フォードは予告どおり「マスタングGTD」がニュルブルクリンクで最速の北米量産車記録を打ち立てたと公式発表した。
マスタングGTDは、ドイツやイタリアのスーパーカーに対抗すべく開発された“公道用のレースカー”だ。このクルマはGT3ベースで、最高出力815psを発揮する5.2L V8スーパーチャージャーエンジンを搭載。ボディはほぼカーボンファイバー製で、価格はマスタング史上最も高価な30万ドル(約4500万円)となっている。
実はタイムは8月7日に記録されており、フォードはしばらくこのニュースをひっそりと隠していたということになる。
マルチマティック・モータースポーツのドライバー、ディルク・ミュラーがマスタングのステアリングを握り、2年間に及ぶ開発、テスト、シミュレーション作業を経て、新たなレコードが打ち立てられたという。
マスタングGTDはこのたび、20.8kmのニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)で6分57秒685を叩き出し、ダッジ「バイパーACR」が記録した7分01秒30を4.3秒上回った。これにより、ニュル7分切り達成した唯一の米国車となったのだ。フォードによると、世界で7分の壁を破った量産スポーツカー6台のうちの1台だという。
マスタングGTDのラップタイムは、ランボルギーニ「アヴェンタドール スーパーヴェローチェ」や、フェラーリ「296 GTB」を上回り、ポルシェ「918スパイダー」と同等だ。しかし、フロントエンジンの市販車のタイムとしては、メルセデスAMG「GTブラックシリーズ」が2020年にマークした6分43秒61にはまだほど遠い。また、ニュルブルクリンクの市販車総合記録はメルセデス「AMG One」が保持しており、タイムは6分29秒09だ。マスタングGTDは優れているが、AMG GTブラックシリーズやAMG Oneに挑戦するには、大幅なアップグレードが今後の課題となってくるだろう。
フォードのCEO、ジム・ファーリー氏は、マスタングGTDにまだまだ挑戦できることがあると語り、2025年にはさらに周回を重ねると約束している。
「ニュルブルクリンク7分未満で周回できるクルマを製造した初の米国自動車メーカーであることを誇りに思いますが、満足していません。マスタングGTDにはまだまだ時間があることはわかっています。また戻ってきます」