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400万円オーバーでは、そうそう若者は手が出ない
言うまでもなくシビックはホンダの看板モデルである。世界中に販売され、とくに北米での人気は歴代、非常に高い。ちなみに、2024年1-11月の北米での販売台数は22万3321台(前年同期比+22.1%)である。北米でシビックより多く売れているのはCR-Vだけだ。
日本ではどうだろう?
2024年1-11月で1万4142台を売り上げている。2023年1-12月が1万3258台、2022年1-12月が8773台、2021年1-12月が8520台だから、「好調」と言っていい。
ちなみに、現行シビックのデビューは2021年9月、タイプRは2022年9月である。
さて、そのRS。ホンダによれば「年代については、RSは20代、e:HEVは50代のお客様を中心」だそうだ。
シビックRSの車両価格は419万8700円だから、20代の若者たちが軽く買える値段とは言いがたい。
これまた数字で見ていこう
1990年大卒初任給 16万9900円 インテグラRSi(5MT)147万5000円(初任給の8.7ヵ月分)
2024年大卒初任給:22万5457円 シビックRS 419万8700円(初任給の18.6ヵ月分)
インテグラを選んだ理由は特段あるわけではないが、1.6L直4DOHC+5MTのスポーツクーペなので選んでみた。
まぁ”失われた30年”のせいで給料が上がってこなかったこと、そしてクルマはグローバル商品として価格が上がったことが原因なのだが、現代の初任給の8.7ヵ月(196万円)では、フィットRS(215万3800円)も買えない。税制やらエアコンが標準装備じゃなかったやら、違いはいろいろあるし、もちろん1990年の20代も、新車なんかおいそれとは買えなかったのだが。
若者のクルマ、終のクルマ
のっけからシケた話で申し訳ない。
仕事柄、「次のクルマ、なにがいい?」という相談を受けることがある。質問者が50代、60代ともなると、「次に買うクルマが最後の新車かもしれない」「最後のクルマは純エンジン車がいい、MT車がいい」「もう純エンジン車もMT車も買えなくなるよね?」とおっしゃる方が多い。少なくとも、我々庶民が買える価格帯のクルマでは、そうなる可能性は高そうだ。
そこで「これはどう?」というリストにあがるのは、シビック・タイプR、マツダ・ロードスター、日産フェアレディZ、トヨタ・スープラ、GRヤリス、GRカローラ、レクサスISあたりになる。
で、シビックRSである。タイプRもフェアレディZも事実上、販売が止まっている(受注を受け付けていない)から買えない。となると、「シビックRS、いいんじゃないか?」となりそうだ。20代の若者にはかなり高価だが、50~60代にとっては、手が出せない価格でもない(いや、安くはないけど)。息子(あるいは娘)が乗るクルマとして(ホントは自分が乗りたい)強く推す、あるいは資金援助をしてあげる……というのがありそうだ。
シビックRSが最初のクルマならクルマ好きになる
なんて想像しながらシビックRSに乗った。
もう、じつにいいクルマです。6速MTのシフトフィールは素晴らしいし、レブマッチも気持ちがいい。クラッチミートも簡単だし、もちろん坂道発進でずり下がることもない。MT免許をとったばかりの20代も、MTから20年間離れていた50代でも、すぐに慣れるし、すぐに気持ちいい。「ああ、MTっていいなぁ」と思う。
1.5L直4ターボエンジンは、趙刺激的なわけではないし、1370kgの車重に対して182ps/240Nmのパワースペックはほどほど。でも、それがいい。
最近のホンダ車は、どれもシャシー性能が高くて乗り心地も走り味も高次元でまとまっているが、そのなかでも個人的はシビックがベストだと思う。RSでなくてもハイブリッドのe:HEVもすごくいいのだ。
だから、20代でシビックをマイカーにできる幸運に恵まれたら、きっとクルマが好きになるだろう。20代と50、60代の2世代でシビックRSを共用できるというは、両者にとって素敵なことだと思う。
シビックRSは、全長×全幅×全高:4550mm×1800mm×1410mmだから、なかなか堂々としたボディサイズだし、最小回転半径が5.7mで小回りが効かないという弱点もある。それでも、美点の方が上回る。
MTでも高速道路ではACCが効くし、実際使ってみるとこれが結構ありがたい。燃費も330km走行して15.6km/Lと優秀(WLTCモード燃費は15.3km/L)。本当に文句なしなのだ。
さて、冒頭の”終のクルマ”にシビックRSは相応しいか? 筆者の答は、「それならやっぱりシビック タイプRかな」である。フェアレディZのMTでもいい。きっとその方が、不便で刺激的で特別なクルマになると思うからだ。
シビックRSが気になってホンダのディーラーに行ったなら、RSだけでなくe:HEVにも試乗してほしい。こちらも、いいクルマだから。
ちなみに、チマチマ計算して申し訳ないのだが……
e:HEV EXの価格は430万7600円。重量は140kg、e:HEVの方が重い(車両重量1490kg)。RSとの価格差は10万8900円。でも、燃費は断然いい。
シビックRSは
WLTCモード燃費:15.3km/L
市街地モード 12.2km/L
郊外モード 15.6km/L
高速道路モード 17.8km/L
シビックe:HEVは
WLTCモード燃費:24.2km/L
市街地モード 21.7km/L
郊外モード 27.6km/L
高速道路モード 23.4km/L
RSはハイオク、e:HEVはレギュラーガソリンが指定燃料になる。ハイオク:183円 レギュラー:172円だとすると
RSは12.0円/km
e:HEV EXは7.1円/km
だから、22000km強の走行でハイブリッド代は取り戻せる。
終のクルマなら燃費計算やリセールバリューなどは気にしないだろうが、シビックRS(e:HEVも)はいまを生きるクルマだ。だから、いろいろ考えて選ぶのがいいと思う。
ホンダ・シビックRS
全長×全幅×全高:4550mm×1800mm×1410mm
ホイールベース:2735mm
車重:1370kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式/Rマルチリンク式
駆動方式:FF
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ
型式:L15C
排気量:1496cc
ボア×ストローク:73.0mm×89.4mm
圧縮比:10.3
最高出力:182ps(134kW)/6000pm
最大トルク:240Nm/1700-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:47L
トランスミッション:6速MT
WLTCモード燃費:15.3km/L
市街地モード 12.2km/L
郊外モード 15.6km/L
高速道路モード 17.8km/L
車両価格:419万8700円
ディーラーオプションでドライブレコーダーとフロアマット