも終焉を告げ、絶好調だった兄貴分のパジェロの勢いも減速。その結果、パジェロファミリーの人気にも陰りが見え始め、パジェロイオは1代目限りで国内生産を2007年、パジェロミニは2012年に生産を終えることになった。

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パジェロの人気にあやかって登場したパジェロミニ、4WDのオフローダーというイメージよりも街乗りが似合う軽のSUVという評価が高かった。その分、若い女性からも人気があったが、その市場にはライバルが多く、ジムニーのような熱狂的なファンを得ることはできなかった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…