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■タクシー専用車のクラウンコンフォートと小型車コンフォート誕生
1995(平成7)年12月19日、トヨタのタクシーおよび教習車としての利用を前提とした「クラウンコンフォート」と「コンフォート」の発売を始めた。「クラウン」の名を冠し、デザインもそのイメージを引き継ぐが、ベースは6代目「マークⅡ」セダンだ。
トヨタのタクシーは、トヨペットスーパーから始まった
トヨタ初のタクシー専用車は、初代クラウン誕生の2年目、1953年に発売された「トヨペットスーパー」である。これには、当時乗用車の需要の大半を占めていたのがタクシーだったという背景がある。シャシーは、トラック用の頑丈なものを使い、搭載エンジンは最高出力48psの1.5L直4 OHVだった。
その後、1955年にトヨペットスーパーの後継として「トヨペットマスター」が、初代クラウン「トヨペットクラウン」と同時に発売された。マスターは、タクシー向けであることから前輪懸架は酷使に耐える固定車軸とし、室内スペースの拡大が図られた。エンジンは、スーパーと同じ1.5L直4が搭載された。
クラウンより約10万円安い89.5万円で発売されたマスターは、タクシーとして着実な実績を残した。しかし、クラウン自体の耐久性がタクシーとしても問題ないことがわかり、またタクシー業界からもクラウンを求める声が強くなったため、発売から約2年後の1956年12月に生産台数7403台で生産を終えた。
以降は、クラウンがトヨタ製タクシーの主役となった。
マークIIベースのタクシー専用車、クラウンコンフォート誕生
1995年、中型タクシーや教習車での使用を目的にしたクラウンコンフォートとその小型車コンフォートが登場。いずれもクラウンのイメージを受け継いではいるが、実は6代目マークⅡがベースである。コンフォートは、クラウンコンフォートのホイールベースを105mm短縮して、小型タクシーの基準に合致させた。
フロントフェイスは9代目クラウンに似ており、サスペンションは前がストラット、後ろがコイル式のリジッド。また後席の居住性・乗降性を向上させるため、リヤピラーは立ち気味に設計され、後席とトランクのスペースをできるだけ大きくし、料金メーターや無線機などの設置場所が確保された。
エンジンは、クラウンコンフォートがLPG(液化石油ガス)仕様の最高出力79psを発揮する2.0L直4 と110psの2.0L V6 を、一方のコンフォートはLPG仕様の2.0L直4 と2.4L直4 ディーゼルターボエンジンを搭載。トランスミッションは、5速MTおよび4速ATが組み合わされた。
車両価格は、タクシー専用モデルとして大幅に簡素化したおかげで、クラウンコンフォートが151万~218万円、コンフォートが135万~183.5万円に設定。当時の大卒初任給が19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値でそれぞれ価格が約179万~258万円、160万~218万円に相当する。
以降改良が加えられながら2018年に生産を終えたが、両タクシーともまだ街中で活躍している。
●コンフォートの後継としてジャパンタクシーが現在、活躍中
トヨタは、コンフォートの後継として小型FFトールワゴン「シエンタ」をベースにした世界初のLPGハイブリッドタクシーである「ジャパンタクシー(JPN TAXI)」を2017年10月に投入した。
JPN TAXIは、標準グレードの「和(なごみ)」と上級グレード「匠(たくみ)」の2つのグレードを用意し、最高出力74ps/最大トルク11.3kgmを発揮する1.5L直4 DOHC(LPG)エンジンと最高出力61ps/最大トルク17.2kgmを発生するモーターを組み合わせた、リダクション機構付のTHS-IIハイブリッドである。
ちなみにタクシーにLPGが使用されるのは、安価(ガソリンの60~70%)であることが最大の理由で、走行距離の長いタクシーにとっては大きなメリットになる。一方で一般のクルマに普及しないのは、LPGの充填スタンドが少ないからである。
ちなみにJPN TAXIはタクシー専用車だが、個人で購入することも可能。匠は356.4万円、和が333.85万円なので、結構な価格である。
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個人的な見解かもしれないが、パトカーとタクシーと言えばクラウンというイメージが強かった。最近JPN TAXIは確かに増えているが、6年前に生産を終えたクラウンコンフォートも今でも街中でよく見かける。タクシーは1年車検で、メンテンスもしっかりしているのだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。