スズキ・フロンクスが200万円台ってのは偉い! ADAS他、真の実力を公道で試してみた【清水和夫試乗動画】

清水和夫✕フロンクス
フロンクス、200万円台で買えるのは嬉しいね
2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーの10ベストにも選ばれ、イヤーカーとっちゃうかも!?とウワサされていたスズキ・フロンクス。実際には一歩及ばずだったが、大健闘の4位。しかし、FFも4WDもある200万円台のSUVは魅力たっぷりだ。国際モータージャーナリスト・清水和夫氏が前回のプロトタイプ試乗に続き、一般公道で真の実力を試したので動画と共に見ていこう。
IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/PHOTO:MotorFan.jp編集部/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)


激戦区の200万円台、なかでも清水和夫の一押しは?

スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクスのADASはイイ!

最近は軽自動車がめちゃくちゃ良くなったが、値段がホンダN-BOXなんか200万円超えちゃう。じゃ、200万円台で見ると、スズキ・フロンクスはFF・6ATが2,541,000円、4WD・6ATが2,739,000円。そこにインドから来るホンダのWR-V(2,098,800〜2,489,300円)はフロンクスよりちょっと安い。そこに日産・キックス(3,083,300~3,700,400円)とかカローラクロスも200万円チョット(2,184,000~3,459,000円)からある。そこにヤリスクロス(1,907,000~3,156,000円)があり、スバル・クロストレック(3,014,000~3,448,500円)…これはちょっと上のクラスか(※車両価格は全て税込)。

だから200万円台は激戦区で、軽からBセグのSUVまである。一体何が良くて何を買えばいいのか…ちょっと迷っちゃう。

スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクス

SUVでいえばカローラクロス(Cセグ)、ヤリスクロス(Bセグ)、フロンクス(Bセグ)、WR-V(Bセグ)、キックス(Bセグ)といろいろある。そのようななかでオレ的にはヤリスクロスがいち押し! 理由は、ヤリスクロスは日本のヤリスベースで作られたのではなく、欧州に出しているちょっとトレッドの広いヤリスをベースとしてSUVにしたので、サスペンションや走り、ボディもしっかり感があっていい。カローラクロスはどちらかというとASEANの方で企画された経緯もある。

スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクス

なので、見ているところが欧州とアジアで違う。欧州目線で作ったヤリス、それをベースとしたヤリスクロスは走りもしっかりしている。

ということで激戦区、200万円台のクルマは何を買えばいいのか? 悩ましいところもあるが、インド生産だから安かろう悪かろうではなく、スズキの話を聞くとインドの工場は最新の工場なので、むしろ“インドだからいいクルマができる”というところも無きにしも非ず。ホンダだって広州ホンダが先に“1G締め”などをやったりしていた。

スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクスのフロントフェイス
スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクスのサイドビュー
スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクスのリヤビュー

日本の自動車メーカーは海外にどんどん工場を進出し、最新の工場で作っているので、それが帰国子女で日本に入ってくるので、日本製だけが良くて海外製が良くないという考え方は捨てていい。これが日本のグローバル戦略、特にインドで言えばスズキとホンダからクルマが来ているので、これは非常に面白いと思う。

スズキらしく、奇をてらわない質実剛健で上質なクルマ、それがフロンクス

今回は、ナンバーの付いた量産車でのスズキ・フロンクス公道試乗会。前回はサイクルスポーツセンターでプロトタイプに乗って、なかなかいいクルマだなっていう印象はあった。でもプロトタイプで、限られたテストコースではクルマはよく見えてしまうもの。なので、この生きた道で、量産車で評価しないと、ユーザーのためになる情報っていうのは出せないと思う。

スズキ・フロンクス
雪道をそんなに走らないのならFFでも十分

奇をてらったクルマではないが、スズキにしては珍しくというか初めてと言っていいのか、このカテゴリーではちょっと上のクラスを狙っている。コンセプトのなかに“上質”という言葉が入っている。特に一般走行した時のNVH(騒音:Noise/振動:Vibration/荒々しさ:Harshness)を徹底的に低減して快適な乗り味を求めるというのが開発コンセプト。

フロンクスはインド生産だからこそ上手くいった?

例えばホンダもインド製のWR-Vがあるが、新興国で作られるクルマというのは安く作っているんだろう、みたいなイメージがある。が、最近はホンダ・アコードがタイから来て、ホンダ・オデッセイが中国で、タイから三菱・トライトンが来て、インドからホンダとスズキのBセグSUVが来るので、安いからというよりも、むしろ日本の自動車産業が海外に工場を移転しているので、日本で作るクルマとなんら変わらないクオリティでクルマが作れるようになった。

スズキ・フロンクスのフロントシート
スズキ・フロンクスのフロントシート
スズキ・フロンクスのリヤシート
スズキ・フロンクスのリヤシート

それが日本メーカーのグローバル戦略。特にASEANから西側のインド戦略に関しては、ホンダとスズキが今、頭2つ抜け出ているということ。トヨタも昔はエティオスで出ていたが、トヨタ目線でちょっと高いクルマになり見事に失敗した。だから最近はトヨタとスズキの競業は、ASEANを中心にして西の方の地区と、グローバルサウスに関してはトヨタ/スズキ連合でやっていくと。なので、インドで売られるこれからのトヨタ車というのは、多分マルチ・スズキのクルマをトヨタバッジで売るんだろうなという気がする。

同じように、ASEANを中心に東側の地区は、トヨタの場合はダイハツと一緒に行くということで、特に南米ブラジルではトヨタ/ダイハツ連合軍で攻めていく…というような、トヨタを中心にしたグローバルサウス戦略というのが最近になって明らかになってきている。

スズキ・フロンクスのエンジン
直4DOHC 1460ccのK15C型ハイブリッドエンジンを搭載

ということで、これからASEANから西側諸国の、アフリカを含めたグローバルサウスにとっては、極めてトヨタにとってもスズキは重要なパートナー。スズキにとってもトヨタバッジでクルマを作ることで台数が売れるので、いつまでも安く作って売るというようなビジネスモデルではないということが分かってきた。

その第1弾として見ていいかはわからないが、このフロンクスはかなりNVHにこだわったクルマで、FF・6ATが2,541,000円、4WD・6ATが2,739,000円なので、ホンダのインド製のクルマ(ホンダ・WR-V価格:2,098,800円〜2,489,300円)よりもひとつ上。

ということで、スタイリングやADASの機能など、いろいろなところを見ても、何も過不足ないクルマ。しかし、スズキらしいなと思うのは、奇をてらったクルマではなくて非常に質実剛健にクルマが作られている。

ADASを試す。ブレーキングは上手いドライバー並みにスゴイ!

街中では確かに気になるような音・振動は少ないかなと思うが、最初にアクセルをポンと踏んだ時に少し反応が悪く、その先でグッと加速が急に期待以上に出ちゃうというのがあるので、このアクセルワークに対する加速度の出方のリニアリティがもう少し欲しいなと思う。

清水和夫✕フロンクス
清水和夫がスズキ・フロンクスを公道で試す

面白いのは、メーターにブレーキとアクセルペダルのストローク量かな、踏み方のバーが時間軸で出てくる。今、左足ブレーキを踏んでいるのでオレンジのブレーキ表示が出ている。アクセルを踏むと上側にグレーの表示が出る。一体この表示は何を意味しているのか? 後でエンジニアに聞いてみたいと思う。

ACCも全車速ACCかな、30km/hくらいまでか、使い勝手はいい。右手の親指でメインスイッチを押して、今は50km/h制限なので設定速度も50km/h。前ACCを使い前のクルマをロックオンして自然に停止。

スズキ・フロンクス
スズキ・フロンクスのコクピット

あ! この止まり方は見事だ! カクっとならない、上手いドライバーのブレーキの踏み方だ。

前のクルマがいなくなると30秒以内だったら発進するのか?…発進はしなかったが知らせはあったね。これだけACCが使いやすいと長距離ドライブは楽。

スズキ・フロンクス
電動パーキングブレーキを備える

今、ブレーキは踏んでいないが、ACCで完全停止、アイドルストップした。これは12Vのマイルドハイブリッドなので燃費にはあまり効きそうもないが。前のクルマが動くとアイドルストップが解除されエンジンが自動でかかるところまではやっている。ただ自動的に再発進はやらないね。これは30秒ルールなのか?

LKAS(車線維持支援システム)も結構いい。あれ…右と左がちょっと制御が違うな。左のほうが強いね。右はちょっと弱めか…気のせいか? でもLKASはしっかり機能している。ACC、LKASは合格!

価格は2,541,000円〜2,827,000円。今乗っているのは4WDなのでベース車両2,739,000円。これだけの機能が装備されているのは嬉しいね。

乗り心地はちょっと固めか?という気はするが、悪くない。むしろダンピングはいい感じ。

ヘッドアップディスプレイが付いているから、こういった安全装備のところはもう十分バッチグ~! アイドルストップするとハンドルがちょっとロックされたように重くなるが、それをエイっハンドル切ると、ドライバーが走りたいんだなっていう意思を組んでアイドルストップが終わりになってエンジンがリスタートする。

清水和夫
たまに銀座のバーでバーテンをする清水和夫さん(←ウソ!)、頑固一徹学校のひとコマ

4駆なのでちょっとFFよりもサスは少し固めにしているのか。まぁそんなに雪道とか行かないのならFFで十分かと思う。意外とこの4駆はちょっと固めだが骨太感いっぱいのSUV。

スズキは安いクルマの自動車メーカーというイメージではなくて、これからトヨタと一緒になってグローバルサウスで活躍する、地球儀の赤道から下の方、西の方はスズキ・ビジネスが相当頑張れる領域。そこにトヨタが一緒に競業する。ダイハツはスズキと競合しないように、東の方、南米の方はトヨタはダイハツと一緒に攻めていく。そんなイメージだ。最終的には軽自動車も含めて、ダイハツとスズキももっと競業してもいいとは思うが。まぁ数年以内に大きな変化があるのではないか。

【SPECIFICATIONS】
車名:スズキ フロンクス(FRONX)( 【 】カッコ内はAWD)
全長×全幅×全高:3995×1765×1550mm
ホイールベース:2520mm
トレッド(前/後):1520/1530【1535】mm
車両重量:1070【1130】kg
最小回転半径:4.8m
乗車定員:5名
エンジン種類:直列4気筒DOHC
内径×行程:74.0×84.9mm
総排気量:1460cc
エンジン最高出力:74kW(101ps)/6000rpm【73kW(99ps)/6000rpm】
エンジン最大トルク:135Nm(13.8kgm)/4400rpm【134Nm(13.7kgm)/4400rpm】
モーター最高出力:2.3kW(3.1ps)/800~1500rpm
モーター最大トルク:60Nm(6.1kgm)/100
燃料タンク容量:37L(無鉛レギュラーガソリン)
トランスミッション:6速AT
サスペンション(前/後):マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(前/後):195/60R16/195/60R16
燃費消費率(WLTCモード):19.0【17.8】km/L
車両価格(税込):2,541,000【2,739,000】円
スズキ新型フロンクス

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…